第23話
久々の更新です。遅くなりまして申し訳ありません(>_<)次回の投稿は未定ですが、頑張って書き終えますので、気長に宜しくお願い致します☆
松尾達が研究所の地下に向かう一方で、地下道を突き進む神谷達は一抹の不安が棘が引っ掛かった様に突き刺さり、彼等の焦りを更に煽る形になっていた。
神谷達も地下道の最後尾に辿り着き、後は頭上部にあるバルブを回し埋め立て地から脱出を達成するのみであった。
しかし、長年その役目を果たさなかったバルブは錆びが激しく固く開封される事を意味嫌うかの様に本来の動きを拒否していた。
『………ん………くっそぉ………後少し………な………の………に!………』
精一杯の力を込め息を止めて力を入れた為顔面に血が登り赤く染まる、その甲斐あってか徐々にだがバルブは回っていく、
一筋の光明が射しつつも背後から聞こえてくる銃撃音と死者の呻き声がより一層激しさを増し、近付きつつあった。
向井が悪戦苦闘を強いられている背後では大野と秋山が、彼等の使用している重火器はそれなりの威力を発し死者の手足を吹き飛ばし死者達の進行を旦かに食い止めては居たが、手足をもがれスピードダウンしながらも、その動きを止める事なくなく己の欲求に従順に従い確実に近寄る死者に疲弊を徐々に見せる。
『くそ!………あいつら何処撃ちゃあ、くたばんだよ!』
大野が苛立ちを声に出し叫んだ。その声は秋山や神谷にも届いて居たが、二人とも防戦に必死でノーリアクションで額に汗しながらも死者達を撃ち抜く手を休めなかった。現状は切迫しており、この場を死守し乗り越えねば自分達に先はないと大野ですら悟っていた。
何も出来ず手を子招いている青木と小田は、ただただ、祈る様に向井がバルブを回し、蓋を開ける事を願う様に、時折後方を気にしながらも見守るしかなかった。
『………んっ………くっ………そっ!………もう………少しで………』
『ギ………ギギッ………』
追い詰められた向井の力は尋常で無い程増している、火事場の糞力だ、自分の帰りを待っている妻子の事、こんな場所で死んでたまるかと言う強い思いが彼の力が増す要因となっていた。
神谷と大野が銃器で応戦しつつ、秋山が替えのマガジンを渡し彈幕は問題ないと思われた、しかし確実に減っていく銃弾と多少勢いを弱めてはいるが確実に近寄りつつある不死者、
不死身の不死者にとって神谷達の抵抗は気休めにしかなっていない事は、火を見るより明らかであった。大野、神谷、秋山の額には冷たい汗が流れていた。
地下ならではで響き渡る銃声、その音を遮る厚い蓋、
銃声と不死者の叫び声が地下通路だけに木霊していた。神谷の管理していた倉庫内部にも響いてはいたが、神谷の倉庫内にいた不死者達は銃声が響くよりも先に田沢達がいる研究所へと進み寄っていたからだ、
『キュ………キュ…キュ…』
セメントで固められた様に回される事を拒否していたバルブが段々と軽く回って行く、不可能とさえ思われた難関を向井が突破したと言う証の音でもあった
。瞬時に青木と小田の表情に希望と言う兆しが現れ二人は手を合わせて喜んでだ。
回す事に力を要さなくなったバルブを先程よりも軽々と軽快に回す向井、
『………もう少しだぞ!』
どんどんと調子を取り戻し締め付けを解除していくバルブ、向井の心は踊っていた。錆で滑りを妨げていた音は無くなり、バルブの抵抗が無くなったのを感じると向井は希望に満ちた表情を押し隠す様に蓋を開けた。
久々に役目を果たした蓋はギギッと嫌な音を立てたが、向井は出来る限り嫌な音を出さない様に蓋を開けた。
開いた蓋の先は闇に閉ざされ、不気味な程静寂に包まれていた。周囲を警戒し左手で蓋を持ち上げながら右手で拳銃を構え見渡す向井、暗闇に目が慣れ誰も居ないと分かってはいても向井は警戒しながら地上に出た。
向井が梯子を登り終えたのを確認すると待っていた青木と小田が向井に続いた。地上で二人を出迎えた向井の表情は旦かに明るかったが、青木と小田に対して無言を貫く様に口元に人差し指を突き立て静かにと促していた。
地下の銃声が煩いと思える程聞こえてくる。向井は自分達が這い出た場所が何も無い工場屋内と言う事に気付く、
『………此処は!?』
地下から聞こえる銃撃音でさえ、イヤホンから漏れでる様に小さく聞こえる程、地上の屋内は静まり返り、その静けさを向井は警戒した、その静けさの中に危険は無いと持っていたライトで周囲を確認する、向井は警戒を強め異様な静けさの漂う地上に脚を下ろした。
更に周囲を警戒し気配さえ感じなかった向井は、下で待機していた小田と青木にジェスチャーで上がる様に指示を出した。
向井の手招きを見た小田と青木の表情に明るさが増し、青木に先に梯子を登る様に小田が促した。残った小田は小走りに神谷達に駆け寄り言葉を掛ける。
『出口開きました!………脱出しましょう!』
力強く放たれた小田の言葉に神谷達の切迫した表情に光明が射していた。小田の言葉に三人が力強く頷く、神谷は小田に先に行けと指示し再び不死者に銃口を向け躊躇なく撃ち抜いて行く、小田は自分が此処に居ては足手まといと感じ青木が登りきった梯子をそそくさと登った。
出口は開いた、後はタイミングだ、
ただ、
そんな空気を都合良く察してくれない不死者達、神谷は秋山に対し梯子を登る様に指示を出した。
『次は君の番だ!』
しかし秋山は躊躇した。今自分が離れれば交換用のマガジンを渡す者が居なくなり、二人では不死者に近寄る最大の隙を与えてしまう、
しかし秋山の一抹の不安を大野が掻き消す、
『………何グズグズしてやがる!さっさと行け!後がつかえてんだぞ!!』
大野の叱責に躊躇っていた秋山は背中を押され慌てた様に梯子に向かい、登り始めた、不死者に銃弾を浴びせながら、秋山が梯子を登る様を確認し、額に汗しながらもその様子に笑みを溢す神谷と大野、
緊張と焦りから出た笑みだったが、高ぶる気持ちを神谷達は抑えられずに居た。
手足を銃弾で撃ち抜かれ様が近付く屈強な不死者、だが直ぐ後ろには自由への扉が口を開けて待っている。
時が来たのだ、秋山が梯子を登り終える寸前、向井が秋山の手を掴み引っ張り上げた。秋山が地上に上がると青木と小田は無言ながらも最高の笑みで脱出成功の喜びを分かち合った。
その間に向井は地下に上半身を潜らせ、銃声と不死者の呻きに負けぬ程に声を張り上げた。
『よし!………次だ!』
向井の言葉に一瞬だけ神谷と大野が向井と視線を合わせたがタイミングが掴めず、二人は額に汗を流しながら防戦一方で手を離せぬ姿勢を見せていた。
地上から覗き込む向井、その視線の先には神谷と大野が中腰で向井には目視出来ぬ不死者に銃弾を浴びせる二人だけが映っている。一向に上がってこようとしない二人にやきもきする向井、だが分かる!動かないのではなく、動けないのだ。この場から一人でも抜けるば弾幕は弱まり勢いを弱めたとは言え不死者が攻めいる。その進行を足止めするには一人では到底不可能、神谷は右手のみで銃を撃ちながら左手を近くに置かれたリュックに突っ込むと何かを手探りで捜し当てた。
それは予備のマガジンと手榴弾であった。手榴弾をリュックから出すと、先ずは一旦地面に置き、弾薬の切れた銃のマガジンを交換した。神谷が交換を終えると、次は大野がマガジンの交換をしようとリュックに手を掛けた瞬間だった。
『大野!………行け!』
ふと神谷の叫びに体を硬直させる大野、
神谷が叫んだ後、手榴弾を手に持ちピンを口に加え、それを抜いたと同時に不死者に向かって投げつける。
数秒後爆音と砂埃が舞い大野は両手で頭を防御した。飛び散った破片がおさまり、土埃が和らぐと、大野は再度神谷に顔を向けた。神谷は大野と視線が合うと再度叫んだ、
『今だ!早く行け!』
大野は咄嗟に動こうとしたが躊躇し、言葉を発した。
『でも………神谷さんは?』
その言葉を言い終えた直後に不死者の声が耳に入ってくる。
不死者の貪欲な欲望に焦りながらも、冷静にマガジンの交換を終える大野、その大野に対し神谷は続けて声を張り上げた。
『今しかない!………先に行け!』
確かに千載一遇のチャンスであった。知能と痛覚が多少残っている不死者が怯んだのだ。神谷の気遣いを無駄にしない様に大野は梯子へと掛け登る。その様子を目視すると、神谷は再度リュックから手榴弾を取り出しピンを抜くと不死者へと投げ付け、爆発の間にマガジンを交換した。
梯子を登り終えた大野は地上に出ると直ぐに地下通路へと顔を出し神谷に向かって声を張り上げた。
『神谷さん!………早く!』
大野の言葉に神谷は身近にあったリュックを手に取るとうつ伏せの状態から中腰になり脱出準備を始めた。
『か、神谷さん!早く早く!……』
大野からは不死者が目視出来ず、援護しようにも出来なかった。援護が出来ない事を神谷が察知し今まである程度アバウトに発砲していたが、そこから慎重に狙いを定めると言う項目が加わっていた。
ある程度の距離を保ち、脱出の期を伺っていた神谷にチャンスが訪れた。不死者が少々の怯みを見せると、神谷はさっと立ち上がり梯子へと向けてダッシュした。
梯子を額に汗を帯びながら掴み足早に登ろうとする神谷、後少しの時間が濃密になったかのように長く感じ希望に溢れた地上目掛け登っていく、後少しと思ったその時であった。神谷が次の段に足を掛け様とした時であった。
神谷は足を不死者に捕まれた………
捕まれた足を振り程く様に抵抗する神谷、やっと神谷が梯子を昇る様が見える大、ふと不死者を見詰め大野を見る神谷、
その神谷の目が決意を露にし、大野達に声を掛けた。
『………蓋を閉じろ!』
神谷の発言が信じられぬ、聞き間違えかと思え、疑問を口にした大野に神谷は再度言葉を投げた。
『………行け!………こいつらは俺が何とかする!』
決意を露にした神谷は次の瞬間額に汗を流し切迫の表情を一瞬見せたが、その直後大野に向け笑顔を見せた。
『………後は………頼んだぞ………』
そう言うと、神谷は右手で梯子にしがみつき
、何とか左手でリュックの中から手榴弾を2つ取り出し、一つのピンを口にくわえ様としていた。その寸での所作前に神谷は言った。
『………早く蓋を閉めろ!!………』
それが神谷の最後の言葉だった。
その直後、手榴弾のピンを口で引き抜いた神谷は梯子から手を放し不死者に引き摺られる様に梯子から落ちて行った。
地上の向井が神谷の行動を察し地下に顔を出した大野を引き上げ、蓋を閉めバルブを急遽閉め直し蓋を閉じた。
地下通路に取り残された神谷に襲い掛かる不死者がスローモーションに見える神谷、頭にかぶり付く寸前神谷は祈る様に脳内で言葉を発した。
『………すまない………今
、そっちに行くぞ』
その瞬間、向井達の居た地上に衝撃が伝わる。地下での爆発の影響だが、蓋が頑丈だったお陰で、少しの振動に留まった。ただ蓋を押さえていた向井は振動と共に涙を流しはを食い芝っていた。、




