表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第8章 悪役公爵マークスチュアート、中ボスルートを完遂す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/129

04 迎撃戦 1

 3日後、天幕にいる俺のもとに、「王家軍進軍開始せり」の情報が届いた。


 フォルシーナたちを連れて本部の天幕に向かうと、ドルトンが部下たちに指示を与えているところだった。


「よし、指示があるまで各自部隊で待機」


「はッ!」


 将官……各部隊の隊長副隊長が、俺に敬礼をしつつ天幕を出ていく。


 残ったドルトンが、俺の顔を見て敬礼をする。


「公爵閣下、ようやく王家軍が動き始めましたぜ。先頭に王国騎士団、真ん中くらいに宮廷魔導師団がいるそうです。今動けば例の地点で待ち伏せできますぜ」


「結構。すぐに行動を開始せよ。私も将軍と共に先頭を行こう」


「へい。それと出発前に士気の上がる一言お願いしますぜ」


 あ~忘れてた、さすがに必要だよなそれ。


 天幕を出て、用意されていた馬に乗り、同じく騎乗しているドルトンの後をついていく。フォルシーナは前にツクヨミを乗せて騎乗、マリアンロッテもエメリウノとともに騎乗している。ミアールとクーラリアは徒歩だ。


 平原には1万3千の軍が、完璧な陣を整えて整列していた。ほぼすべてが歩兵で、中央と左右翼に騎兵が500ずつ配置されている。大きな水平の板に四本足がついたような運搬型ゴーレムが20体、山のような荷物を載せて後方に待機しているのも見える。


 驚くのは兵たちがほとんど私語をしていないことだ。このあたりは練度の高さを感じるところである。


「ようし、出発前に公爵様のお話がある! 耳を傾けろ!」


 全軍の前に出たドルトンが叫ぶと、兵たちがザッと一斉にこちらに注目する。いやこれ練度高すぎない? 将軍ドルトンの有能さは中ボスも引くレベルなんですけど。


 俺は馬上で咳ばらいをすると、声に魔力を乗せて声を出した。この世界、魔力が扱えれば拡声器いらずである。


「諸君、私は公爵マークスチュアート・ブラウモントである。現在、我らの領、そしてこの国は、危急の時を迎えている。それはすべて新王ロークスが、不義不逞(ふてい)の輩であるからだ。ロークスは故意に魔族侵略を見逃して王都に甚大な被害を与えたばかりでなく、その機に乗じて先王をしいし、王位についた大罪人である。さらには多くの罪なき人間を傷つけ、さらには人々を救うために我が領が差し出した資金すらすべて己の遊興に浪費し、放蕩ほうとうにふける愚昧ぐまいの徒である。その愚王ロークスは、王都を食いつぶすだけでなく、我々を蹂躙じゅうりんし搾取せんとして、ついにこの領に軍を差し向けてきた。このような狼藉ろうぜきは、この領を治める者として、そして国を守る者として、決して許すことはできない。ゆえに私は、ローテローザ公と同盟を結び、愚王ロークスを打倒することとした。諸君らには、この大義を果たすために手を貸してもらいたい。共にこの国のため、そして家族、友人、恋人のために戦おうではないか!」


 腹黒公爵面を発揮して、そこまでをゆっくりと、しかし一気に言い切った。前世だったら恥ずかしくてできないような演説だが、マークスチュアートとしてはむしろノリノリまであった。やっぱり王位簒奪したかったんだなあマークスチュアート(オレ)


 俺の言葉が終わると、一瞬の静寂の後、凄まじい歓声が上がった。どうやら兵士の士気は上がってくれたようだ。


「さすがお父様、見事なお言葉でした。これで私たちの勝利が揺るぐことはないでしょう」


「公爵様、私感動いたしました。この演説は、きっと大きな歴史の始まりとなると思います!」


 フォルシーナとマリアンロッテが感動したような面持ちで褒めてくる。


 実は、兵士が高揚しているのは、声に魔力を乗せまくったせいもあったりするのだが……『魔力の源泉(チート)』の効果がこういう形でも出るというのはリアルならではだ。


 その後ドルトンの指揮によって、全軍が移動を開始するのであった。





 さて今回、王家軍を迎え撃つ場所は決まっていた。


 王家の直轄領からブラウモント領に入ってすぐ、幅約30メートルほどの川が南北に流れている。王都と領都マクミラーナを行き来するにはその川を渡らねばならないのだが、街道である以上、そこには当然強固な石橋が渡されている。幅15メートルはある橋で、3代前のブラウモント公爵がそれまでの木造の橋を作り変えたものである。


 言うまでもなく、もし王家軍がブラウモント領に攻め入ろうとするならば、必ずこの橋を渡らねばならない。ゆえに彼らとしては、こちらに察知される前にここを通り過ぎてしまいたかったはずであるし、そして本来なら『転移装置』のアドバンテージによってそれは成し遂げられるはずであった。


 しかし彼らが橋に到達する前に、ブラウモント軍1万3千はその橋のこちら側出口を半包囲するように布陣を完了した。最前列には人型に形を変えたゴーレムが20体、投石用の石とともに並んでいる。王家軍が橋を渡ろうとしても、無理に河を渡ろうとしても、大打撃を与えられる位置を取ることができたわけである。


 王家軍の斥候が橋付近を偵察に来ていて、俺たちの姿を見てすぐに戻っていったのは確認している。王家軍は先行して河を渡ることが失敗したことをすでに理解しているだろう。


 待つこと1時間弱、ついに対岸に王都軍3万の姿が見えた。


 以前の魔族軍と同じ数だが、全員が兵士としての訓練を積んだ人間なので、その圧は魔族軍と比しても決して弱いわけではない。


 先頭には銀の鎧を揃え、槍を携えた騎士たち200騎ほどがくつわを並べている。王国騎士団の精鋭であり、先頭には当然のように『燐光りんこうの姫騎士』リン・ラシュアル団長の姿がある。


 その後ろは歩兵部隊が続くが、宮廷魔導師団の姿は見えない。事前情報通り隊列の中央あたりにいるのだろうか。この軍は総大将がレギル、副将リンということになっているはずなので、リンが先頭に立つ以上レギルが後ろにいるのはおかしなことではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ