第5章 第1次世界戦争編 E-0003 独東洋艦隊
1914年7月27日 南太平洋 ポナベ 独東洋艦隊主力 旗艦装甲巡洋艦シャルンホルスト
「日本国の大使館からの報告です。日本海軍の快速部隊が出港したとの報告です。編成合計戦艦2、巡洋戦艦4、軽巡洋艦3、駆逐艦8です。」
「日本の参戦はまだのはずだ。」
「対独参戦の動きがあるとのことです。しかしフランスと現在交渉中の模様。」
「英連邦の動きは?」
「対独参戦に向けてフランスと交渉中の模様。」
「逃げるにしても攻撃するにしても今のうちがチャンスだな。電信網は遮断されているか?」
「英国の関わりある領域に関してはもう切断されている模様です。切断されていない領域でも盗聴はされているはずです。暗号電も数撃てば解読されます。」
「青島残留艦には自由裁量権を認める旨の暗号電を出せ。それ以上の電報は避けるべきだな。わが艦隊は南米航路で本国に帰還する。」
「本国に帰るのですか!!」
「英国とやりあうんだ。英国が全世界に分散しなければならないのに対しわが艦隊が急いで本国に戻れば戦力を集中できる。そのために軽装艦艇の一部は残ってもらうが、主力艦艇は帰国する。特に足の速い船はな。」
「では防護巡洋艦群は時機を見て分散。太平洋及びインド洋での通商破壊を行うと。」
「そうゆうことだ。」
同日 英国 日英同盟及びドイツがベルギーの軍事通行権を求めたことを口実に参戦した。
1914年7月27日 呉 出港前
大日本帝国海軍第2艦隊 分艦隊 旗艦巡洋戦艦金剛
「ドイツ東洋艦隊の位置はポナベ島にいる。ただし、我が国との開戦で逃走している可能性が高いと思われる。外務省から定期的に敵艦隊についての情報が送られてくる。その情報をもとに追撃を敢行する。」
艦隊指揮官の東郷吉太郎少将は各艦の艦長を集め、方針を語る。
彼はかの有名な軍神東郷平八郎の甥にあたる人物である。
「問題はドイツ帝国船籍の商船です。我が国の港や中国国内の港からすでに大量の商船が石炭及び糧食を積載した貨物船が出港しています。」
隣には秋山真之少将。副司令官として高速戦艦御岳の乗艦している。司令官とは同格の少将だが後任であるために副司令官だ。
「補給は十分か。補給能力が不足している独領南洋諸島から本国まで逃げることはできそうだな。」
「はい。半分は正しいです。今この情報をわざとドイツ側に流せば東洋艦隊主力は東に逃げます。アジアから発進した給炭船は艦隊に追いつくことはできません。アメリカ大陸からの船は無理でもそれでアジア方面の給炭船の合流を阻止できます。」
「なら流すべきか。」
「しかしそれでは問題が生じます。本拠地所属艦のエムデンとコルモランの2隻の防護巡洋艦です。アジア方面給炭船は彼らの補給を行うことになるでしょう。」
「通商破壊戦闘が行われるというのか!?」
東郷が叫ぶ。巡洋艦による通商破壊にはかつて大いに苦しめられた過去がある。日露戦争に際し、ロシア海軍太平洋艦隊所属のウラジオストック巡洋艦隊による通商破壊である。特に常陸丸他2隻搭乗の後備近衛連隊が大損害を受けたことは有名である。
「第3艦隊にすでにその件は報告しています。相手は防護巡洋艦2隻なので3隻ばかりの防護巡洋艦を護衛につけ、複数の商船をまとめて護衛すれば損害は少ないはずです。しかしそうなる前に殲滅する必要はあります。予備役復帰した艦にこの2隻の追撃をするように要請はしています。」
「ならば追撃するのは東洋艦隊本隊」
「こちらも注意すべきは主力の装甲巡洋艦よりも護衛の防護巡洋艦。取り逃せば商船には大きな脅威となります。全艦を排除しなくてはなりません。」
「…面倒だな…」
「1隻でもいればその1隻に複数の護衛を必要とします。それだけ効率が悪い。確実に仕留める必要があります。」
ドイツ東洋艦隊
「日本と英国の参戦により複数の大型巡洋艦(装甲巡洋艦と巡洋戦艦のこと)を有する艦隊規模の行動は難しくなった。このまま太平洋戦域にとどまっていてもただ撃沈されるだけだ。太平洋に存在する拠点に対し砲撃を敢行しつつ、ドレーク海峡から大西洋に脱出する。これが基本方針だ。」
「しかし、シュペー提督。それは敵も予想しているはずです。」
「だからその対策が必要なのだ。」
「帰還すべき戦力は大型巡洋艦2隻ですよね。ならばそのほか…小型巡洋艦3隻は切り離し、陽動作戦を行うべきです。すでにエムデンが青島を捨て、インド洋方面での通商破壊作戦を遂行するために動いています。」
「もう一つ問題は情報です。すでに協商側に着いた国の情報網は壊滅しました。わが方のすべての海底ケーブルが切断され、情報不足です。そのためにも小型巡洋艦を分離すべきと考えます。」
「小型巡洋艦ニュルンベルクをオアフ島に向かわせる。艦隊はクリスマス島に向かう。ニュルンベルクはクリスマス島で合流せよ。」
「了解。」




