第5章 第1次世界戦争編 C-0006ダンツィヒ沖海戦逃走
今後ヤポーニア級の艦名が接近したことで把握できるようになっているそのために
2番艦ヤポーニア級=2番艦コウダ、
3番艦ヤポーニア級=3番艦ヤポーニア
4番艦ヤポーニア級=4番艦ペトロパフパブロフスク
5番艦ヤポーニア級=5番艦セヴァストポリ
といった感じに表現が変わっている。
なお、7,8番艦ボロジノ級は片割れが日本に鹵獲され、改造。艦影が大きく変化しているために遠距離でも識別できている。
艦隊名称も戦闘が佳境になっていくため当事者たちも簡略化し始めている
例:第1バルト海艦隊→第1艦隊
ドイツ主力戦艦部隊 総旗艦戦艦 フリーリヒ・デア・クローセ
「先頭の戦艦ケーニヒ回頭。」
ロシア海軍4番艦ポベータに至近距離からの一斉砲撃を敢行した先頭艦ケーニヒが回頭する。5番艦セヴァストポリと交差する際に砲弾の装填が終わっておらす、一方的に砲撃を受け大損害を受ける可能性がある。一方的に打たれるよりは相打ちのほうがマシだ。2番艦クローザー・クルフュストは作戦内容を打電した際には被弾時の戦線離脱許可まで出されている。
「敵戦艦スラヴァ最後部の8番艦!!回頭!!逃走します!!」
ロシア艦隊の最後尾は戦艦スラヴァ。日露戦争に間に合わなかった戦艦であり、同型艦はすべて日本海海戦に参加。鹵獲もしくは戦没している。なお、改史では修理、改造された鹵獲艦オリョールは戦艦売却の際におまけ扱いされ返還され、スラヴァの前を走っている。
「撃ェ!!」
ほぼ同時に放たれた5番艦セヴァストポリ、2番艦クローザー・クルフュスト双方の砲弾はそのほとんどが命中する。双方中破以上の損害を受けたようだ。戦列を離れる。
「ナッサウ級戦隊の死角砲塔が離脱した敵戦艦3番艦ヤポーニアを砲撃している模様。」
突入のために集中砲火を受けその損害が原因で戦線離脱していた戦艦ヤポーニア級ネームシップヤポーニアはこの時の砲撃で前部主砲塔弾薬庫に注水済みだった。後部砲塔弾薬庫から供給した弾薬と全部主砲塔内に残存していた砲弾で抵抗を試みている。前部砲塔の砲撃速度はしばらく変わらなかったが、砲撃速度の低下は各砲問単位で10発前後砲撃したところで深刻になった。後部砲塔の射撃速度は変わらないが、前部砲塔はほとんど打てなくなった。冷静に狙う船によって後部砲塔にも直撃弾を受け弾薬庫が誘爆。爆沈する。
「3番艦ヤポーニア爆沈」
「4番艦ペトロパフパブロフスクも戦闘旗を下します。船を捨てる模様。」
第2艦隊との交戦はドイツ側有利に進んでいる。すでに3隻が沈み、1隻が戦線を離脱している。うち3隻が艦隊の主力となるヤポーニア級ド級戦艦だ。
ヤポーニア級はロシア語で日本という意味になる。日露戦争後の海軍再建で日米に生産依頼、ライセンス生産した戦艦のうち日本製及びその同型ライセンス生産艦のことだ。1番艦は日本製ということからヤポーニア2番艦は遭難した日本人大黒屋光太夫からコウダと命名された。この2隻が日本製。バルト海艦隊向けライセンス生産艦の3,4番艦は日露戦争で撃沈されたペトロバフロフスク級戦艦の2隻ペトロバフロフスクとセヴァストポリから命名された。ちなみに黒海艦隊向けライセンス生産艦も日露戦争で鹵獲された戦艦からアドミラール・セニャーヴィン、ゲネラール=アドミラール・アプラークシンと命名。全艦が日本がらみの名前になっている。
性能的、艦影的には標準的な背負い式砲塔を持つド級戦艦だ。当時のロシア戦艦の標準的な主砲pattern1895年式40口径30.5㎝(12インチ) 連装砲4基。2,3砲塔を1段上にする形で背負い式砲塔にしているだけだ。だがそのシンプルさゆえに扱いやすい。サイズのわりに使いやすい船に仕上がっている。欠点は速力。動力が旧式のレシプロ機関を採用していたこと。蒸気タービン機関と比較し出力が低く、速力が遅くなる。そのため第2艦隊に配属されている。
4隻いるヤポーニア級が3隻もいなくなった今、第2艦隊は骨を失ったのと同様だ。蹂躙されるだけだ。
「敵6番艦ツェサレーヴィチと7番艦オリョールは離脱しない…なんでなんだ」
「離脱できないんだよ。距離が足らなくて。離脱のために舵を切ろうもんなら集中砲火を浴びる。追撃されたらむしろ艦列の間を突破したほうがマシという考え方なんだろう。回頭するまでの時間が稼げる。2隻のうち1隻は逃げれる計算だろう。追撃を受けたら全滅だがな。」
「じゃあスラヴァは」
「それがわかっていて逃げた。前2隻に押し付けて。」
「速力を考慮に入れればスラヴァが戦線復帰するのに時間がかかる。その間に敵の2隻撃沈を確実にする。」
「了解。」
ドイツ軍主力艦隊分艦隊 2番艦(1番艦ナッサウの離脱に付き分艦隊旗艦) ヴェスト・ファーレン
「3番艦ヤポーニア爆沈」
ヤポーニアの爆風と破片はナッサウ級3隻にも降り注いだ。至近距離で行われた砲撃戦は双方に大きな損害を生んだ。3番艦ラインラントは右舷前部砲塔基部に命中弾。砲塔が旋回不良を起こし使えなくなるというが生じた。だがその多くの命中弾は本給独特の分厚い舷側装甲版に阻まれた。ナッサウ級は設計段階から接近戦を指向して設計されていたため舷側装甲はぶ厚かった。
「左舷側敵艦列への砲撃を怠るな。」
接近戦及び乱戦に強いナッサウ級は両舷での戦闘が可能だ。左舷側に向けられる砲はすべて砲撃に参加している。右舷側も先ほど撃沈したヤポーニアを砲撃し続けていた。
「5番艦セヴァストポリ戦列を離れつつあり。6番艦ツェサレーヴィチに砲撃を集中。」
「最後尾ポーゼン敵前衛の2隻からの砲撃が集中。後部主砲塔基部に被弾!!」
「後部主砲塔に注水しろポーゼン!!」
隊列を分断されたロシア艦隊の前衛の2隻はほぼ無傷だ。ナッサウ級の3隻の最後尾に対する砲撃の集中は効果的だ。
「隊列をずらせ。後部砲塔すべてと右舷砲をすべて投入して応射しろ」
「右舷前方の砲塔は装薬を減らして曲射させます。仰角最大。」
「敵6番艦ツェサレーヴィチと7番艦オリョールはどうするのですか!!」
「本隊だけでも十分オーバキルだ!!こっちは身を守ることを考えろ。」
「艦長!!右舷を見てください!!敵ガングート級が!!」
直後、艦長が目にしたものはガングート級2隻、レトヴィザン級2隻から複数の閃光と砲煙だった。
しばらく前 ロシア旗艦ガングート
「第2艦隊はこのままでは敗北します。早急に突撃を。」
ウラジーミル・ポリエクトヴィッチ・コスチェンコ中佐がバルト海艦隊司令長官ニコライ・オットヴィチ・フォン・エッセン大将に叫ぶ。
敵艦隊はまだ第2艦隊の戦列に突入していない。第2バルト海艦隊の3番艦ヤポーニアもドイツ先頭艦ナッサウも無事だ。だがすでに戦列を離れた戦艦ポルダワは砲撃を受け撃沈寸前だ。
「なぜだ。わが艦隊が突入のために急速に接近すればその間の命中率は悪化する。それに長距離からの砲撃それこそわが海軍次世代の戦術と君は言ってこの艦の建造にかかわったのではなかったのかね」
ウラジミールは史実よりも戦艦設計の経験を積み設計にかかわるほどの技術者になっていた。
「計画推定値よりも圧倒的に砲撃数が少ない。これでは遠距離砲撃で十分な被害を与えることはできません。それにフレンドリーファイア対策のためにしばらくしたら打てなくなります。その間に第2艦隊戦艦群は大打撃を受けます。想定外の遊兵は戦術上もっとも悪手ならば遊兵の時間を利用するしかない。接近すれば当たります。当たらなくては意味がありません。」
「司令これ以上第2艦隊と敵艦隊が接近すれば友軍誤射の可能性があります。砲撃を中止させてください。」
「くっ」
「砲撃中止!! 司令!!」
「わかったよ。突撃だ突撃。」
ドイツ軍主力艦隊分艦隊 3番艦ラインラント
「先頭艦ヴェスト・ファーレン被弾!!」
「命中個所は前部主砲塔と右舷前部主砲塔。弾薬庫に注水すると思われます。」
「ど、どこから第2艦隊では」
見張りが周りを見る。だが砲弾を発射した艦艇を見つけることはできない。無理もない。敵艦隊と3番艦ラインラントの間には炎上する戦艦ヤポーニアがいる。その陰に隠れている。
「馬鹿者砲弾の水柱はおよそ20本弱これだけの砲弾を打てるのは敵艦隊主力だけだ。敵ガングート級突撃の報を総旗艦に打電しろ。煙幕を張れ!!命中率を下げるんだ」
ドイツ主力戦艦部隊 総旗艦戦艦 フリーリヒ・デア・クローセ
「全艦一斉回頭。ケーニヒに先頭に立てと伝えろ。ラインラントは本戦隊後方につけ。敵6番艦ツェサレーヴィチと7番艦オリョールの始末は被弾したナッサウ級に任せる。その後ナッサウ級は離脱しろ。」
ラインラントからの情報を受け取ったヒューゴ・フォン・ポール海軍大将の判断は早かった。早急にロシア艦隊の頭を抑えようとする。T字に持ち込めばロシア艦隊の指向門数(艦列を若干ずらすために前の艦が射界の邪魔になりにくい) は12インチ砲20門。ドイツ艦隊は12インチ砲40門11インチ砲8門。圧倒している。
「陸地を利用して砲撃を優位に進めろ。」
ロシア旗艦ガングート
「ナッサウ級2隻一斉回頭開始」
ヤポーニアが沈み始めた。煙の発生量が減少しているその影響でナッサウ級3隻の艦列の様子がわかるようになる。ヤポーニアの煙のせいで照準をナッサウ級の先頭艦に絞り、単位時間当たりの投射重量が最も多い斉射を繰り返す。
「1射目でまぐれ当たりしたのは運がよかったですね砲術長。」
あえて基準砲撃を避け、統一諸元のみで発射した砲弾は1発当たりの命中率は下がるうえに下手した味方を打つ可能性すらあった。だが、戦力として期待できない第2艦隊後列を友軍誤射に巻き込む危険性と敵艦1隻の撃破比較し、非情ながら砲撃を行う判断をした。
「司令。おそらく敵分艦隊だけではなく、主力艦隊も一斉回頭。わが艦隊正面に展開しようとしていると思われます。その艦隊行動を読み、敵を陸地側に追い込み有利に戦いを進めましょう。第2艦隊前列を一斉回頭させ、第1艦隊の後ろに付かせましょう。」
「そうしてくれ。」
「機関減速。敵艦隊後方を抜ける。ナッサウ級を見失うな。あの2隻が後衛に就く。あの2隻の後方を通過するつもりで行け。」
ドイツ艦隊先頭艦 戦艦ケーニヒ
一斉回頭したドイツ艦隊。その行く手には燃え盛る1隻の戦艦いまだ水面に浮いている戦闘旗を下し総員退艦している戦艦ポベータだ。
「位置が最悪だな。煙で視界が悪い。」
「敵からも悪い。あの船を敵に対する盾に使う。味方を打つわけにはいかんだろうしな。」
その判断は最悪の事態を生むのだった。
ドイツ総旗艦戦艦 フリーリヒ・デア・クローセ
「敵艦隊が想定よりも後方にいます!!」
2番艦の総旗艦フリーリヒ・デア・クローセに乗船するヒューゴ・フォン・ポール海軍大将は戦艦ポベータの爆炎から抜けてようやく事態を把握した。ロシア艦隊は戦艦ポベータよりも陸側を抜けていくと想定していたが、海側を通過する進路をとっていた。
「頭を抑えることに失敗した。数的有利は存在しない。最終手段だ。誘い込むぞ。回頭右90度。同行戦をしつつ敵艦隊を作戦海域に誘引する。」
ロシア旗艦ガングート
「目標。ナッサウ級。斉射。」
ロシア艦隊はドイツ艦隊後方艦列の一部に集中砲火を浴びせた。狙われたのはナッサウ級の2隻。ポーゼンとラインラントだった。比較的近い距離で斉射されたために分厚い舷側装甲で砲弾のいくつかを防いだが、主砲塔を破壊された弾薬庫に注水。戦闘能力を喪失。船を失う前に陸に向かう。ドイツ艦隊主力の残存はケーニヒ級3、カイザー級1.ロシア艦隊主力の残存はガングート級2、レトヴィザン級2、ヤポーニア級1、インペラートル・パーヴェル1世級1戦力差は圧倒的だった。
「第3艦隊残存艦艇接近。残存艦艇総数駆逐艦3、水雷艇5、水雷巡洋艦3。水雷戦闘を開始します!!その後方からはドイツの防護巡洋艦!!ケーニヒスベルク級1、ブレーメン級1」
ドイツ主力においてゆかれた領域で戦闘していた艦隊の残存だ。ケーニヒスベルク級シュツットガルトとブレーメン級リューベックだ。もう1隻いたコルベルク級アウグスブルクはロシア残存防護巡洋艦2隻と戦闘を行い、双方大破し、交戦能力を喪失したと第3艦隊からの暗号電で知った。
そして残存の装甲巡洋艦2隻とは通信が途絶…2隻とも短時間で失われたことを意味している。
「襲撃行動に移る。」
すべての魚雷を温存していた駆逐艦3隻 一部の魚雷を射耗した水雷艇と水雷巡洋艦合計11隻がドイツ軍戦艦部隊への突撃を開始する。
ロシア戦艦部隊は出遅れていたためにドイツ艦隊の頭を抑える位置にまで行っていない。そのスペースを利用してドイツ艦隊に突撃を敢行する。
「煙幕を絶やすな。射程内に入ったら左回頭。同時に旋回式発射管魚雷発射。」
再前衛の第1陣は水雷巡洋艦2、水雷艇2。残弾は旋回式発射管に2~3本ずつ。10本ほどだ。
「たった4隻だ。1隻ずつ狙い打て。敵の推定進路上に砲撃を集中しろ。」
適切な指示だ。たった4隻。その前に主砲と副砲、対水雷艇用の速射砲、対気球用の高射砲まで動員して水柱を上げさせる。被弾した水雷艇は爆沈する。
「すぐに第2陣が来るぞ!!」
第2陣は水雷艇3、水雷巡洋艦1.回転式発射管の残弾はないが、固定式発射管に残弾がある。各4本計16本だ。先の4隻を盾にさらに接近する。同じように煙幕を炊きつつ。3隻が撃沈されたが、先頭艦を狙っていた1隻は魚雷を放つ。直後、被弾、撃沈される。
「残り3隻!!」
「敵3隻回頭。旋回式発射管各艦計12門発射!!」
煙幕から離れて合計36本の魚雷が放たれる。
「1番艦ケーニヒが狙われている」
駆逐艦が放った魚雷はケーニヒ右45度、4本の魚雷はほぼ真横から接近する。ケーニヒは回避するために36本の魚雷に回頭角を合わせる。4本中当たっても1,2本。それなら大損害だが沈むことはない。36本の魚雷は躱さなければ轟沈しかねない。艦の損害覚悟で回頭。2番艦もそれに倣う。
「副砲群撃て水柱で敵魚雷を破壊しろ!!」
各艦の報が火を噴く。
「艦底部乗員左舷側に退避。水密隔壁を閉じろ。閉じたら機関区乗員を除き上部甲板へ逃げろ。」
「副砲本艦ではなく2番艦フリーリヒ・デア・クローセに向かう魚雷を仕留めろ!!2隻失うことは避けろ本艦は被雷ののち戦列を離れる。」
直後、3本がケーニヒに命中。ケーニヒは速力を落とす。
「ケーニヒ被雷。陸に向けて回頭します。」
残存は3隻。先頭艦は総旗艦フリーリヒ・デア・クローセ、それにケーニヒ級マルクグラーフ、クローンプリンツ・ヴィルヘルムが続く。




