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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第7章 悪役公爵マークスチュアート、王家と対立す

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11 「お話」

「お父様にお話があります」


 夕食の場で、フォルシーナはそういきなり切り出してきた。


 客人扱いのマリアンロッテも食卓についているのだが、彼女も俺の方をじっと見ているのでフォルシーナに同調していることがわかる。


「聞かせてくれ」


「お父様は今日、大精霊様と……そそそ、その、せ、せせ……っ」


「……接吻せっぷんですよフォルシーナ」


「そ、そうです。大精霊様と、そのせ、接吻をされたのですか?」


 あ~その件か。やっぱりマリアンロッテは気になってしまったようだ。


「形としてはしたということになろうな。しかしマリアンロッテ嬢にも言ったが、あれはただ『精霊の祝福』を与えるための儀式にすぎぬ。精霊と我ら人間では価値観がまるで違う。イヴリシアは人間に似た姿をしているので勘違いをしてしまうが、我々とは行動原理が異なるということは忘れてはならぬぞフォルシーナ」


「そっ、それは本当にそうなのでしょうか?」


 疑わしそうな目を向けてくるフォルシーナと、その隣でうなずくマリアンロッテ。


 う~ん、やっぱりまだ彼女らにはこういう話は難しいか。


「それでは逆に聞くが、フォルシーナはそのことのなにが問題だと思うのだ?」


「えっ!? いえ、その、せせせ、接吻をするということは……お父様は大精霊様に……好意を持っていらっしゃるのでは……ないかと思いまして……」


 やっぱりそっちだよなあ。娘としては父親が美人の大精霊とイチャイチャしててたなんてことになったらそりゃショックを感じるだろうな。


「その好意というのが恋愛感情を意味しているのであれば、それは違うと言おう。今回の事はあくまで儀式であって、それ以上の意味合いはない」


「それは本当でしょうか?」


「本当だ」


「では儀式であるならば、お父様は私にも接吻をしてくださいますか?」


「ん……っ!?」


 想定外の質問が来てしまった。だがまだ腹黒公爵が慌てるような状況ではない。


「……どうしても必要な状況であればな。このようなことはあり得ぬ話だが、たとえば接吻せねばお前の命がないなどということがあれば、助けるためにすることもあるだろう」


 言っててキモいことこの上ないが、たとえの話なのでセーフのはず。


 などと心の中で言い訳をしていると、マリアンロッテがずいっと身を乗り出してくる。


「で、では、もし私が相手でも……同じくしていただけるのでしょうか?」


「うむ。マリアンロッテ嬢の命がかかるようなことがあるならな」


 まあそんなことはありえないけどね。


 と思ったのだが、そういえばゲームではキスをしないと解けない呪いイベントが存在したな。ただあれば恋愛フラグが立ってないと起きないものだからな。俺には関係ないはずだ。


「……なるほど、お父様のおっしゃることはわかりました」


「うむ。あくまで儀式だからな。そこは勘違いしないでほしい」


「つまり必要であれば、お父様は誰とでも接吻なさるということですね?」


「んん……っ!?」


 いやどこからそんな話になるのだろうか……と思ったが、たしかにそんな意味にも取れなくはない、のか?


「それは悪意のある解釈というものだフォルシーナ。起こりえない事態を想定して私に節操がないような言い方をするのは正当ではないぞ」


「起こりえない事態、ですか? 本当にそうでしょうか」


「うむ。そのような事態はありえぬ」


「たとえば領民や王国民を守るために誰かとの接吻が必要なら、お父様はなさるということですよね?」


「意味がわからぬが……?」


「王となるのに必要ならなさいますよね? 国をよりよく治めるのに必要ならなさいますよね?」


「なおさら意味がわからぬが……」


「意味がわからなくてもお答えください。なさいますよね?」


 とたたみかけてるフォルシーナに浮かぶのは久しぶりの『氷の令嬢』面。


 え、どこにそんな要素が? と焦ったが、もしかしたら俺に王としての覚悟があるかどうかを試しているのだろうか。もしその覚悟が適当なものであれば、断罪ルートが復活するとかそんな感じか?


「……う、うむ。私が王となるかどうかはまだわからぬが、民を守るために必要なら……まあ、するのもやぶさかではない、な」


 と答えた瞬間、フォルシーナの顔から表情が抜け落ちた。


 地雷を踏んだかと思ったが、フォルシーナはその後なぜか盛大な溜息をはき、諦めたような顔になって背もたれによりかかった。


 正解だったのか間違いだったのかよくわからないんだが、『氷の令嬢』面は消えたので正解……だったのだろうか。


「なるほど、お父様のお覚悟と、そして()()()()()()()はよく理解できました。私も娘として、それは受け入れたいと思います」


「う、うむ?」


「ただお父様、私が特別だとおっしゃったことはお忘れにならないでくださいませ」


「あ、ああ。もちろんそれを忘れることはない。この先なにがあってもな」


 う~ん、フォルシーナがなにを納得したのかまったく見えてこないのだが、彼女がいいというのなら掘り返すのも愚かというものか。


 とにかく今はロークス・ゲントロノフ相手にどう被害を抑えて勝つかに集中しないといけないからな。

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