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椅子
椅子に座るためには、まず背を持ってひかねばなるまい、うん。
両手が空いていれば一旦持ち上げることも叶ったのだろうが、床を引きずる時の音と予想外の重さに、わずかばかりたじろぐ。
日頃より事務の椅子とばかり仲良くなりすぎていたことに、心密かに涙しながらも、折角、思い切って良い雰囲気のお店に飛び込んだのに、席にもつかないうちにダメージをうけてどうするの、と、おもむろに気持ちの立て直しをはかる。
だから、椅子を引いてくれる様な相手がいてくれたなら――なんてことに、決して気がついてはいけないのだ。
こういうのは、どうでしょうか?




