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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第8章 悪役公爵マークスチュアート、中ボスルートを完遂す

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17 ミルラエルザが去って

 その後ミルラエルザとはいくつかの話をして、ロークスの元に帰ってもらった。


 彼女とはどこかできちんと話をしなければならないと思っていたので、予想通りとはいえ向こうから来てくれたのはラッキーであった。


 しかも話を聞いた限りでは彼女の背後関係はゲームの設定通りのようだ。彼女の登場タイミングが早いことを除けば、妙な話にはならなそうでそこも安心した。


 問題はどちらかというと、結局は俺自身も、魔族である彼女と協力関係を結ばないといけないということだ。実は今まで公に王家を糾弾するのに、魔族と王家とのつながりを指摘せず、王位簒奪のみに焦点を絞っていたのもそのことがあったからである。


 なにしろゲームの設定やシナリオを考えると、世界を救うのにはミルラエルザとの協力は絶対に必要なのだ。ただそれを今言うわけにはいかないのがつらいところであった。今「世界を破滅から救うために魔族と協力しなければならない」なんて俺が言いだしたら、正気を疑われて追放ルート突入まであるし。


「お父様は、やはりあの魔族の協力を得るつもりなのですか?」


 天幕に戻った俺を待ち受けていたのは、フォルシーナの冷たい眼差しだった。


 もっとも身内には今まで王家と魔族のつながりを糾弾材料にするかのように伝えていたのでこれは仕方ない。


「うむ。先ほど彼女から話を聞いて、それが国を早期に安定させ、またこの大陸の安寧を守るのに最適の方法と考えた」


「どうしてそのようにお考えになったのでしょうか?」


「彼女は魔族と言っても、この国への侵攻に反対する一派に属している者なのだ。ゆえに魔族の侵攻に対抗するために、彼女と手を結ぶのは必然と言えよう。さらに言えば、彼女を介することで、魔族とも今後長きにわたる不可侵条約を結ぶことも不可能ではなくなる。これはこの国としては重要なことだ」


「あの魔族がお父様を裏切ることはないのでしょうか? 事実、今回お父様のもとへ来たということは、あの男を裏切る行為になると思うのですが」


『あの男』というのはロークスのことだ。この指摘は、俺がミルラエルザにしたものとほぼ同じである。


「我らから見るとそうなろうな。だが彼女からすると、むしろこの動きのほうが当然なのだ。彼女が求めるのはこの国を守る力を持ち、また魔族との交渉を理性的に行える人間なのだからな」


「なるほど……。そう言われれば、あの魔族がお父様を選ぶのは当然という気もいたします。最初から選ばなかったことは愚かと言えそうですが」


「フォルシーナの評価は嬉しいが、さすがに彼女にそれを言うのは酷かもしれんな」


 人間の協力を得るのに、普通に考えればまずその国の王に話をもっていくのが常道だろう。ただミルラエルザの話だと、最初に彼女の話を聞いたのはゲントロノフだったようだ。本来ならそこからロークスの父に話が行くはずだったのだが……というのが今回の事の真相らしい。


「まさか私の情報を自らの野心の為に利用するとは思いませんでしたが」


 と、冷笑交じりにミルラエルザは言っていた。


 なおそのロークスに聖剣を渡したのは、いざとなればロークスなら御せるだろうとの目論見があったことも認めていた。彼女は彼女で色々と大変だったようで、冷笑の中に隠しきれない疲れが見えた。


 そこまでの話で納得をしてくれたのか、フォルシーナは「お父様のお考えはわかりました」と口にした。しかし冷えた視線はそのままである。


「ところでお父様、先ほどのミルラエルザという魔族はとても美しい女性に見えました。それについてはどうお考えでしょうか?」


「どう、とはどういうことだ?」


「お父様がこの大陸を統一するのにあたって、魔族すら手のうちにいれるということでしょうか?」


「いや、そのようなことは考えてはおらぬ。あくまで一部魔族と協調するというだけだ」


「そうですか。私はてっきり、あのミルラエルザという魔族を、その……臣下にすると思ったのですが」


 あ~なるほど、フォルシーナとしては父親が魔族の美人に篭絡ろうらくされたとか、そんな風に考えているのだろう。


 もちろんそれを直球で言うわけにもいかないから、『臣下にする』という言葉で試しているわけだ。


「そのつもりはない。そもそも彼女は魔族の王たる魔王直属の部下だ。しかも魔王の婚約者でもある。私の臣下になることはありえぬ」


 ゲームではそういう設定だったし、さっき話していて彼女は設定通り魔王の下についているらしいからな。


 実は魔王が倒すべき相手ではないというのは原作ゲーム『オレオ』の肝で、ゲームが出た当時はまだ目新しい設定だったのだ。だからこそこのタイミングでネタバレ的になるミルラエルザが現れるのはおかしいわけだが、それはもう言っても仕方がない。


 ともかく俺の言葉に納得したのか、フォルシーナの視線から冷気が抜けた。


「魔王の婚約者……。そうでしたか、安心いたしました」


「うむ。もっとも彼女とは何度も顔を合わせることになる。慣れておいて欲しい」


「かしこまりました。お父様の周囲にはすでに大精霊様やエメリウノさんやツクヨミのような存在もありますので、今更魔族程度に驚きはいたしません」


「頼もしいな」


 言われてみれば俺の周りには意外と人間以外の存在も多いな。それに比べれば魔族なんてエルフやドワーフくらいの種族の違いでしかない。


 さて、どうやらフォルシーナも納得してくれたので、あとは明日の王都攻略戦に勝利するだけとなった。


 ここでミルラエルザの協力も得られたので、戦自体はもはや負ける要素はないだろう。


 唯一気になるのはゲントロノフの背後関係だけだが、あまり前倒し過ぎるのは勘弁してもらいたいところだ。

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