第4章 第2次米墨戦争編-14 海の決戦1
アメリカ ワシントンDC 1908年1月16日
「メキシコ政府の強気な講和態度はABC艦隊の動きが原因と思われます。太平洋艦隊がABC艦隊を無力化せねば我が国は戦果のすべてを失いますぞ!!」
「第1次迎撃作戦失敗の報告です。敵艦総数12隻。撃沈1中波もしくは大破計5隻。残存艦6隻。当方の損害戦艦2大破、装甲巡洋艦3隻中波。残存の1隻はつかず離れずの位置にて敵艦隊の情報を探っています。」
「第1次迎撃は失敗か。第2次迎撃は成功するか?」
「すでに必要物資の輸送は完了しています。すでに二次作戦投入艦艇への途載も完了しています。成功するかではないです。成功させるしかないです。そうでなければ祖国の勝利の道はない」
ロサンゼルス 米第2太平洋艦隊 1908年1月17日
「こんな小船の寄せ集めの艦隊が第二太平洋艦隊とはな。」
アーネスト・キングは艦隊を見て目をしかめる。
「第1作戦に投入できないはずだ。」
「それに改修も必要だった。大型艦を沈めるための武装が必要だった。それに時間が必要だったしな。」
「だがあれは使えるのか?足が遅くて作戦海域にもつけないだろうに」
「さあ?それに関しては作戦前に説明が…」
「ニミッツ・キング両艦長殿。作戦会議が始まります。」
「…」
「…噂をすればというやつだな。」
同作戦会議
「特務艦2隻は2隻の駆逐艦を用い曳航。作戦海域へ急行する。作戦海域は現在、ABC艦隊に接敵している装甲巡洋艦サウスダコタの情報をもとに第1太平洋艦隊残存艦艇とともに襲撃行動を実施する。」
ABC艦隊 1908年1月18日
「あのペンシルベニア級排除できないか?」
「無理ですね。追えば逃げるでしょうが追いつけません。追撃を中止すれば再度接近してくるでしょう。しかもそのタイムロスは」
「タイムロスは致命的ではない。すでに米太平洋艦隊は壊滅している。堂々と向かえばいい。」
「ではなぜ提督はペンシルベニア級を警戒されるので?あの1隻を放置していてもすでに戦局は決しています。もしかして…」
「ああ…胸騒ぎがする。それだけだ。」
1908年1月19日 ロサンゼルス沖合
「曳航索切断。特務艦待ち伏せに移ります。」
「第1艦隊集結海域に太平洋艦隊残存戦闘可能艦艇の集結完了。」
「第2艦隊水平線の彼方へ退避。」
「作戦海域へのABC艦隊到着までおよそ120」
「作戦開始。」
2時間後 同海域 ABC艦隊旗艦 再編後編成1番艦 チリ艦 ブランコ・エンカラダ
「1時の方角に米艦隊確認」
「ペンシルベニア級3隻…先の海戦の残存艦艇です。」
「損害が大きかったはず。すべての船が十分な戦闘能力を持つわけではないな。おそらく機関区に被害がない高速艦艇を引き連れてきたといったところか。」
「では火力的には損害はあり、十分な戦闘能力を持つわけではないということですね。」
「おそらく。だがこの時点で出てきたことは異様だ。何かある。だが事実打ち漏らしたことに変わりない。」
「追尾してきた装甲巡洋艦を合流する進路。」
「砲弾は十分にある…戦線離脱艦から移した砲弾が。だが街を焼くには不十分だ。半数がやられているからな。」
「敵艦発砲炎確認!!打ってきました!!」
「左回頭し、後部砲塔も射界に入れろ。ここで奴らを完全に撃滅する。奴らをたたけば太平洋の制海権は我らのものだ。」
特務艦 SS-6パイク
「見えた。敵1番艦回頭2番艦以降は回頭していません。」
「3・4番艦を狙う。発射管は1門・3本の魚雷しかない。同時発射で命中率を上げる。」
艦長がつぶやく。ほとんど同時に轟音が響く
「指揮艦『SS-4グランパス』魚雷発射音確認。」
「魚雷打てぇ」
ABC艦隊再編成後3番艦 アルゼンチン艦 ガリバルディ(マジェスティック級)
「左舷から魚雷2本を確認!!」
「なんだって!!どこからそこには船はいないはず!!
「回避運動!!回頭中止右だ!!面舵!!面舵一杯」
「2本中1本右側の魚雷命中コース!!」
「近すぎる!! 間に合わない」
「次は打たせるな!!魚雷発射予想地点付近を見ろ船はあるか!!」
「総員衝撃の備えろ!!」
直後左舷艦中央部付近で大きな水柱が上がった。
ABC艦隊再編成後4番艦 アルゼンチン艦 ヘネラル・ベルグラノ(マジェスティック級)
「見張!!砲員!!目を凝らせ!!魚雷発射点を特定しろ!!」
「魚雷2本確認!!直線上に浮遊物確認!!」
「浮遊物を打て!!回避運動!!舵任せる!!」
「回頭右45度魚雷の間に入れ!!」
ABC艦隊再編成後2番艦 チリ艦 ミニストロ・ゼンティノ(ロイヤル・サブリン級)
「右舷舷側砲及び主砲敵艦隊を攻撃。左舷舷側砲は漂流物を打て」
特務艦 SS-6パイク
「敵艦当方への砲撃確認」
「急速潜行限界深度急げ。砲撃を食らえば!!」
艦長が言い終わる前に砲弾の水中爆発による衝撃が艦を揺らす。直後、艦は凹んだ。そこから浸水が始まる。
「排水ポンプ急げ浸水が大きすぎるぞ!!」
「間に合わない!!」
船は沈む。
「限界深度超えます!!」
直後SS-6パイクは圧壊した。
ABC艦隊再編成後4番艦 アルゼンチン艦 ヘネラル・ベルグラノ(マジェスティック級)
「魚雷回避成功」
危機は脱した。しかし、ヘネラル・ベルグラノは再び窮地に立つ。
轟音と同時に水柱が上がる。
「米装甲巡洋艦群からの攻撃。本艦に集中!!魚雷によってクロスファイアポイントに誘い込まれました。」
米装甲巡洋艦群から放たれる主砲弾は同時に12発第4射目が艦の重要区画をとらえた。艦橋直下に直撃。司令塔内部及び露天艦橋にいた指揮官級人材を全滅させたのだ。
「転舵…離脱しろ…」
負傷しつつも生き残った唯一の士官が介抱に来た兵につぶやく。降り注ぐ砲弾はどんどんヘネラル・ベルグラノの戦闘力を奪ってゆく。艦橋を失ったことから有効な反撃はできない。最後の指示を出した士官もすぐに息を引き取った。
ヘネラル・ベルグラノの戦闘能力は各所に散らばった次席指揮官が状況を把握、到着するまでの長期失われた挙句、追い打ちの砲撃はその混乱に拍車をかけた。
ABC艦隊再編成後5番艦 ペルー艦 コロネル・ボロネジ(マジェスティック級)
「ヘネラル・ベルグラノが進路を変えます」
「不関旗を掲げていないどちらに従えばいいんだ!!」
ヘネラル・ベルグラノの動きはさらに大きな問題を生み出した。陣形の乱れだ。ABC艦隊は同士討ちの可能性を増大させや統制射撃にも大きな障害を生んだ。特に後者は大きな問題を生じさせた。ABC艦隊の砲兵は陸軍砲兵を急遽転用したものだ。そのため統制射撃を実施していたが砲撃が混線する場合、どの砲弾が自艦の砲弾かわからないという事態を生む。その結果、命中精度が急激に低下してしまうのだ。
もはや数と接近して命中精度を上げることで勝負するしかない。
しかし接近することはできない。
接近すれば生き残った戦艦のうち半数を占める欠陥持ちのロイヤルサブリン級が被弾、爆沈する恐れが大きくなる。1隻でも失えば数的には不利になると思われたからだ。
ただ本来これは思い違いだった。米装甲巡洋艦群の4隻のうち2隻は各1基の主砲塔を損傷しており、実質的に3隻分の戦力しかない。それを冷静に判断できていれば接近して1隻ずつ確実につぶすという判断もできただろう。
だがその判断をしなかった。ABC艦隊は戦線離脱艦より砲弾を移し、砲弾に余裕があったこと米艦隊よりも射程が長かったことを考慮に入れアウトレンジでちまちま砲撃する道を選んだ。
米艦隊旗艦 サウスダコタ
「ヘネラル・ベルグラノはもういい。あの船の戦闘能力は喪失した。2隻いるロイヤルサブリン級を確実に撃沈する。だがその前に敵艦隊の1番艦を押さえる。前2隻を各個撃破する。」
戦闘海域の東側 第二太平洋艦隊
「第1目標は敵艦隊1番艦。装甲巡洋艦群を囮とし、確実に撃沈せよ。」
しばらくして米艦隊はABC艦隊の前衛(1,2番艦)の頭を完全に抑え、真東にあるロサンゼルスに向かえなくなっている。その代償に米艦隊の1隻の囮艦(後衛の5・6番艦を押さえている)を生じさせている。後衛艦はもうすぐ前衛を追い抜く勢いである。
米艦隊旗艦 サウスダコタ
「後衛の抑えに置いていたコロラドもう持ちません。後部主砲塔被弾したとのことです」
「第2艦隊から入電。作戦位置に到着。一斉回頭要請です。」
「よし。間に合った。後衛艦隊を押さえる。煙幕と盾の役目は終わりだ。前衛は第2艦隊に任せる。全艦を沈めろ。」




