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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第5章 悪役公爵マークスチュアート、王都で暗躍す

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14 ルート復活……?

 さてそんなわけで、このあと王城内は大変な騒ぎになることが確定した。


 まずは被告たちの精神を操った下手人の追及が始まるだろう。もちろんミルラエルザが犯人なのは間違いないが、それがバレるようなヘマはしないはずだ。


 俺が暴いてもいいのだが、それだと魔族が王城に入り込んでいたというだけで話が終わってしまう。ロークス・ゲントロノフたちとつながっているのは状況から明らかだが、別に物的証拠があるわけでもない。


 それにゲームの設定を考えると、ここでミルラエルザを退けた場合、恐らく早い段階で魔族の次の大規模攻撃を誘発してしまうのだ。なので俺としてはスルー確定であるし、恐らくロークスたちも最終的には犯人不明で流すしかないだろう。


 問題は、例の冤罪を被せられそうになった6人である。いずれも王室派の有力な貴族たちであるが、彼らは王城どころか王都からも出ていくだろう。無論王室派という派閥からも抜けたいと考えるはずで、当然その先はブラウモント家かローテローザ家ということになる。


「となると、今後わたくしの家とブラウモント家は、王家との対立は避けられないでしょうね」


「であろうな。しかし彼らを見捨てるという選択肢は三大公としてはなかった」


「もちろんよ。あれを見過ごしても、結局はあの二人の目は今度はこちらへ向けられるわ。いずれにしても対立は避けられなかったでしょう」


 裁判のあと、俺はそのまま王都の公爵邸へと戻っていた。


 しばらくするとヴァミリオラがやってきて、そのまま応接の間で対談となった。


「しかし国王やゲントロノフ公のやり方は得心がいかんな。魔族と組んでいるとはいえ、国の力を弱めるようなやり方は先がないと理解できるはずだが」


「あの国王は理解していない気もするけれどね。ただゲントロノフ公はそんな愚かではないはず。なにか別の目的があるのかしら」


「ふむ……。まあ今後の動きを見るしかないな。今あの魔族の存在を暴いても王家は関係を認めぬであろうしな」


「しかし国王やゲントロノフ公はともかく、魔族はなにがしたいのかしらね。この国を落としたいなら王都を奪還させる意味はないし、この国を裏から操りたいならやり方が迂遠(うえん)すぎるわ。まさか単純に新国王に協力してるなんてこともないと思うし、つながってるとしたら裏でどんな取引をしているのかしら」


 ヴァミリオラの疑問はもっともだ。


 魔族が武力で王都を落としに来たことと、ミルラエルザが協力者として国王の秘書官となっていることはつながりが見えにくい。


 確かにゲームシナリオでは、ミルラエルザが主人公ロークスに協力を持ちかけてくるシーンも存在した。だがそれはシナリオがもう少し先に進んでからの話であり、この段階ですでに協力関係にあるというのは俺にも真相は理解しがたい。ただまあ、シナリオ消息不明の世界とはいえ設定だけは息をしているから、推測はできなくもない。


「魔族も一枚岩でないのかもしれん。軍を率いてきた一派と、あの秘書官が属する一派、それが異なっていてなおかつ対立しているならありえなくはない」


「なるほどね……。力で攻め落とそうとする一派と、王室と取引をする一派、それが別ならこのかみ合わせの悪さも理解はできるかもしれないわね。……もしかして、貴方はその情報もつかんでいるのかしら?」


「多少な」


 あくまでゲームの設定どおりなら、ということになるが、それが一番しっくりくる考えだ。しかもそう考えると、ロークスが古代兵器復活を進めようとしていることともつながったりする。


「詳しく教えてはもらえないのね?」


「私もそこまで詳しいわけではない。ただ現在、魔族が二派に別れているらしいということを知っているだけだ」


「ふぅん……」


 俺を見つめるヴァミリオラの瞳には、懐疑の色が多少なりとも残っていた。


 まあ俺たちはもともと情報を全部教え合うような仲でもない。ヴァミリオラもそれ以上の追及はしなかった。


「ところでブラウモント公としては、今後どのように王家と付き合っていくつもりなの? 私は魔族とつながっている王家とは早々に手を切りたいのだけど」


「うむ……」


 実はこの王都に来て一連のイベントを片付けて、もっとも問題になるのはそこだった。


 すでにゲームシナリオが行方不明である今、俺がしなくてはならないのは『自身の保身』『領地防衛』、そしてゲームの設定どおりならこの後起こるであろう『世界崩壊』を防ぐことだ。


 妙な話だが、実は一番簡単なのは最後の『世界崩壊の阻止』だ。フォルシーナたちヒロインを集めて強化して、チートキャラ化した俺が率いてラスボスを倒せばいいだけだ。


『自身の保身』も今のままなら大丈夫だろう。今のところフォルシーナとはうまくやれている気はするし、自分自身王位を奪うつもりもない。まあ多少追放ルートがちらついているが、それもフォルシーナを懐柔すれば避けられる気はする。


 問題は領地である。この世界、当然ながらこのインテクルース王国以外にも国はあり、どこも自国の領土を増やすために虎視眈々と周囲の隙を狙っている状態だ。もしここでこのインテクルース王国が分裂するなんてことになれば、そこを狙って他の国が攻めてくることは間違いない。


 ゆえにヴァミリオラが言うように、俺やヴァミリオラの領地が王国から独立しますなんていうのは実際には無理な話だ。そもそも王家と全面的に対立したら、まず王家の軍を退ける必要があるのだし。


 俺が少しの間考えこんでいると、ヴァミリオラはさらに言葉を続けた。


「貴方もわかっていると思うけど、国王が王都の民を犠牲にするような真似をした時点でもう今の王家は終わりよ。貴方だって長く付き合える相手ではないでしょう?」


「……そうだな。放っておけばこの国そのものが危うくなるのは間違いなかろう」


 破滅ルート主人公のロークスが王になった時点で、それは避けられない気がするんだよな。本来なら三大公である俺やヴァミリオラがいさめて正しい道を進ませてやるべきなんだろうが、向こうにゲントロノフがついた時点で望み薄である。無理にやれば結局は権力闘争からの内乱ルートだ。


 と、また少し考えている間に、ヴァミリオラはとんでもないことを言い始めた。


「だからね、もうこの国は王家が交代するしかないと思うのよ」


「待てローテローザ公、それは……」


「あら、貴方ならもうこの結論に達していると思ったけれど。だって貴方、少し前までこの国を取ろうとしていたでしょう? 今はその牙を引っ込めたようだけれど、一度は考えたはずだわ」


「……」


 たしかにそれは否定できないんだよなあ。だってもともと王位簒奪キャラだったし。実際その準備もしていたし。


「だから貴方、その牙をもう一度研いでみるつもりはないかしら。貴方がその気なら、私は協力するにやぶさかではないわ。少なくとも、今のままでいるよりははるかにマシになると思うもの」

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