表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第8章 悪役公爵マークスチュアート、中ボスルートを完遂す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/129

10 能臣はいくらいても困らない

「ラエルザが魔族……それはまことなのですか?」


 軍議終了後、俺はリンを自分の天幕に呼んでラエルザの正体について話をした。


 オレの天幕にはフォルシーナ以下5人の少女たちもいる。なおエメリウノは、『鬼』に関する話がレギルの死によって途切れてしまったので一旦公爵邸に戻らせた。


「うむ、間違いない。しかも彼女は魔族の中でも飛びぬけた実力を持つ『四至将』の一人だ」


「四至将……! あの王都を襲ってきたドブルザラクと同じ程の強者ですか!?」


 目を見張るリン。彼女は実際に四至将ドブルザラクと剣を交えているので、その恐ろしさは肌身で感じていることだろう。


「しかしそれは……いったいどういうことなのでしょうか。魔族軍を退けたはずの王家の中に同じ魔族の四至将が入りこんでいるなど、状況がまったく理解できませんが」


「私も詳しくはわからぬ。ただ集めた情報によると、四至将ドブルザラクとミルラエルザはそれぞれ対立した派閥に属しているらしい。そしてどうやら、彼女は国王に協力をしているという立場のようだ」


「逆に国王陛下が裏から操られているということはありませんか?」


「ラシュアル将軍から見て操られているように思えたかね?」


 聞き返すと、リンは眉を寄せて黙り込んでしまった。


 彼女は立場上、ラエルザが来る前からロークスや王家の面々のことをよく見てきたはずだ。その姿と今のロークスを比べた時、違いがあるなら操られていると疑うこともできるだろう。しかしリンの態度はそうではないと無言のうちに語っていた。


「そういうことなのだラシュアル将軍。むしろ『転移の魔道具』を供与している以上、ラエルザが国王陛下に力を貸していると考えるべきだ。無論なんらかの対価を求めてのことだろうが、重要なのは今の王が魔族侵攻のことを事前に知っていた可能性が高いということだ。なにしろ四至将の協力を得ているのだからな」


「それに関しては私も怪しんでいたところです。魔族の情報を掴んでいたのであれば、大森林開拓部隊の奇妙な動きも納得できます」


「うむ。結局はそこにつながることになろう。恐ろしい話であるがな」


「公爵閣下はそこまでをご存じの上で挙兵されたのですね。私など最初から相手になるものではありませんでした。今までの非礼、重ねてお詫び申し上げます」


「そこまでへりくだる必要はない。貴殿には貴殿の立場があり、貴殿はその職責を全うしようとしただけのこと。貴殿の有能さ、そしてその高潔さを私はよく知っている。今後はこの国、そして民のために力を貸してもらえればよい」


「はっ! 全身全霊をもって公爵閣下にお仕えいたします!」


 最敬礼の後、リンは天幕を去っていった。


 今気づいたが、リンの敬礼は好感度アップアクションっぽいな。


 急に態度が変わりすぎてちょっと怖いくらいだが、好感度が上がって今までと逆方向に振れてしまったと考えれば仕方ないのだろう。


 問題は俺とリンのやりとりを見て急に冷気を漂わせ始めたフォルシーナと、キラキラした目で見てくるマリアンロッテと、ニヤけているクーラリアと、無表情なミアールだ。


「やはりお父様は大陸の覇者となるためには手段を選ばないのですね。私は娘として、その在りように誇りを持ちたいと思います」


「フォルシーナよ、それは本当にそう思っているのか?」


「なぜお疑いになるのでしょうか?」


「お前の表情を見ていると、誇っているようには思えないのだが……」


「いえ公爵様、フォルシーナは公爵様のことを心から尊敬申し上げているといつも私たちに言っています。ですから本心から誇っていると思います」


 なぜか食い気味にフォローをしてくれるマリアンロッテ。


 ミアールも、


「お館様、フォルシーナお嬢様のお気持ちは本当でございます。もちろん私もお館様のことを心からご尊敬申し上げています」


 と無表情に言ってくれる。そういえばミアールって最近無表情メイドキャラ化が進んできた気がするな。メインヒロイン化が進行した結果だろうか。


「そうだぜですご主人様。ご主人様はそのまま一気に王様になって、それからこの大陸を統一するしかないと思うですよ」


 クーラリアは尻尾を振ってるし、そもそも表裏がなさそうだから本気なんだろうな。いや本気だとそれはそれで困る。とりあえず王位簒奪はするが、大陸統一するとは一言も言ってないし。


 フォルシーナの冷たい視線はそのままなのだが、そこまで言われたらこちらも納得するしかない。


「……うむ、ならばよい。ツクヨミ、ローテローザ公領の動きはどうなっている?」


「お待ちくださいマスター」


 基本俺の側に直立不動で立っているツクヨミ。耳のあたりが情報送受信モードに変形して、羽根型アンテナ付ヘッドセットが現れる。


「情報受信中。ローテローザ領内に二つの大きな勢力があります。互いの距離は約5キロ、ローテローザ公側にはランクBの反応2、ランクCの反応2、ランクDの反応8。ゴーレム反応10。王家軍にはランクBの反応1、ランクCの反応6、ランクDの反応24、そして『試作機1号』の反応1です」


「ふむ……」


 ローテローザ側のランクBはヴァミリオラ、アミュエリザ姉妹だろう。アミュエリザはまだレベル的には姉のヴァミリオラには及んでいないが、レア武器『スカーレットプリンセス』の補正が効いているのだと思われる。なおランクCは大隊長、ランクDは中隊長のものだと思われる。


 一方王家側だが、ランクC、Dはいいとして、ランクBは誰だろうか。リンとレギルがこちらに来ていたので王家には他にそのランクの人材はいないはずだ。普通に考えればロークスなのだが、どう見てもレベルは低そうだったんだよな。


「そこはさすがに主人公ということ、か?」


 俺の独り言が聞こえたのだろう、フォルシーナが冷気を保ったまま眉をひそめた。


「お父様、どうされたのですか?」


「今のツクヨミの情報からすると、ローテローザ公側も多少苦戦するかと思ってな。明日様子を見に行こうかと思う」


「お父様の鬼神のごとき働きでこちらの戦はすでに終わっていますから、その情報をお伝えすればローテローザ公爵様の軍の士気も上がることでしょう」


「うむ。本来ならローテローザ軍にはぎりぎりまで国王率いる軍を引きつけていてもらいたいのだがな。あまり被害が大きくなるのは好ましくない。国王軍にはさっさと引いてもらってもよいかもしれぬ」


「あの男が戦場に出ているのであれば、お父様が討ち取ってしまえばよろしいのではありませんか?」


 あ~、ついにロークスはメインヒロインから『あの男』扱いされるまで落ちぶれたか。自業自得とはいえ、もとゲームプレイヤーとしては少しだけ複雑な心境だ。


「そうもいかぬ。陛下には『真偽の鏡』にて己の罪を認めてもらわねばならぬからな。どう戦況が動いても我らの勝利は変わらぬ。安心するがよい」


「そちらについてはまったく心配はしておりません。ただ心配なのは、お父様が王として君臨なさるのに、どれだけの()()()()()を必要となさっているかです」


 というフォルシーナの言葉には明らかに含みを感じたのだが……腹黒公爵センサーをもってしてもその真意は測りかねた。


「有能な臣下はどれだけいても足りぬ。お前は私にとっては娘であって臣下ではないが、有能な人材という意味でも一番に頼りにしているぞフォルシーナ」


 よくわからない時は好感度アップに限る。


 俺が好感度アップ選択肢(自由記述)を選ぶと、フォルシーナは好感度アップ動作を……しないで、すごく複雑そうな顔をした。なんというか、怒っているような、喜んでいるような、どちらともとれるというか、どちらもが混じったというか、そんな顔である。


「そっ、それはとても嬉しく思いますが……しかし臣下がどれだけいてもいいというのはちょっと……しかし歴代の偉大な王にはそのような方もいたという話は……」


 意味不明なことをぶつぶつと言い始めるフォルシーナ。その隣でマリアンロッテは「私も有能な臣下を目指しますね!」とフンスなポーズを取り、ミアールは「私はすでにお館様に評価されているはず……」とつぶやき、クーラリアは「うひぃ、さすがご主人様、器がデカすぎるぜ」としきりに感心していた。


 ツクヨミだけは黙って俺の顔をじっと見つめているだけだったのだが、後でツクヨミにフォルシーナたちがなにを言いたいのか聞いくのもアリだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ