100/209
ネタがない!
「ネタがない!」
「どうした、突然。」
「何か小説のネタを頂戴、男女の、こう、見ている方が切なくなるような、そんなのがいいなあ。」
「んー、そうだなあ、このあいだ街で見かけたんだけどね。」
「うん!」
「中年の男性と、中学生くらいかな、女の子が並んで一緒に歩いていたんだ。」
「えっ、あー、うん。」
「それで、お父さんの方はご機嫌で、ニコニコ満面の笑顔だったんだけれど、娘さんの方はポケットに手を入れて、ずっと自分のつま先を見つめながら、歩いていたんだ。」
「切ない!、お父さん、見ている方が切ないよ!」




