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ドッグイヤー
「先輩、休憩終わりっすよ、交代の時間です。」
「ん、ちょっと待ってね。」
「えっ先輩、それは何をしているんですか?」
「見てわからない?、ドッグイヤーって言って、こうして目印に雑誌の隅をおしょっておくと、どこまで読んだのかが、わかるって寸法だよ。」
「いやいやいや、雑誌一冊分、全ページまとめておしょってるじゃないですか。」
「これでわかるよ、じゃ、お仕事してくる。」
休憩室の机にポツンと残された4コマ誌、その意味不明の行動の意図を、僕は、終業後に知ることとなった。
「君、この本、がっつり読んだね?」
「え?」
「フック状に折りこまれたページは、開くことではがされて、本を閉じたときには、元には戻らないんだよね。今度は、フックの外側を押されて、一枚ずつバラバラのドッグイヤーになるんだよ。」
「つまり、君がどこまで読んだのか、わかるって寸法だ!」
「意味不明です!、それがわかると嬉しいんですか!」
次回は、『目が離せない』です。




