ヘッドハンティング
お題「働きたい会社」
「風邪ですか?」
一度、事務所を見学に、というお誘いをうけての訪問、案内の人の後を歩いていると、時折、けほけほ、背を丸めては肩を揺らしていて、つい声をかけてしまう。
「すみません、謎のマスクマンで。」
割と人見知りな私に、フレンドリーが過ぎちゃうのは、むしろ毒ですよ。
「いえ。」
これで精一杯。
「たまにむせるくらいで、熱もありませんから。」
曖昧に笑い、こくりと頷く。
ごめんなさい、私には、話をつなげるの無理でした。
「あ、着きました、ここがうちの心臓部です。」
でもなぜか、部屋から子供の声がする。
覗くと女性二人が、兄妹と思しき子供達の相手をしていた。
「お母さんは、まだお仕事だから、向こう行こうね。」
「うん。」
「あら、あんた達、今日は良い子なのね。」
「おねえちゃん、おやつくれるって。」
「まあ。」
けほっ。
その時、むせた彼に気づいて女性が声をかける。
「何しているんですか、奥にどうぞ。」
「いや、子供のいる所へは。」
あ、ここ、良いとこだ。
毎週、土曜日に更新予定です。
次回は、『ミケさん奮闘記』です。
連載中の『みどりの竜』と『月の音色』も、よろしくお願いします。




