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奥様はエスパー
僕の妻は、多分、エスパーだ。
「辞書を返してくれる?」
「枕が変わると眠れないものね。」
必ず、先回りして落ちを言う。
「おはよう、ニュースで列車が止まってるってさ。」
「へぇ、どこの国で?」
ダメか。
「お弁当にサンドイッチを作った余りだけど、食べるよね?」
「わぁ、あなたがそんな事を言うなんて”耳”を疑っちゃうな。」
「ハハ、珈琲でも…、大変だ!水道から水が出ない。」
「蛇口をひねれば。」
「はい。」
「君は、砂糖無し、ミルクだけで良かったよね?」
「いや、ちゃんとコーヒーもちょうだい。」
今朝も僕の完敗。
外で待ち合わせて、夕食とデザートを楽しむ。
「そのケーキ、一口もらってもいい?」
「苺以外ならね。」
帰り道で屋台を見かけた。
「たい焼き半分こしようか?」
「じゃあ、私、左側面ね。」
そんな手強い君と夜空の下。
「月がきれいですね。」
「ほう、月の無い夜には気をつけろと?」
君は、なんでそこだけ…
次回は、『魔法のエトセトラ』です。




