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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第7章 悪役公爵マークスチュアート、王家と対立す

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10 精霊の祝福再取得

 館を出た俺は、練兵場にいた将軍ドルトンに例の『転移の魔道具』の情報を伝え、対策を共に練った後、そのまま館の北にある森へと向かった。


 もちろん泉に住まう『大精霊』イヴリシアに会うためである。


 泉が見えるところまで歩いていくと、そこには先客がいた。輝くような金髪をツーサイドアップにした『光の聖女』、メインヒロインの一人マリアンロッテである。


 どうやらイヴリシアと話をしているところだったようだ。なおイヴリシアは、今日は普通に白い布を身体に巻き付けた通常バージョンである。


 俺に気づいてマリアンロッテが振り向き、にっこりと微笑んだ。


「ブラウモント公爵様、お帰りになっていらっしゃったのですね」


「うむ、先ほどな。マリアンロッテ嬢はイヴリシアと話をしていたのかな?」


「はい。精霊について詳しいお話を聞かせていただいておりました。イヴリシア様の他にも、『火』『土』『風』を司る精霊様がいらっしゃるそうで、とても驚きました。公爵様はご存じでしたか?」


「書物で読んだことがあるな。ただイヴリシアから直接は聞いてはおらぬ。マリアンロッテ嬢は勉強熱心だな。頼もしく思うぞ」


 と褒めると、マリアンロッテは両手を胸の前に組んで頬を染めた。好感度アップチャレンジは今日もキレているようだ。


「あっ、ありがとうございます。公爵様もイヴリシア様とお話をしにいらっしゃったのですね?」


「少し邪魔をするが許してほしい」


「そんな、邪魔なんて……お会いできて嬉しいです。あっ、こちらへどうぞ」


 顔を真っ赤にするマリアンロッテに促され、俺はイヴリシアの前に立った。


 イヴリシアは相変わらずの半透明+後光によって大精霊っぽさを存分に発揮しつつ、すうっと俺に近づいてきて一礼した。


『これはマークスチュアート様、ご機嫌麗しく。会いにきてくださってとても嬉しく思います』


「最近はなかなか来られず済まぬな。こちらの居心地は問題ないか?」


『ええもちろんです。この土地は本当に力が集まっていて住みやすく感じます』


「貴女にいただいた『精霊の祝福』のおかげで災厄の一つを封じることができた。礼を言わせていただこう」


『それはなによりでした。しかし近くに、不思議な力をもった者がいるのを感じるのですが……』


「それは例の古き遺跡に眠っていた者だ。私の配下に入るというので連れてきたのだ」


『なんと……。そのような者まで使役するとは、マークスチュアート様のお力には限りがありませんね』


 そう言って両手で肩を抱き、身体をくねらせるイヴリシア。


 なぜそこで好感度アップ? と思わなくもないが、『大精霊』ならではの判断基準があるのかもしれない。


「ところでその『精霊の祝福』なのだが、再びいただくことはできないだろうか。実はその遺跡で祝福の力を使ったせいか弱まってしまったようなのだ」


『それはもちろん構いません。マークスチュアート様にならばどれだけでも与えて差し上げます』


 イヴリシアが距離を詰めてくるので、俺は前回を思い出し目をつぶる。


 あれ、そういえば今マリアンロッテが見てるんじゃないか? いやまあ大丈夫か、ただの儀式だしな。


 唇に柔らかい感触があり、『精霊の祝福』が身体に入ってくる。しかし儀式とはいえ、イヴリシアに何度も()()させてしまうのは申し訳ない気がするな。ゲームではなぜ一回受ければ再充填不要のシステムにしなかったのだろうか。


「えっ!? こ、公爵様……はわわわ……っ!」


 後ろのほうで奇声が上がる。


『精霊の祝福』を与え終えたイヴリシアが、どことなく上気したような表情で離れていく。


 俺は礼を言って、声のする方を振り返った。するとそこには、真っ赤になった顔を両手で覆って、膝をカクカクさせているマリアンロッテの姿があった。


「どうしたマリアンロッテ嬢?」


「い、いえ……そのっ、今のは……せ、接吻せっぷん……ですよね?」


 あ~やっぱり女の子が見たら驚くか。でもただの儀式だしなあ。


「人間でいえばそうなろうな。だがこれはあくまで『大いなる精霊』による『精霊の祝福』の儀式だ。人間のそれとは意味合いが違う」


「そ、そうなのですか……?」


 マリアンロッテが疑わしそうな、それでいて安心したような顔で俺を見上げてくる。


「うむ。そうだ――」


「ふふふっ、それはどうでしょうか? 接吻の持つ意味は人間も精霊も変わりはないかもしれませんよ、マークスチュアート様」


 いきなりイヴリシアが爆弾気味な発言をしてくるので、俺は思わず振り返ってしまった。


 身体をくねらせて流し目をするイヴリシアの姿は、『大いなる精霊』というには妖艶にすぎる雰囲気がある。うん、やっぱりソシャゲの影響があるなこれ。


「イヴリシア、そのような勘違いを生む言葉は避けた方がよい。男とは、貴女のような美しい女性の言うことを積極的に勘違いする生き物なのだ」


「まあ……! さすがマークススチュアート様、女が喜ぶツボを心得ていらっしゃいますね」


 くねくねと好感度アップ(大)動作をするイヴリシア。ただ忠告をしただけなのだが……そもそもイヴリシアに会いに来る男は少ないから必要ないアドバイスだったかもしれない。


 さすがに『精霊の祝福』をもらってすぐに館に戻るのも情がないと思ったので、その後少しイヴリシアと会話をした。マリアンロッテが聞いたというイヴリシア以外の精霊の話なども聞いたのだが、俺の知識とほとんど違わないのでそこは安心した。


 マリアンロッテはいつの間にかいなくなっていたのだが、勘違いは解けたのか確認を忘れてしまった。たぶん大丈夫だろうが、次に『精霊の祝福』を受ける時には注意をするようにしよう。

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