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改史 大戦  作者: BT/H
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第5章 第1次世界戦争編 B-0002 タンネンベルクの戦い2

1914年 8月11日グンビネン 第1軍団司令部

「やって見せます元帥。参謀のマックス・ホフマン中佐は否定した以上、この勝利による功績はわれらのものです。総司令。」

ヘルマン・フォン・フランソワ大将がマクシミリアン・フォン・プリットヴィッツ上級大将に電話で直訴している。

「しかし、作戦計画ではウィスワ川までの撤退が定められている。」

「その作戦計画無視の責任は参謀に取らせればいい。奴は撤退に反対とお聞きしました。成功すればわが戦果、失敗すれば部下に押し付けられます。危険なく利益ありの状況です。それに先日海軍がへまをして艦艇をケーニヒスベルク付近に大量擱座させました。撤退すればあの船はすべて鹵獲されます。撤退できない状況になりました。ここは我々が踏みとどまり、海軍に恩を売るチャンスです。恩を売れば閣下のお役に立てることでしょう。」

「わかった。参謀のホフマンに責任を押し付けてやろう。」

 プリットヴィッツ上級大将は嫌味な笑顔を浮かべた。


 しかし、その逆攻勢はそのことを意図していたロシア軍の反撃にあって失敗することになる。最悪なことにヘルマン・フォン・フランソワ大将の第1軍団が増援部隊の到着を待たずに独断専行したために足並みがそろわず、増援の第17軍団が惨敗潰走状態になり、東部戦線前線は大きく後退した。そしてケーニヒスベルクの真東に陣を取られ、ケーニヒスベルク攻略作戦が開始されようとした。

 さらに翌日には第2軍が国境を越え、進撃を開始した。


 1914年8月12日

 ベルリン陸軍統合作戦本部参謀長室―ケーニヒスベルク第8軍司令部司令官室 

 間通話

「東部の東側国境線の防御線が抜かれましたすでに敵軍がケーニヒスベルク東側に迫っています。さらにロシア第2軍が東部南側国境を越えて進撃中。このままでは第8軍は包囲殲滅されます。ヴィスワ川まで撤退させてください。モルトケ総参謀長閣下」

 マクシミリアン・フォン・プリットヴィッツ上級大将はベルリンにある統合作戦本部陸軍部総参謀長室と電話している。相手はヘルムート・ヨハン・ルートヴィヒ・フォン・モルトケ 通称小モルトケである。

「ホフマン君とフランソワ大将から事情は聞いているよ。君責任をホフマン君にすべて押し付けるつもりでフランソワ大将に攻勢を命じたそうだね。」

「どこでそれを」

「言っただろ。ホフマン君とフランソワ大将に聞いたと。君は解任だ。君は指揮官として人として優れているとは思えないのでな。それにヴィスワ川まで下がったら艦隊を見捨てることになる。」

「閣下!!」

「後任はパウル・フォン・ヒンデンブルク退役大将だ。引退はしたが参謀総長の座を私と争ったほどの優秀な人物だ。しかもハノーファーにいる。参謀長には参謀本部で作戦立案に功のあるエーリッヒ・ルーデンドルフ少将だ。」

「ルーデンドルフ少将は若すぎるのでは軍歴は…」

「解任された君には関係ないことだ。だが能力はある。使わんでどうする。」


 1914年 8月12日ケーニヒスベルク第8軍司令部 通信室

「この情報どう思う?」

 第8軍参謀のホフマン中佐は複数の紙を持っている

「第1軍はすでに補給不足及び第1軍の攻勢を見て進行してきたのに防御陣地を築き、守勢に陥りつつある、それになんだ?この通信量の少なさと質は。第1・2軍間の通信はほぼゼロ、通信はすべて平文。なんだ?偽電か?」

「いいえ平文以外通信を傍受できません。」

「1軍のレンネンカンプと2軍のサムソノフは仲が悪いとの情報がある。これでは第1軍と第2軍の連携は期待できないな。」

「戦争に私情を挟むなよ…」

 通信兵があきれる。

「日露戦争での戦訓を活かしきれてないな。」

「確か…日本海海戦時に日本艦隊の敵艦隊発見の暗号電を傍受したが放っておいたってやつか」

「そうだ。ならば利用しよう。第1軍が動けないのは確実なんだな。」

「平文解読の結果そうです。」

「ならば先に第2軍をたたく。残留部隊と民間人を徴用して防御陣地を構築。他の部隊をすべて第2軍迎撃に向かわせる。第1軍の増援も一部第2軍に向かわせる。鉄道輸送を集中させるわけにはいかんからな。」

「了解」


 1914年8月14日 ベルリンからケーニヒスベルク間鉄道

 第8軍に派遣される途中のルーデンドルフとヒンデンブルク

 ルーデンドルフが乗った列車に同じ任地に向かうヒンデンブルクが合流した。ヒンデンブルクは東部の都市ハノーファーに隠居していたために本国から派遣されるルーデンドルフに合流する形になる。なおこの時が2人の初対面だ。

「閣下。現在指揮を執っているホフマン中佐の作戦案です。すでに部隊がこの作戦に基づいて行動を開始しています。」

「ロシア第1軍が動けないことを前提としているな。」

「しかし閣下。この情報が正しければ私も同じことを想定します。むろん第1軍の一部を後攻めできる位置まで進出させればより安全です。」

「だがな。前線からの輸送で鉄道輸送能力はおそらく飽和状態。鉄道網の余裕があるダンツィッヒの先までしか行けないだろう。」

「ダンツィッヒならば第2軍に対する後攻めもできるいい位置だと思います。」

「ならばそうしてくれ。」


 1914年8月16日 ロシア軍右翼 第6軍団

「敵第20軍団を半包囲殲滅する。第13軍団に続き急ぎ前進しろ!!」

 ロシア第2軍およそ23万がここまで戦っているのはドイツ第20軍団。兵力は初動4万弱およそ2個師団だ。ドイツ軍は5倍の兵力に対し、遅滞戦闘を…すなわち後退しながら敵の侵攻を遅らせている

しかし、ロシア第2軍に対し広く浅く展開した場合、一点に兵力を集中された場合いとも簡単に突破されてしまうだろう。そこでロシア軍の兵力集中点を作られる度にそれをつぶすことで敵の突破を阻止し続けていた。

 だがそれも読まれ、第2、第3の兵力集中点を作られれば1個軍団に対抗することは困難だ。今回、ロシア軍はあえて中央を囮として左右から第20軍団の半包囲を狙う構えだった。

「て、敵襲!!」

 それを破るはドイツ軍の襲撃だ。第1軍を放置し、転戦してきたドイツ第17軍団と第1予備軍団だった。

 この予備軍団というものはどうゆうものか

 通常予備部隊戦場に出るものではない。史実日本では基本戦術単位が師団だったことから留守師団ともいわれる存在である。前線で戦う通常師団の補充兵を蓄える役目を持っている。この補充兵というものは兵役時の成績の低い兵士のことである。体格や徴兵時の練度が成績に反映される。留守師団は前線の兵士が戦えなくなってから戦場に投入される。そのために戦時招集がされてから訓練する時間がある。

 しかし、ドイツ帝国は違った。成人男性の5割…すなわち2人に一人という兵役経験人口を抱え、プロイセン王国時代から兵役時に厳しい訓練を課し高い練度を持つドイツ帝国はこの予備部隊に兵士が充足され、定数に達すると戦場に投入する。その戦場に投入された師団が第1予備師団である。

 この時、編成拠点は第1師団と第1予備師団の兵士損耗時に補充兵を送り出す必要性があり、また留守部隊を編成する必要性がある。なお、今後、ドイツ帝国軍に関してこの部隊を留守軍団と呼称する。

 ドイツ第17軍団と第1予備軍団は初戦の損害とケーニヒスベルクに残した兵士を除きこの時点の兵力がおよそ6万名。特に第1軍団と第17軍団双方に十分な補充兵の供給はない。兵士の損失速度があまりにも早すぎたためである。

 ロシア第6軍団は総兵力およそ4万。ドイツ軍は局所優位をこの6万で生み出した上にドイツ第20軍団が完全にロシア第2軍の作戦を把握しており、中央の第15・23軍団、右翼の第13軍団を空回りさせ、この第6軍団…たった4万人に対し10万人近い兵士が襲い掛かった。

 この兵力差はロシア第1軍主戦線から徒歩移動したために重砲の援護のないというハンデを全く意味のないものとした。

 ロシア軍は次の日の作戦を平文で各部隊に伝えあう状態だったためにドイツ軍にたやすく作戦がばれていたのだった。


 同日 ケーニヒスベルク 

「ロシア第1軍前進を開始。」

「やはり電信部の報告通りだな。」

 ドイツ残存部隊の総数はおよそ1万弱。しかし、十分な準備期間に塹壕陣地を設営、さらに電信の傍受の結果作戦を知り尽くしているドイツ軍はロシア軍に対し少数の兵力で十分な防衛網を作り上げた。

「第2軍の撃破が完了もしくは増援部隊の到着まで死守しろ。」

「騎兵師団は敵の側面をつけ」

「重砲隊撃ち方始め」


 1914年8月17日 ロシア軍左翼側方 独第1軍団

「ロシア第1軍団重砲の有効射程内に入りました。」

「ロシア第1軍団はロシア軍の精鋭。歩兵の突撃前に圧倒的な砲撃で敵を粉砕する。」


 同日ロシア第2軍司令部

「先日の第6軍団に引き続き精鋭の第1軍団も潰走!!」

「残存兵を再編して本陣守備に回せ。先鋒の師団を引き戻して防衛に当たらせろ!!」

「ここに推定4個軍団規模の兵力を回せるのならば第1軍正面の戦力はほとんどないはずです。第1軍に攻めるように」

「馬鹿者それでは第1軍に戦果を挙げてくれと言わんばかりではないか」

「あとで笑われるしな。」

 指揮官同士の対立はどうやら参謀クラスまで対立を生んでいるらしい。

「戦力を再編。目標方向に一点突破を図るぞ!!」


 ケーニヒスベルク第8軍司令部

「昨日に引き続き第1軍団も敵を撃破。」

「おかしいですね。通常ならば援護もしくは総攻撃の要請を第1軍に出すはずです。」

「戦場に私情を持ちもむな…」

「第2軍の撃破を完璧なものにする。そうすれば増援含めて倍する兵力で第1軍を撃破することができる。」

「では…」

「第1軍団および予備第1軍団に敵後方を遮断。他の軍団に戦線を広く伸ばし。第2軍を包囲させろ。増援の第1軍所属軍団の一部も向かわせろ。鉄道を有効に使え。」


 1914年8月18日 ロシア第2軍総司令部

「司令。すでに両翼が突破され、前衛の2個軍団もまだ引き戻せません。第1軍団に救援を要請しましょう」

「だが…」

「すでに退路も失い、敵増援軍団も到着済み後方にも回られています。」

「後方への突破は可能か」

「まだ完全に包囲はされていません。夜間のうちに脱出を。」

「脱出は成功しまい。前衛の2個軍団を引き戻し、敗残兵を再編し、後方に突破する。」


 1914年8月19日 ロシア第2軍後方

「いたぞ!!味方だ!!」

 ロシア後方に迫るは第1軍団と予備第1軍団だ。完全包囲を目指し、ロシア第2軍後方まで進出した。

 そして2つの軍団は互いを見つけたすなわち完全包囲の完成だ。あとは敵の突破を防ぎつつ砲撃や銃撃を使い、敵戦力をすり減らすだけだ。

「敵の突破方向はこちらになるはずだ。機関銃陣地の敷設急げ」

 兵士たちが抱えて走るはMG08重機関銃史実第1次世界大戦でもっとも連合国兵士を殺傷した兵器の一つである。

 機関銃陣地が敷設されてからしばらくして、突入してくるロシア軍。

「機関銃陣地は密集地帯を攻撃。歩兵隊は狙撃せよ。急げ!!」

 第1次世界大戦前の日露戦争では機関銃陣地が有効に敷設された場合、歩兵・騎兵ともに撃破もしくは成功しても大損害を受けてしまう。

「鉄道を破壊しろ。ワルシャワ方面へは鉄道1本しかない大規模な撤退及び補給ができない。」

 当然のことロシア軍の突撃は機関銃陣地とそれを援護する歩兵隊の小銃が大損害を与えている。

「軽砲を急いて展開しろ。早くしないと突破される。砲の威力で叩きのめせ。」

 

 1914年8月19日夜 ロシア第2軍司令部

「一般方向(撤退方向) に突撃した各軍団機関銃陣地と歩兵隊・軽砲により撃退されました。」

「戦線の隙間はあるか!!」

「一般方向以外に突破しても補給が続かず飢えるだけだ。略奪しろというのか!!それなら名誉ある死を!!」

「あなたは名誉とやらのために兵士を犠牲にするおつもりか!!」

「では投降するのか!!」

「捕虜交換についてまだ何も決まっていないではないか下手したら」

「戦時国際法があります。虐殺されることはないでしょう」

 参謀たちが今後の方針に関し話している。

「すまん」

 第2軍司令のアレクサンドル・ヴァシリエヴィチ・サムソノフ大将は席を立つ。

「て、敵襲!!」

 見張りが叫ぶ。

「時間を稼げ!!」

「司令お逃げください!!」

「指揮官が先頭に立てば確実に!! 一般方向に突破を」

「馬鹿!!機関銃陣地にやられるだけだぞ」

「馬鹿者!!眼前の敵のことを考えろ!!守備隊!!時間を稼げ」

 彼らは急いで馬に向かい、またがると走り出す。

「通信設備を捨ててしまった…前線への命令が出せない。」

 とある参謀が走りながら叫ぶ。

 指揮所を失ったロシア第2軍はこれで組織的抵抗能力を喪失した。あとは各部隊が各個に抵抗するだけ。もうこの包囲を抜ける術はない。

「敵騎兵を巻きました。」

「そうか。」

「司令…すでに深夜です。これ以上馬を走らせれば馬をつぶすことになります。野営しましょう。」

「…そうか。」

 彼らは護衛兵の持っている物資だけで野営をする。指揮官が補給物資を携帯することはほぼなく、それを用意する暇もなかったためである。

 しかし、サムソノフ大将は皆が寝静まった深夜、近くの森に歩く。

 そして拳銃をこめかみに当て、引き金を引く。一発の銃声が周りに響いた。


 第2軍の損害が総兵力およそ25万人 包囲されたのはそのうち20万人程度。戦死88000名、捕虜102000名生還10000名を数えた。残敵掃討は8月20日に大方終わり、捕虜の輸送と部隊の移動が開始された。

 第2軍残存の5万名程度は部隊の再編を開始。特務軍団を編成ドイツ軍のワルシャワ方面への侵攻に対し遅滞戦闘を継続することになる。彼らとロシア第1軍が第2軍との通信途絶を確認。その情報交換を経て第2軍が壊滅したと判断されるまでに2日必要とした。

 その間にもドイツ第1軍(史実では西部戦線にて活動) 18万6個軍団中3個軍団9万人がケーニヒスベルクに集結し、残りの3個軍団もタンネンベルク決戦場から鉄道を使用し転戦しつつあった。

 第8軍もタンネンベルクで残敵を掃討(いまだ数人規模の少数部隊が活動していると推測された) しつつ部隊を再編。ワルシャワ方面に進軍する構えだった。


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