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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第8章 悪役公爵マークスチュアート、中ボスルートを完遂す

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06 迎撃戦 4

 レギルの隠れた感情には多少の同情をしつつも、俺は再度『ディスペルオール』発動する。


 バタバタと橋のたもとで倒れ伏す、『ソウルバーストボム』をかけられていた男たち。


「くそっ、なんだその魔法は!? まさかこちらの魔法を打ち消す効果があるというのか!? そんな高度な魔法、存在するはずが……」


「ほう、さすが魔導師団の団長、理解が早くて助かる。ならば貴殿に勝ち目がないということも理解できるであろう?」


「ふざけたことを……っ!」


 俺が腹黒公爵的余裕の笑みを演出すると、レギルは顔を屈辱にゆがめて睨みつけてきた。


 だがその表情もすぐに一転、急にこちらを見下したような薄ら笑いを浮かべ始めた。


「……いや、そのような魔法、よしんばあったとしても使うには膨大な魔力を必要とするはずですね。ブラウモント公のその余裕は逆に苦しさを表してるはず。その手には騙されませんよ!」


 あ~そっちに取ってしまったか。前半部分が間違っていないだけに、俺としても微妙な顔をせざるを得ない。


「どうやら図星ですね。ならば話は早い。おいお前たち、王家のために命を捧げろ!」


 レギルは近くに立っていた兵士たちの前に立つと、次々と『ソウルバーストボム』をかけ始めた。いやいや、それはちょっと無茶苦茶ではありませんかね。


「さあ、どれだけ防げるか確かめてあげましょう。それと言っておきますが、『ソウルバーストボム』はほとんど魔力を使わず発動できる魔法です。こちらの魔力が尽きることは期待しないでいただきましょう」


 レギルが杖を俺の方へ向けると、兵士たちが次々とこちらへ走り始めた。先ほどもそうだったが、『ソウルバーストボム』には、かけた人間を簡易的に操るという効果もある。確かにゲームでもそうだった。


「ブラウモント公、どうされるのですか!?」


 リンはもはや俺を討つことを忘れているかのように聞いてくる。まあさすがにここで俺を討つのが優先とかは言わないよな。


「邪法が我が身に届くことはない。貴殿も私から離れぬ方がよかろう」


 たしか『ソウルバーストボム』って標的が近づくだけで発動する設定だったな、と思い出して注意しておく。


 リンがうなずいたのを確認して、俺は『ディスペルオール』を連続で発動、走ってくる兵士たちを無力化していく。


 地面に寝転がる兵士が100人を過ぎたあたりで、なんとレギルは今度は王国騎士団員までも『ソウルバーストボム』をかけ始めた。


「一般の兵士では保有魔力が足りないようですね!」


 とか言っているのだがまったく関係ないんだよな。いや実際は関係あるのだが、『ディスペルオール』の魔力消費量がもともと多すぎて誤差にしかならないのである。


 直属の部下を犠牲にされそうになって慌てるリンをなだめ、俺はさらに『ディスペルオール』を使い続ける。


 騎士団員が全員地面に倒れると、レギルは今度は自分の部下、すなわち魔導師団員にまで『ソウルバーストボム』をかけてしまった。当然彼らは『ソウルバーストボム』がどういうものかよく知っているようで、かけられる瞬間逃げようとしている者もいた。


 まあともかく、その行為自体は俺にとって有利になるものでしかない。俺は魔導師団員全員が『ソウルバーストボム』からの『ディスペルオール』で眠るまで放っておいてから、レギルの方に向けて歩きだした。


 レギルはこの時になって、ようやく俺の魔力が尽きないことに気付いたようで、こちらを睨みつけてきた。


「信じられないことですが、どうやら『ソウルバーストボム』については対策を取られていたようですね。なるほどそういえばラシュアルが色々と私の周りを嗅ぎまわっていたようですが、ブラウモント公とつながっていたというわけですか」


「彼女の名誉のために言っておくが、そのような事実はない。単に貴殿が私に及ばないというだけの話だよレギル将軍。そもそも邪法に手を染めた時点で、貴殿もそれを意識していたのではないかね」


 相手の肺腑はいふをえぐるような腹黒公爵必殺のあおりセリフに、レギルは顔を真っ赤にして身体を震わせ始めた。


「言わせておけば……っ! なにが『蒼月の魔剣士』ですか! 魔法では私にかなわないことを直接教えてあげましょう! 『ライトオブジエンド』!」


 レギルは杖を掲げると、今度は普通の魔法を使ってきた。


 杖頭じょうとうからほとばしるのは、電柱ほどもある太さの光線だ。『ライトオブジエンド』は上位属性である光属性の、それも上級に位置する魔法である。それを使えるレギルは間違いなく今代有数の魔導師なのだが……。


「『ディスペルオール』」


 すべてを終焉に導く光芒も、漆黒の波動の前にすべてが搔き消える。全魔法完全無効は理不尽を絵に描いたようなズル(チート)である。


「なんだと……っ!? ふざけるな! 『ライトオブジエンド』!」


 レギルは上級光属性魔法を連発してくるが、俺の歩みを遅らせることすらできない。


 そして10発ほど撃ったところで、レギルはガクリと膝をついた。とはいえ上位属性の上級魔法を二桁回数撃てるというのはそれだけで凄まじい。ゲームでも天才フォルシーナがレベル60以上でそれくらいの魔力だった。


 レギルが動きを止めたのを見計らって俺は『縮地』で一気に距離を詰め、レギルの首筋にミスリルの刃を当てた。レギルはその冷たさを感じるまで、俺の接近にすら気付いていなかったようだ。まあ彼は魔法特化型だから仕方ないのだが。

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