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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第2章 悪役公爵マークスチュアート、中ボスルート回避のために全力を尽くす

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10 ギルドマスター

 地下4階で中ボスのマンティコアを討伐した俺たちは、ボス部屋のすぐ隣にある『転移装置』で地上に帰還した。


 ギルドに戻り、ダンジョンで得た魔石などを売却しながら、フォルシーナに『冒険者』についての知識を教えておいた。いずれ彼女らだけでダンジョンに入ってもらい、レベルアップに勤しんでもらうつもりである。


 さらに受付嬢にギルドマスターの在室を確認してもらい、ギルドの2階、ギルドマスターの執務室に向かった。


 俺とフォルシーナたち3人が部屋を訪れると、冒険者ギルド、ブラウモント領支部のギルドマスター・ブルランは目を丸くして執務机から飛び上がった。


「こっ、これは公爵閣下! こんなむさくるしいところに来ていただいて申し訳ありません」


 ブルランは40後半の男で、クセのある茶髪を無理矢理なでつけ、身体に合わないパツパツのシャツとスラックスを着ている筋肉質の男である。


 ちなみにマークスチュアートが少年期に冒険者をやっていたときに絡んできて、あっさりと返り討ちにされた男でもある。それ以来身分以上の上下関係ができてしまったのだが、逆にそのおかげで彼は更生することができ、今の地位にあると言えなくもない。


「今日はアポイントメントもなしに訪れたので気にしなくともよい。少し頼みがあって来た」


「なんでしょうか? できる限りのことはしますが、さすがにギルドの規則に反するのは……」


 大きな体を精一杯小さくするブルラン。フォルシーナたちに珍獣でも見るような目を向けられているのがちょっと可哀想である。


「無理を言うつもりはない。王都の騒ぎについては聞いているか?」


「は、はい。カオスデーモンが城に出て、公爵閣下が討伐されたとか」


「そうだ。ギルドではあの件はどう見ている?」


「跳ねっ返りのチンピラ魔族、っていう説もあったんですが、大方は魔族どもの偵察部隊じゃないかと見てます。あいつら魔王を倒せる個人ってのを恐れてますから」


「ふむ……」


「こっちに攻めてきた時の魔王は、代々人間の少数精鋭部隊に倒されてますからね。それですげえ警戒してるみたいです。それなんで、ギルドとしてはこのあと魔族が攻めてくる可能性は考えてます」


「なるほど、まっとうな状況判断だな。その話は国王陛下には伝わっているのか?」


「王都のグランドマスターは伝えてるとは思いますが、今の国王陛下は下々の言葉にはあまり耳を貸しちゃくれないんで……っと、これは不敬になっちまいますね」


「聞かなかったことにしておこう。しかしなるほど、ギルドがそう考えているなら話は早い。今日ここに来たのは、腕利きで、なおかつ信頼できるAランク冒険者パーティを1組、公爵家で雇いたいと思ったからだ。期間は来月の頭から1年間。依頼内容は領地防衛の補助、特に魔族幹部との戦いを任せたい」


「なるほど……しかし魔族幹部との闘いとなると腕利きでもいい顔はしないかもしれません」


「『エクストラポーション』を必要分支給するつもりだ。それで釣れないか」


「マジですか? それなら多分食いつくかもしれません。そうですね……ああ、そういや『エクストラポーション』を欲しがってるパーティがありましたね。『紅蓮ぐれん息吹いぶき』っていうパーティなんですが……」


「『紅蓮の息吹』だと?」


「ご存じですか」


『紅蓮の息吹』、ゲームに出てきた腕利きのAランク冒険者パーティの名だ。主人公ロークスを度々助けてくれるよき先輩のパーティみたいな扱いで、ゲーム通りの人間たちならぜひ引き入れたい戦力だ。


「うむ、噂は聞いている。ならば連絡とってもらおう。希望があれば『エクストラポーション』を報酬で出すと伝えよ。ただしその情報はくだんのパーティだけに伝わるようにせよ」


「わかりました。そういう情報は飛びつくバカがいますからね。気を付けます」


「よろしく頼む。それと他になにか変わったことはないか。モンスターの出現数が増えたりといったような話は」


「そうですね……。この辺りではまだないんですが、王都から北の方では街道にモンスターが現れることが増えてるって話は聞きますね。被害がいくつか出てます」


「北か……魔族領に近いところだな。現れたモンスターはなんだ?」


「ゴブリンとオークですね。どちらも結構な集団だったそうで」


『ゴブリン』とは人間の子どもくらいの大きさの、人型のモンスターだ。醜い見た目と緑の肌が特徴で、原始的ながら武器を使う。『オーク』は豚の頭部を持つこれも人型のモンスターで、身体は成人男性ほどもあって力も強い。どちらも群れを作る特徴があって、単体ではそこまで脅威ではないが、群れが大きくなると普通に軍隊と言えるレベルになる。


「魔族の動きと連動していそうだな。ギルドとしては警戒はしているのだろう?」


「ええ、北の支部は結構動いてます」


「なるほど、いい話を聞いた。これからこちらも警戒レベルを上げたいと考えている。気になる情報があったら上げて欲しい。その分ポーションは融通しよう」


「わかりました。やらせていただきます」


 とりあえず気になる情報が得られたほか、公爵領としての戦力にも目途めどが立った。もとより通常戦力は問題ないので、俺と将軍のドルトン以外にAランク冒険者が1パーティ4名くらいいれば、魔族の幹部が複数こちらに来ても十分対応できるだろう。


 クーラリアとミアールという強キャラも見つかったので、こちらはフォルシーナとパーティを組ませて鍛えればいい。できれば回復役が欲しいところだが、そこまで望むのは贅沢というものか。


 ともかく王都陥落イベントの前後でもしこちらに魔族が来ても、問題なく対応はできそうだ。

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