表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/209

クリスマスの贈り物

メリークリスマス!

「おとーさん、おかえりなさい。」


「ただいま。」


 トテテテっと廊下まで出迎えにきた娘の頭に、そっと手を伸ばしながら話し掛ける。


「おや、今日はずいぶんとおめかしさんだね、リボンかわいいよ。」


 すると、にぱっとうれしそうな顔になり、両手で私の手をとると、後ろ向きのまま引っ張って部屋に連れて行こうとする。腰をかがめて娘を覗き込むような体勢になった私を、笑顔のまま見上げて、声を弾ませ話し始める。


「あのね、わたしね、ひとりでね、くつしたがはけるんだよ。」


「それはすごいね。」


「うん、やってみせたげる。おかーさん。」


 くるりと向きを変え、部屋に向かって走り出す。


 顔を上げて確認すると、部屋の中から、うちの奥さんが目配せしてる。あれは、ちゃんと誉めてあげてねって目だ。


「おとーさん、ちゃんとみててよ。」


 妻のそばに、ちょこなんとすわりこみ、慎重に向きを確認しながらつま先を入れる。一所懸命に引っ張るものの、かかとがひっかかって手が離れてしまう。勢いあまって後ろに倒れこみそうになりながらも、なんとか片足を収めることに成功、すぐにもう片足にとりかかる。


「できた!」


「すごいすごい、じょうずにはけたね、えらいぞ、よくがんばったね。」


「えへへ。」


「よしよし、じょうできだぞー。」


 言いながら、妻がぎゅーっと娘を抱きしめる。


「いっぱい練習したんだもんねー。」


「ねー。」


「ほら、おちびさん、ちょっとそっち向いて、リボン直してあげる。」


 赤いラインで縁取りされた緑のリボンを、妻がふんわりと娘の髪に結び直す。


「はい、これでよしっと、お父さんのところにいっといで。」


 ぽんっと娘を私に向かって送り出した。


 駆け寄ってきた娘を抱きあげながら、うちの奥さんに顔を向けると、したり顔をしている。


「なぁ、もしかしてこれって。」


「そ、クリスマスプレゼント。」


次回は、『テンプレに挑んでみました』です。


どうか良いおとしとりを。


来年が良い年でありますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『みどりの竜』
 一話完結、ショートショートコメディです。


『月の音色』
 声優、大原さやかさんのネットラジオに投稿した400文字以下の物語


『いくとちゃんとおじいちゃん』
 子供に読み聞かせるとき、大人も一緒に楽しめる童話を目指しました。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ