13 帰還
その後ほどよいところで『転移魔法』を使って、一度ブラウモント公爵邸に戻った。
ヴァミリオラたちは王都へ戻そうと思ったのだが、今後の話をしたり『大精霊』やゴーレムを見たりしたいというので、一泊をしてから帰るということになった。
執務室に転移して少しすると、気配を察したのか家宰のミルダートがやってきた。
「お館様、お帰りなさいませ」
「うむ。こちらの方はなにかあったか?」
「アラムンドがジラルナらダークエルフ族4名を連れて参りました。そちらは使用人の部屋を与え、アラムンドに指導をさせております。それと元王国宰相のマルダンフ侯爵からお礼の品が届いております。それ以外は特には」
「そうか。ならば結構。こちらは予定の目的は達した。今日はローテローザ公とその妹御、それと聖女オルティアナがこちらに泊まる。済まないが部屋を用意して欲しい」
「承知しました。そちらの幼子は……?」
「この娘については後で話をする。ああ、名前があった方がよいな。フォルシーナ、なにかいい名前を付けてやってもらえるか?」
「承知しましたお父様。マリアンロッテたちと相談して決めたいと思います」
「うむ、そうしてくれ。それと彼女たちには風呂に入ってもらおうか。ミルダート、済まないがそちらも使用人を呼んでほしい」
「かしこまりました」
ミルダートが一礼して去っていく。
すぐに使用人たちがやってきて、ヴァミリオラたちを風呂へと案内する。
「お父様、『実験体0号』もお風呂に入れたいのですが」
「そうだな。お前は風呂に入っても大丈夫か?」
俺が聞くと、『実験体0号』はコクンとうなずいた。
「問題ありませんマスター。当機は完全防水です」
「ならば一緒に入ってくれ。以後はフォルシーナの指示に従うように」
「了解しました」
そのやり取りを聞いて使用人たちが妙な顔をしている。
『実験体0号』については名前を決めるだけでなく、話し方なども変えた方がいいかもしれないな。そんな機能が備わっていればいいんだが。
俺は使用人に頼んで身体を拭いて着替え、執務机について卓上の魔道具のボタンを押した。
ダークエルフ女忍者のアラムンドがシュッと目の前に現れる。
「王都からの護送ご苦労だった。ジラルナたちは元気か?」
「はい、皆問題ありません。3人はお館様の命令通り密偵といたしますが、妹のミラルナはいかがいたしましょうか」
「ダークエルフであれば魔力は高かろう。本人に確認をとって錬金術師の訓練にまわせ。最低限の教育も受けられようからな」
「かしこまりました。ところで数日の間、お館様はなにをなさっていたのでしょうか? どちらにもいらっしゃらなかったようですが」
「王家が南部大森林にまだ未練があるように見えたので、なにかあるのではないかと思い調査へ行っていたのだ。やはりお前の情報通り遺跡があった。ただその場に騎士団長のラシュアル殿が現れたので、その場は引き継いだがな」
「そのようなことが……。それでは、王家が遺跡をどうするかという追跡調査が必要ではありませんか?」
「うむ。アラムンドにはしばらく王都の様子を探っていてもらいたい。私とローテローザ公はすでに王家に対して、容易に与せぬ態度を示してある。王家が我ら2領に対してどう構えるかも知りたい」
「かしこまりました。それと魔族の動きについてはよろしいのでしょうか?」
「我が領はすでに十分準備をしてある。もし今後も魔族が攻めてくるならそれを粉砕するのみだ」
「はっ。それでは準備をして王都に向かいます」
「よろしく頼む。それとアラムンド、お前は私によく仕えてくれている。ダークエルフの里の建設も近い内に考えよう」
「……ありがとうございます。では」
アラムンドは一瞬苦しそうな顔をして、その場から姿を消した。
彼女についても内情を知っているだけに解決してやりたいが、こればかりは今のところはどうにもならないからな。なるべく好感度だけは上げておいて、その時がきたら解決しよう。
さて、ともかくとして一つの大きなイベントはクリア、というか事前に潰すことに成功した。古代兵器暴走はゲームでも一大イベントだったから、それを阻止できたのは大きい。
ちょっと気になるは『実験体0号』の存在だが、彼女がソシャゲ版のヒロインとするなら害のある存在ではないだろう。そうでなくても俺をマスターと認識しているのだから大丈夫のはずだ。
となると気になるのはやはりロークス・ゲントロノフの動きだ。魔族の再襲撃前に決着をつけないとかなり面倒なことになりそうなんだが、『決着』っていうのが結局俺の簒奪ムーブになりそうなのがなあ。
というか公爵だって大変なのに国王を目指すとかあり得ない話だ。なぜラスボスぶっ倒せば終わりみたいな展開にならないんだろう、この世界は。




