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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第8章 悪役公爵マークスチュアート、中ボスルートを完遂す

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11 シグルドの聖剣

 翌日、ドルトンとリンが軍を率いて行軍を開始したタイミングで、俺はフォルシーナたちを一旦公爵邸に戻した。


 執務室でミルダートから執務についていくつか報告を受け、ヴァミリオラのところへ向かおうかというところでツクヨミがやってきた。


「マスター、ローテローザ公爵領で戦闘が始まったようです。現在ローテローザ側のランクB2人が、王家側ランクB及び『試作機1号』と交戦をしている模様。ローテローザ側のランクB1人が大きなダメージを負っています。


「なに?」


 試作機1号についてはゴーレム10体で対応をすると言っていたし、いくらロークスがランクBといってもヴァミリオラとアミュエリザの2人なら遅れを取ることはないはずだ。


 これはまたなにか想定外のことが起きたか?


 俺は急ぎ、『転移魔法』を発動した。




 転移先はもちろんローテローザ領の領都ロザリンデ、その北側にある森の端だった。


 1キロほど先に城塞都市であるロザリンデの城壁が見え、その手前にロークス率いる王家軍3万の姿が見える。


 ローテローザ軍は1万ではあるが、城壁にって戦うことができるのと、ゴーレムが10体配備されていること、さらにはヴァミリオラが守りに強い魔導師タイプということもあって持久戦に持ち込んで相手をすることになっていた。


 王家軍が攻めあぐねている隙に俺が王都を落とすという作戦であったのだが、今目の前にあるロザリンデの城壁は一部が完全に破壊され、王家軍がなだれ込む構えをとっているところであった。10体のゴーレムの姿がないのはすべて破壊されてしまったからだろうか。


「これはまずいな」


 俺は再転移、破壊された城壁のすぐ近くの城壁の上に移動した。そこはすでに戦いのまっただ中で、城壁に並んだローテローザ兵が王家軍に矢を射かけていた。


 おかげで俺がいきなり現れたことに気づいたものはほとんどいなかったようだ。


 城壁の上から破壊された場所を覗き込むと、そこには血を流し片膝をついたヴァミリオラと、姉を守るようにその前で『スカーレットプリンセス』を構えたアミュエリザがいた。


 向かい側には、古代遺跡で戦った『実験体1号』にそっくりな巨大6脚ロボの『試作機1号』が立っていた。『試作機1号』は多少のダメージは受けているようだが、稼働に問題があるほどには見えない。


 問題はその『試作機1号』の背中に、白銀の鎧を着こんだロークスが乗っていることだ。


「はっはぁ! どうだヴァミリオラ、俺の力を理解したか? 三姉妹揃って俺のペットになるなら許してやる! さっさと俺のモノになると誓えよ!」


「ふざけないで……っ。間違っても妹たちは貴方のような色ボケ男には渡さないわ!」


「おいおい。自分の家族を守って領民を犠牲にするってのか? 公爵としてなってねえんじゃないのかそれ」


「どの口が……っ! 王都民を犠牲にした大悪人がよくもそこまでのことを言うものね……!」


「お姉様、お下がりください! ここは私が!」


「だめよアミュエリザ、貴女一人では……」


 うむ、見た目通りのピンチということのようだ。ヴァミリオラたちには『エクストラポーション』を多めに渡してあるのだが、飲んでいないところを見ると使い切ってしまったか、それともまだ切り札として隠しているのか。


 どちらにしても助けは必要そうだ。


 と思って俺がその場に飛び込もうとすると、ロークスが手に持った長剣を振りかざして高笑いを始めた。


「くくっ、はははぁっ! うるわしき姉妹愛は俺のベッドの上でやってくれよぉ。みんな平等に愛してやるからさぁ! 俺のアレはこの聖剣より強いんだぜぇっ!」


「なに……?」


 俺はその時、ロークスの手にある長剣がただの剣でないことに気づいた。


 白銀の中に青い輝きを持つ刃、ドラゴンの頭を模した鍔、その刀身から溢れる魔力。


 それはゲームの中でも特に重要な役割を持った武具、『シグルドの聖剣』に間違いなかった。




『シグルドの聖剣』


 それは、魔族に対して特別な力を持つ、いわゆる『勇者の剣』とも言うべき強武器である。


 昔、シグルドという戦士がドワーフの名工に剣を作らせ、その剣を以て魔王を倒した。魔王を倒された魔族はシグルドの死後その剣を人間側から奪い、魔王城の地下に封印した。そんな来歴を持つ剣である。


 ゲームではもちろん、魔族の大ボスとの決戦前にロークスが自力で取りにいくわけだが、当然今目の前でふんぞり返っているロークスは魔王城になど行っているはずがない。ではなぜ今手にしているのかというと……、


「なるほど、四至将ミルラエルザが持ってきたのか。確か封印は歴代魔王が解除できる設定だったしな」


 ということだろう。


 まあそれはともかく、問題はこの『シグルドの聖剣』の能力だ。武器としては当然ゲーム中でも最上位に近い性能を持つが、それ以外にも特殊効果が付与された剣だった。


 その特殊効果は、『魔族特効』『パーティ全員の全能力+1』『道具として使うと光属性中級魔法「シャイニングレイ」が撃てる』の3つだ。


 実は『魔族特効』以外の効果はかなり微妙である。なぜならゲーム上のステータスは魔王戦あたりまでいくと平均200を超えるので1アップしてもほとんど意味がなく、そして『シャイニングレイ』は雑魚相手にすら火力不足になるからである。


 しかしリアル世界ではその二つは恐らく侮れないものがある。特に全能力+1は、一般兵にとっては下手すると全能力10%アップとかになるはずだし、『シャイニングレイ』が無尽蔵に撃てるのは遠距離戦で無類の強さを発揮するはずだ。ゴーレムが全滅していたのはこの『シャイニングレイ』のせいだろう。


 まあともかく、これで目の前の惨状の理由はわかった。


 なるほどロークス・ゲントロノフの自信の裏付けの一つがそこにあったか。さすがにミルラエルザの動きに関しては察知される恐れがあるのでアラムンドにも探らせられなかったのだが、そこが仇になってしまったようだ。

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