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改史 大戦  作者: BT/H
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第4章 第2次米墨戦争編-16 陸の決戦1

GW(我慢ウイーク)に際し、応援投稿

2回か3回やります。

1908年1月18日 ワシントンDC

 戦争最後の決戦サンディエゴ沖海戦で米・ABC艦隊双方は壊滅した。戦術的には引き分け。しかし戦略的にはABC艦隊はロサンゼルス砲撃に失敗しさらに艦の整備拠点がないことから長期戦に陥った場合、米艦隊の戦線復帰に伴い、中立地帯と化した太平洋の制海権を奪われる恐れが出た。

「攻勢に転じろ。」

 ルーズベルトは命じる。

「しかし大西洋側はすでに膠着状態。太平洋側は兵站を支える海軍・海運力が疲弊して進撃はできても本格的戦闘は難しいです。それに国内外の動きも出ています。先の英国の介入は」

「それにこれ以上の持久戦は米墨両国だけでなく外国にも影響が出ます。すでに英国だけでなく南米各国も我が国に敵対していますABC艦隊は義勇軍扱いになっている模様なのでメキシコとの戦争を終わらせればこの戦争は終わります。」

 しかし閣僚たちは否定する。すでに軍・外交面でもすでに戦争継続困難である。

 ABC艦隊に関して母国は米国に対し宣戦布告していない。しかし、米墨戦争に対し、メキシコを支援する義勇軍を送っている。この義勇軍というものは事実上の国外出兵であるが、義勇軍と名乗れば国外出兵でも祖国と関係がないと言い張ることができる。

 事実朝鮮戦争での中国人民解放軍やスペイン内戦でのコンドル軍団などの例がある。

 今回の場合ABC艦隊再建前の比較的古い寄せ集めの艦隊はABC各国が新型艦を同時に導入することになり、余った旧式艦を無料みたいな値段で供給したという名目で編成された義勇軍であり、再建後のABC艦隊は英国からの無償供与で編成した義勇軍という名目である。

 ただ実態は南米各国政府の海軍将兵への出動要請を伴うものである。だが名目は利用することができる。メキシコが義勇軍の帰還を要請すればその義勇軍は帰還しなければならないのだ。


 1908年1月18日メキシコシティー

「ABC艦隊が負けた…。兵力差は圧倒的だったはず!!米艦隊に負けるはずがない!!」

 ポルフィリオ・ディアス大統領は報告に対し耳を疑った。

「聞き間違いではありません。ABC艦隊戦艦総数12隻。撃沈4、大破7…艦隊は交戦能力を喪失いたしました。無念です。」

 報告に来た役人は無機質に話すことはできない。真に残念に思っているように話す。

「しかし、米艦隊もただでは済まない。米艦隊はその半数以下の戦力しかなかったはずだ。」

 大統領は理由を聞く。理由などどうでもいい。対策を考えるのが先だ。

「米艦隊は水雷艇及び駆逐艦を投入しました。その結果4隻の軍艦が撃沈・撃破されました。4隻を差し引けば米艦隊も対応可能な戦力差になります。」

 正確な情報は流れていない。米国は特務艦(潜水艦)の戦果を隠匿した。実験的な投入だったが、発展した場合の脅威に気が付いたとある士官の提言を受けた形である。

「我が海軍も駆逐艦等の整備をしなくてはならないな。だがその戦後があればの話だ。太平洋戦域は長期戦になれば我が国が不利になるだけ。米国には艦艇の整備能力があるが南米にはない。撃破された南米の軍艦は戦線復帰が困難だ。だが米国は修理し復帰させることが可能だ。海軍の支援なくば南米義勇軍の入国もできない。すでに入国したものも補給不足で戦力価値が低下するのは目に見えている。」

「英国の支援はあります。すでに南米の植民地方面に最新鋭戦艦11隻を配属しております。これは本国よりもはるかに強力な軍備です。本国艦隊にもこれだけ強力な戦艦の数を配備していない。本国艦隊そのものを廻航してきたようなものだそうだ。」

「いいやそれ以上の支援は困難だ。現在英本国では旧式化した戦艦を強引に現役復帰させて使っているそうです。英国は新型戦艦の完成まで軍用艦船の輸出ができないそうです。太平洋の制海権が奪還される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。すでに双方手詰まりの状況です。しかし待っていれば我が国が不利。もう講和しか手段がありません。」

「南米各国の総力を挙げればまだ対抗可能だ。武器の輸送もメキシコではなく南米経由ならできます。」

「そこまでわが国は持たんのです」

 側近たちの言い合いが続く。

「我々は負けていないまだ首都メキシコシティーは陥落していない!!」

「メキシコシティーが陥落した時には我々に米軍に対抗できる状況ではない。最後の一皮の戦力を残しておかなければ講和すらおぼつかない。国は失われるぞ。メキシコはアメリカの第47番目の州(当時現在の50州のうち4州が準州だったため) になる。そのほうが国民のためかな?」

 皮肉を込めたひと言それで大統領は切れた。思いっきり机が割れん限りにたたくと

「今集結している南米義勇軍と予備軍、首都守備隊、太平洋方面帰還軍・警察隊すべてオリサバに投入し、早急にベラクルスの奪還を行え!!ベラクルスを取り戻せば首都メキシコシティーを落とすことはできない。その時点で講和を行う。そしてその指揮は私がとる。」

「しかし、大統領!!」

「なに士気を上げるためだけだ。俺の頭は40年前の戦術で止まっている。役に立たん。」


1908年4月1日 AM3:00 オリサバ

「敵の塹壕線を夜間のうちに破壊し、昼間の侵攻に備えることが肝要だ。」

 米軍は太平洋での艦隊決戦の引き分けで時間さえかければ確実に勝てる状況になった。そのため各軍司令部は攻勢計画を優先せず持久戦に持ち込むために塹壕戦を実施した。本来守備するほうが行う戦術であるが、対陣地攻撃をしなくとも勝てるのであればできるだけ犠牲少なく勝とうというのだ勝てる戦争だ。アメリカにとって当然の選択だ。その状態だからこそチャンスはあるのだ。

「工兵隊突入。」


 AM5:00

「工兵隊作戦成功。鉄条網に穴が開いています。

「よし。先陣を突入させろ。支援砲撃開始。」


「鉄条網が夜間のうちに切断されています。」

「修復しろ。」

「敵陣から発砲を確認。砲撃来ます。」

「塹壕内に退避!!絶対に頭を上げるな!!首から上を爆風に持ってかれるぞ。」

「みんな塹壕戦がだめになっている地点を確認しているな!!砲撃がやんだらそこに砲火を集中してやれ。」


「鉄条網破壊地点に砲火が集中されるはずだ。とりあえずお土産が火を噴くまで耐えろ!!お土産が火を噴いたらそこから突入開始しろ!!生き残る可能性はそこしかない。突入しろ。」

「お土産起動まで残り60秒」

 直後、大爆発を起こす。

「お土産の一つが誘爆しました。」

「このタイミングで誘爆しても問題ない。」

「最終弾着です!!」

「突撃。突撃だ。かかれ!!勝利の暁には釈放が待っているぞ!!」

 メキシコ軍の最前衛は囚人兵である。死刑囚や長期受刑者など半ば強制的に最も犠牲の大きな最前衛で極めて前近代的な(第1次米墨戦争時の骨董品の小銃を使用つまり先込め式小銃+銃剣)装備で突撃する。囚人兵の歴史は別に新しくはない。先込め式小銃の戦列歩兵戦術自体が囚人兵をいかに逃亡させないように戦わせるかということを考えて作られた戦術であるからだ。

「置き土産作動。塹壕にさらに3か所の穴が開きました。」

「1か所が壊れたか。だが、初めにあけた穴に集中砲火をしていた米軍はしばらくの間わが隊の突撃を止めることができない。今のうちに第1塹壕戦を占領する。」


「第1塹壕線から撤退せよ。旧式銃とはいえあの狂気の突撃はなんなんだ。」


 その答えは麻薬その依存症だ。軍隊と麻薬が密接にかかわることはその後の歴史が証明している。第2次世界大戦期日本はヒロポンと呼ばれる覚せい剤を使い、ナチスドイツもぺルビチン錠と呼ばれる覚せい剤を使用し、現在でも北朝鮮兵士などに投与されている。

 この時代には突撃に伴う恐怖心を和らげるような覚せい剤はまだ主流ではない。覚せい剤の原料となる物質の抽出には成功していたが、それを薬剤として使うような研究はいまだ途上である。この時代の主流の軍用薬物は鎮痛剤として使用されるモルヒネが有力だった南北戦争では大規模な使用で戦後40万人が依存症になる規模だった。

 ならば依存症を利用すべし。死刑囚から始まり、長期受刑者が大量の薬物が投与され、依存症にされた。そしてその依存症患者に対し、薬物と引き換えの志願、薬物と引き換えの突撃命令を課せられ、米軍に薬物ありという偽情報を与えられた。それが薬物によって作られた恐怖を感じない軍隊である。

 さらに投与されたのはコカの葉やコカイン、ヘロインだった。コカの葉は古典的な薬物の一種である。量に比して薬害は低く、現在でも伝統文化として許容されている珍しい物質である、しかもアステカ文明では戦士が戦い前に使用し、恐怖を薄れさせるのに使用した。当時この目的で使用するには最も適しているものの一つであろう。これを製錬したものがコカインである。ヘロインは当時ドイツで開発された新薬で、ドイツの極秘裏の支援の下この作戦前になんと南米経由で輸送に成功した薬物が使用されている。依存性が極めて高く効果も極めて高い。

 こういったものを投与された死刑囚や受刑者たちは戦後釈放されても薬物依存で再犯を犯す確率が高いとは容易に想像できる。この作戦で生き残ったとしても後方から小銃で射殺されることが半ば決まっている。すなわち捨て駒である。


「第1塹壕線完全占領を確認。」

「よし。後方の砲兵隊砲撃開始。」

「味方の負傷兵がいるはずです。」

「負傷兵を死なせてもそれ以上に敵に損害を与えられる以上、有効な手だろう。問題はないはずだ。」

「…了解。砲兵隊。事前測量データをもとに撃ち方初め。目標第1塹壕線。」

 それが捨て駒の部隊と思いもしない米国は後方の砲兵隊に命令を出す。

「あと主砲弾が余っているから主砲弾を集中してやれ。」

「それでは十分な砲撃ができませんが。」

「それでいい。逃げてくやつらは敵陣を混乱させてくれる。その隙にこちらが攻める。突撃用意。」


「敵陣砲兵陣地発砲確認」

「第1塹壕戦を破壊する気だ。」

 メキシコ軍最前線司令官は馬を自陣に向けて走り出す。

「指令!!」

「彼らはだめだ。だがそれも作戦のうちだ。我々が巻き添えになる必要がない。」


「逃げ延びてくる歩兵はすべて殺せ。機関銃陣地撃ち方用意。」

 メキシコ軍の陣地は逃走する囚人兵を打つ準備を開始する。まず馬に乗った将軍が逃げ込んでくる。

「見えました!!」

「撃て。」

 メキシコ軍歩兵隊が銃弾を放つ。薬物汚染が浸透した囚人兵たちはその銃弾によってほとんど全員が死滅する。


「なんだ?」

 突撃中の米軍の司令官は前方から響く銃弾の音に耳をかしげる。

「わが部隊の位置と比較して圧倒的に遠いな。何をしている…メキシコ軍」

 しばらく突撃していると死体が増えてくる。

「まずい突撃中止!!敵はすでに迎撃準備している!!止まれぇ!!」

 直後、米軍は銃撃と砲弾の洗礼を受けた。


 しばらくして米軍は撤退した。

「奴らの意識を向けさせることには成功したか。これなら十分だ。撤退するぞ。作戦を実行する。」

 メキシコ軍はこの謎の撤退をする。残されたのはメキシコ軍の塹壕陣地だった。


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