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改史 大戦  作者: BT/H
14/83

第3章 欧州派遣編第1話 退役艦の将来

 欧州派遣編が始まります。

舞鶴1906年11月

 大日本帝国はあわただしく欧州派遣メンバーを選出。彼らは舞鶴港に集まった。日露戦争のために1904年11月3日に開通させた路線を通り、舞鶴に出る。舞鶴から先は軍用鉄道で軍港に到着。練習航海を兼ねた軍艦でウラジオストクックまで冬の日本海を渡る。冬の日本海は荒れることが知られている。 航海距離が短い関係で日本海銃弾コースよりも安全な対馬海峡横断はインフラの整備や治安レベルの遅れている朝鮮半島を通過するリスクと時間を考慮し、このルートで移動する羽目になった。 主要メンバーは

 政府政治家

・小村寿太郎

 海軍

・秋山真之

・近藤基樹

 訪問先のイギリスで平賀譲と合流予定

 陸軍

・秋山好古

 陸軍の要請で二宮忠八が同行


 だった。各員に随員は数人ずついたが、基本時にこの人数ですべてをやりくりする。予算不足で多くの人材を送ることができなかったことが原因である。

 ただ本気をうかがわせる陣容である。海軍は日本海海戦の作戦立案者であり、欧州派遣経験の豊富で暇(多くの軍艦が予備役及び退役の手続きに入っており、艦長クラスの役職が激減していたため)な秋山と日本の戦艦4隻をスクラップから救った近藤基樹造船大鑑がついている。現在、本国において戦艦の設計等が極めて忙しい時期であるが、同僚の小幡文三郎に任せ、彼はヨーロッパに行く。これはロシアとの交渉で設計変更を加えやすいという観点からの配慮である。

 さらに現地で、留学中の平賀譲と合流。欧州…特に英国を見る予定である。

 外務省は小村時太郎を派遣した。これはついでともいえる人事である。ロシアでは軍艦の輸出交渉、その後ヨーロッパへの外交折衝に向かうことになっているが、この派遣団がアメリカにわたるにもかかわらず、小村は在イギリス日本大使に任命され、イギリスに残留することになっている。この間、外務省の若手に交渉に関する指導を行う予定である。

 陸軍は騎兵将校であるにもかかわらず騎兵脱却をとなえる秋山好古が派遣されている。彼は欧州に最新技術を見るという名目で二宮忠八をはじめする一部の技術者をピックアップし、連れてきている。陸軍は高級軍人の派遣こそ少ないものの、技術者の派遣は多い。

「小村殿。海軍部内での結論はわかっておられますよね。」

「ええ。秋山…いいえ真之君。海軍としては旧式化した戦艦は押し付けたいのですよね。」

 日本が手配した民間旅客船のタラップをのぼりながら秋山真之が言う。

 日本海軍部内での会議では日露戦争鹵獲艦のうちの2隻…日本海海戦時、ロシアの最新鋭だった戦艦オリョール(石見)と旅人で鹵獲した戦艦ポルタワ(丹後)を無償返還する構想である。日本では英国ドレッドノート級戦艦の就役で旧式化した戦艦である。この2隻の戦艦は旧式化したうえに日本海軍の戦艦との砲弾の共通性がなかったため、独自の砲弾の生産ラインを運用せざるを得なくなるほどだったが、費用対効果が悪いことや戦場での補給の問題が想定できたために使い勝手が悪い船になってしまった。それならばロシアに返してしまえというのだ。これにより、廃棄コストや運用コスト抜きで戦艦を捨てることができ、ロシアとの外交関係も改善できるのだ。

 なお、同時に鹵獲された他の戦艦は1隻以外旧式であり、日露戦争で使用されたのちに退役している。この旧式艦は日露戦争当時においても旧式であり、バルト海艦隊を率いていたロジェストヴェンスキー将軍をも足手まとい扱いしていた。そんな旧式艦をロシアに返還しても印象が悪くなることが予想されたために部品取りを行った後に解体される予定である。

 残りの1隻はアメリカ製のレトヴィザン(肥前)鹵獲艦の中では比較的良好であり、さらにアメリカが装備した電装などの情報がほしかったために維持されることになる。しかし、予備役に編入される予定であり、砲弾使用量は極めて少なくなるため、砲弾の輸入で需要を賄う予定になっていた。

「そうです。日ロ関係に関しては小村さんの土俵でしょう」

「そうだな。カードをありがとう。」

 彼らと貨物を積み込んだ民間船は舞鶴を出航する。目的地はウラジオストック。その先、サンクトペテルブルク。長旅の間、何が起きるか彼達は知らない。


 日本国 海軍省

「薩摩型以上に強力な戦艦を建造しろ。むろん今後、諸外国が建造するいかなる戦艦をも打ち負かすことができる強力な戦艦を建造せよ」

 海軍から艦政本部(軍艦などを設計する組織)に命じられたのは当時日本最強と呼ばれていた戦艦薩摩や世界中の最新鋭戦艦を超える最強の戦艦である。

「大きさは抑えるように」

 とも言われており、全長は薩摩型よりも10m長い160mに抑えるように制限されている。その上で世界の平均的な戦艦よりも優速であることを求められた。

 全長の長さの短縮と速力はトレードオフ(一方を優先した場合、一方が阻害される)な関係であり、全長の短縮が行われるほど高速化は難しくなるのだ。

「情報が何もなければ何もできん。まあ、ほかにも仕事がありすぎて忙しいから事元勧める余裕がないのだけれど。」


 日本 海軍省

「三笠、富士をはじめとする旧式軍艦をいただきたい。」

 海軍大臣の斉藤実は    の訪問を受けた。

「富士をはじめとする旧式艦はともかく、三笠は使えんぞ。浮揚こそやったが、修理はしていない。解体待ちだ。」

「確かに三笠は使い物になりませんな。しかし、記念物にはなる。どこかに浮かべて一般公開すればそこの入場料で儲けられる。少なくともしばらくは。そのほかの船も国民精神教育のため日本全国を周遊させる。それなら使える。」

   は提案をする。

「確かに。ある程度は儲けられるだろう。三笠は了解した。だがそ例外に関しては海軍部内での会議を行い、決定したい。待ってくれ。」


 日本国 浦塩県浦塩町 港湾施設。(旧称ウラジオストック)

「貨客船が入港する。砕氷を行う!!出航!!」

 日露戦争の講和会議であるポーツマス条約で割譲されたウラジオストックは正式に日本領として編入された。しかし日本はこの時点でその実力を生かし切っていない。ウラジオストックは不凍港であるが、冬季凍らないわけではない。冬季凍るが、それを砕けば使えるという特殊な状況なのである。本来の不凍港は冬季に氷を砕くことができず、運用出来ない港のことを言う。

 日本はこの時、砕氷技術を持たなかった。正しくは日露戦争で鹵獲したそれなりに砕氷能力を有する旧式戦艦3隻を便宜上砕氷艦とし、利用しているだけである。旧式戦艦の砕氷能力では不十分という評価である。この3隻を利用しても日本は完全なる不凍港としての能力を生み出すことに至っていない。その上、まだ十分な整備が行われていない以上、需要が少ないため常時、航路の開拓(氷塊を割り、船の通る道を確保すること)を必要としていなかった。しかし、将来需要が増えると同時に優秀な砕氷船が多数必要となることがわかっている。そのため砕氷艦の出動の報告を貨物船内で聞いた秋山真之と近藤基樹造船大鑑は

「砕氷技術の輸入は浦塩の戦略価値を高めるでしょう。必ず手に入れてください」

 と小村寿太郎に詰め寄るほどだった。

 しばらくして貨客船が入港するための航路と停泊地の開拓に成功した。それが知らされると同時に貨客船はウラジオストックに入港した。

「お待ちしておりました。」

 港にはウラジーミル・ポリエクトヴィッチ・コスチェンコが待っていた。

「ウラジミール殿なぜここに!!」

 秋山真之は英語でウラジミールと話す。

「引率です。米国の方々はノーフォークからバルト海まで船で首都サンクトペテルブルクまで直通ですが、日本の方々はシベリア鉄道を使わないといけないですしね。それに私のような若手が出世するには他の方々と違うことをし、成果を上げなくてはなりませんからね。」

 ウラジミールは片目をつぶった。


 海軍省 会議室。

「旧式退役艦の運用に関して話し合いたい。」

 斉藤実は艦の運用に携わる人間を集めた。

「現在、旧式すぎて退役解体工事に入っていう2等戦艦扶桑、鎮遠やロシアからの鹵獲戦艦のうち旧式で実戦運用に適さない3隻の戦艦は当面冬季、浦塩県の港湾施設の砕氷、そのほかの時期には労役要員の輸送に従事することになっているが、今後ロシアの砕氷技術を学んだ後に効率の良い新型艦に代替され、解体される予定である。しかし、そのほかの退役艦に関しては方針が決まっていない。他の船の今後を決めるのがこの会議の目的である。」

 斉藤実は会議の冒頭で会議の内容を公表する。

「戦場における艦の保守に携わる艦が必要であると考えます。」

 真っ先に声を上げたのは加藤友三郎だった。

「旅順における長期包囲作戦では一部艦砲の寿命が尽きてしまいました。そのほかも整備不良を起こし、旅順の陥落が遅れた場合、艦隊を引き上げ、包囲を解かねばならない状況でした。戦場で艦艇を整備することができればこのような問題が起こる可能性が少なくなります。」

「どのような設備が必要だと考える?」

「大重量を持ち上げることのできる起重機(クレーン)それ以外については特殊な構造を必要としません。大きな起重機(クレーン)を搭載することそれだけが条件です。」

大型起重機(クレーン)か。」

「はい。砲身交換の際に必要です。通常、砲身交換は複数の主砲が存在しますが、内筒交換と呼ばれる主砲砲身そのものではなく、内部のみを交換する方法をとります。むろん砲身そのものを交換することもございますが、その作業の際に砲身自体を取り外すことに変わりありません。そのための大型起重機(クレーン)それ以外にも損傷した砲塔を除去し、臨時の装甲版でその開口部をふさぐなどの作業を行うにも大型起重機(クレーン)は必要になります。」

「艦政本部としも軍工廠で大重量を持ち上げる起重機(クレーン)船は必要であると愚考します。」

「改造にはどのような条件が必要か」

「強度のある土台を必要とします。条件に合うのは松島型の3隻。この主砲塔の土台そのものをクレーンの旋回機構に流用することができれば大型起重機(クレーン)を容易に搭載できるでしょう。問題艦首の衝角です。起重機(クレーン)の運用の際は接近する必要があります。その際に他艦を損傷させる恐れがあります。ここも改造が必要です。」

「余剰スペースは工作区画及び格納庫ですな。」

「この松島型3隻の整備用起重機船への改造に関する設計及び予算申請を行うか否かの評決を行う。反対するものは挙手。」

 その場のほとんどの人間が手を上げない。

「松島型の改造に関する設計及び予算申請を行うことを決定する。」

 斉藤実は小幡文三郎のほうを向き設計を開始することを命じる。小幡文三郎は首を縦に振る。

「今後退役する防護巡洋艦はどの用途で使用すべき会見はあるか。」

「練習船にしたやどうだ。」

 東郷平八郎は言う。

「練習船!?」

「艦ではなく?」

 その場の全員が驚く

 これについて説明する。

 海軍、民間問わず船には乗員が必要で、その育成のため船舶が存在する。その中で海軍籍に入っている(海軍が所有している)練習用船舶を練習艦、民間で運用(所有)している練習用船舶を練習船という。つまり東郷は旧式化した防護巡洋艦を練習船として民間船員の育成に使用しようというのだ

「民間練習船に転用するのは難しいのではないか?もしかして民間船乗員に戦闘訓練の受けさせるというのですか?」

「左様。民間乗員に通商破壊対策及び戦時徴兵を目的とした戦闘訓練を受けさせっ。ウラジオ艦隊を繰り返してはならん。」

 東郷は戦訓を含めていう。

 日露戦争時に日本艦隊はロシア艦隊の立てこもる旅順港に対する作戦を行っていたこのためロシア主力の拘束には成功していた。しかし、ロシアは旅順以外にも数隻の巡洋艦を配備しており、この数隻の巡洋艦が行う通商破壊作戦で多くの犠牲を出した。これに対抗するために日本艦隊は一部の軍艦を対策に充てざるを得なくなったのだ。

「商船にある程度対抗する戦力があればそう簡単には襲われないだろうと」

「左様。」

「それには平時から戦闘を考慮に入れた商船を建造する必要がありますね。平時には武装などデッドウエイトにしかならず輸送効率の低下を招きます。戦時に武装を搭載することができる構造ならばできるかと考えます。」

 小幡文三郎は答えるしかし一息区切り、また話し出す。

「しかし、平時と戦時における軍需物資の需要の偏りはより加速することは疑いありません。」

「水兵の供給の観点からは新兵の教育よりも短期で育成が可能であることは疑いありませんが今度は民間商船の乗員が不足する可能性がある点をご考慮ください。」

 日ロ戦争時代、東郷平八郎の下、参謀長を務めていた加藤友三郎は日本海海戦の勝利を軍神とたたえられ尊大になっている東郷にくぎを刺した。


 ロシア サンクトペテルブルク 駅

「つきました。」

 シベリア鉄道に揺られること10日以上ようやく列車は首都サンクトペテルブルクに到着した。

「わかりました。秋山閣下。」

 秋山好古は二宮忠八に耳打ちすると二宮は仲間に一言告げ、集団から離れる。

「我々は友好を深めるために陸軍参謀本部に向かう。」

 秋山好古はそれを確認したのちに一部の陸軍軍人…日露戦争時代の部下の一人とともに集団を離れる。

「さてと我々はゆきますか。」

 小村寿太郎は居残った外務、海軍関連将校に声をかけた。


 ほぼ同時期 ロシア サンクトペテルブルク 港湾

「ティラー殿」

 デヴィッド・ワトソン・テイラーはロシア側の出迎えを受ける。後ろには部下たちが多くの書類を携えている。

 デヴィッド・ワトソン・テイラーは米国で最も能力の高い造船技術者である。ドレッドノートやミシガンをはじめとする統一巨砲艦を世界で初めて設計した人物でもある。(ドレッドノートのほうが後に計画、設計されたが、完成が先んじたために世界初の統一巨砲艦として歴史に名が残ることになる。) 

 それだけでなく、船舶、航空機などの設計に重要な船型学(船の形を決める学問。)を完成させた人物であり、その生み出した技術は21世紀においても現役で使用されている。

「ああ。すぐにゆく。」

 ティラーは歩き出す。目の前には数台の馬車があった。

欧州に派遣されます。しかし本格的な動きは次話からです。

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