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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第5章 悪役公爵マークスチュアート、王都で暗躍す

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01 王太子の狙い

 王都陥落、そのしらせを聞き出陣しようとした俺だったが、出発直前に王都がロークス王太子によって奪還されたとの報を受けた。


 しかも同時に王太子の婚約者であり、ゲームのメインヒロインでもあるマリアンロッテから国を救って欲しいという驚きの要請を受け、俺はいったん公爵邸へと戻るしかなかった。


 マリアンロッテとその使用人は強行軍で旅をしてきたとのことで、まずは部屋にて休むように言った。どうやら彼女たちはロークス王太子の元から黙ってこちらへ出奔しゅっぽんしてきたらしい。マリアンロッテ自身は急いで話をしたいようだったが、焦ってもロクなことにならないのは経験上よく分かっている。


「まずは貴女の身体を休ませることが第一だ。ここで体調を崩しては、話せることも話せなくなる。お付きの侍女も限界であろう」


 と諭してやると、マリアンロッテは大人しく従ってくれた、


 一方で俺は執務室へと戻り、執事のミルダートとダークエルフ忍者アラムンド、そして将軍ドルトンを呼び、情報の整理をしていた。


 なおフォルシーナは、立場や年齢が近いということで、マリアンロッテの相手をすると自分から言い出してここにはいない。せっかくなので、マリアンロッテを休ませつつできるだけ話を聞くようには頼んでおいた。


「さて、アラムンド、まずは王都の件だが、奪還されたこと、ゲントロノフ公の援軍があったこと、国王が亡くなり王太子が即位を宣言したこと、それ以外になにか情報はあるか?」


「は。どうやら一部貴族内に魔族との内通者がいるとの発表があったようです」


「それはもしや、大森林開拓に反対した大臣たちを指しているのではあるまいな?」


「お館様のおっしゃる通りのようです。以前反対した貴族の名がいくつか上がっています」


 なるほど、これはもう隠す気はないという感じだろうか。しかしまさかロークスがそういうムーブをしてくるとは想定外もいいところである。


 俺がひとりうなずいていると、ドルトンが頭を掻きながら質問をしてきた。


「公爵閣下、いったいどういうことですかい?」


「簡単に言えば、今回の件は王太子による王位簒奪(さんだつ)の可能性が高いということだ。魔族に王都を取らせ、それを奪還する。騒ぎに乗じて父王をしいし、自ら王位につく。ついでに王家に反抗的だった貴族も裏切者として一掃する。そんなところだろう」


「へっ!? そりゃまた本当ならとんでもない話じゃないですかい。しかし王太子なら放っておけば王になるのは確定だと思うんですが、そんな無理する必要があるんですかねえ」


「人間の欲には際限がないからな。加えて王太子の後ろにはゲントロノフ公がいる。公が即位を急がせた可能性もある。といっても正式に即位するには、三大公の合議を経た上での承認が必要なのだがな」


 これは王国法のかなり前の方に載っている条文である。なので今のところロークスは正式には王でないはずだ。ただもちろん例外規定もあるので、そちらを適用する算段があるのかもしれないが。


「黒の公爵が裏から実権を握りたかったってことですかい? そこまでいくと自分にはもうお手上げですな」


 ドルトンが肩をすくめると、代わりにミルダートが口を開く。


「お館様は、王太子とゲントロノフ公が結託して、国を牛耳ぎゅうじろうとしているとお考えなのですな?」


「その可能性が高いと見ている。ここまで思い切った動きにでるとは思わなかったがな」


「もしそれが成ったとき、ブラウモント家やローテローザ家などにはどう当たってくるとお考えですか?」


「ふむ……」


 基本的にこの王国では当然最高権力者は国王だ。だが、だからといって三大公であるブラウモント家やローテローザ家に対して無制限に命令なりなんなりを押し付けることができるわけではない。


「常識的に考えれば、今回王都が被害を受けたことに対しての救援などは求めてこような。王都の軍もかなりの損害を受けているであろうし、援助資金はもちろん、兵の補充なども求めてくるかもしれん。無論こちらの力を削ぐような動きにでる可能性も高かろう。いや……」


 そこで俺はふと気付いてしまった。


 もし今回、本当にロークスが王位簒奪を行ったのなら、それはもともとマークスチュアートがやるはずだったものである。ではゲームでは、王位を奪ったあと、マークスチュアートはなにをしようとしたか。


「……魔族に対抗するために、遺跡の古代兵器の復活を目論む、か」


 その独り言は、幸い誰の耳にも入らなかったようだ。


 古代兵器――当時の一部メディア作品群でおなじみの、太古に滅びた超文明の遺物である。ロマンを感じさせるその古代兵器は『オレオ』の世界でも当然のように存在していて、しかも俺ことマークスチュアート自身がその復活に関わることになっていた。主人公に倒された時に、「私が死ねば暴走した古代兵器がすべてを滅ぼすだろう」とか言い出す感じである。


 ただ、その古代兵器が眠っている遺跡は、まさにロークスが開拓しようとしていた大森林の中にある遺跡である。ゲームでは、王都陥落の際に大森林に逃げ込んだロークスのパーティが偶然遺跡内にダンジョンを見つけることになっていた。しかし今回、ロークスは大森林に行ってすらいない。ということは、この世界ではまだ古代兵器どころか、遺跡ダンジョンの存在すらきちんと確認されていないことになる。


 だが、ゲームでマークスチュアートが古代兵器の存在を知ったのは、実は王家に所蔵されていた古文書からだった。それを考えると、王家がもともとその存在を知っていてもおかしくはない。以前アラムンドも、遺跡について王家が認識しているような情報を口にしていた。


「……アラムンド。今回の件で大森林開拓は凍結されたと思うが、まず現地に行き、本当に中止されたかどうかを確かめさせよ。そして再度調査隊を送るかどうか、それを監視させよ」


「は。かしこまりました」


「はぁ~、ここでまた公爵閣下の先読みが出てくるんですかい? 凡人の自分には恐ろしくて仕方ありませんや」


 ドルトンが呆れたような声を上げ、ミルダートはなぜか深くうなずいている。


 さて、ゲーム知識はこの辺にして、マリアンロッテの話を聞かなくてはな。こっちも原作ルートとまるで違う流れになってるんだが、どんな話がでてくるのだろうか。

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