クリスマスの贈り物
メリークリスマス!
「おとーさん、おかえりなさい。」
「ただいま。」
トテテテっと廊下まで出迎えにきた娘の頭に、そっと手を伸ばしながら話し掛ける。
「おや、今日はずいぶんとおめかしさんだね、リボンかわいいよ。」
すると、にぱっとうれしそうな顔になり、両手で私の手をとると、後ろ向きのまま引っ張って部屋に連れて行こうとする。腰をかがめて娘を覗き込むような体勢になった私を、笑顔のまま見上げて、声を弾ませ話し始める。
「あのね、わたしね、ひとりでね、くつしたがはけるんだよ。」
「それはすごいね。」
「うん、やってみせたげる。おかーさん。」
くるりと向きを変え、部屋に向かって走り出す。
顔を上げて確認すると、部屋の中から、うちの奥さんが目配せしてる。あれは、ちゃんと誉めてあげてねって目だ。
「おとーさん、ちゃんとみててよ。」
妻のそばに、ちょこなんとすわりこみ、慎重に向きを確認しながらつま先を入れる。一所懸命に引っ張るものの、かかとがひっかかって手が離れてしまう。勢いあまって後ろに倒れこみそうになりながらも、なんとか片足を収めることに成功、すぐにもう片足にとりかかる。
「できた!」
「すごいすごい、じょうずにはけたね、えらいぞ、よくがんばったね。」
「えへへ。」
「よしよし、じょうできだぞー。」
言いながら、妻がぎゅーっと娘を抱きしめる。
「いっぱい練習したんだもんねー。」
「ねー。」
「ほら、おちびさん、ちょっとそっち向いて、リボン直してあげる。」
赤いラインで縁取りされた緑のリボンを、妻がふんわりと娘の髪に結び直す。
「はい、これでよしっと、お父さんのところにいっといで。」
ぽんっと娘を私に向かって送り出した。
駆け寄ってきた娘を抱きあげながら、うちの奥さんに顔を向けると、したり顔をしている。
「なぁ、もしかしてこれって。」
「そ、クリスマスプレゼント。」
次回は、『テンプレに挑んでみました』です。
どうか良いおとしとりを。
来年が良い年でありますように。




