55.報酬と称号
明日、明後日は更新をお休みします。
フィールドボスの初討伐に盛り上がっている彼らを横目に、新たに手に入れた称号と報酬を確認する。
【嘆きを鎮める者】:フィールドボス『嘆きのクラーケン』の初討伐称号。特定のNPCの好感度が上がる。
これはまあ記念称号に近い感じかな。特定というのが誰を指すのかは分からないけれど、好感度が上がるのは嬉しいね。
報酬はクラーケンの素材各種に氷属性の魔石、それに初討伐報酬としてスキルポイントが『6』。これは嬉しい。あとは……おお、魔術だ。
そもそも魔術と魔法は何が違うのかと言うと、魔法はスキルであり使えば使うほど成長していくけれど、使用者の知力によってもその威力は変わってくる。それに比べて魔術は常に同じ効果を発揮するというのが特徴かな。MPさえあれば誰でも使えるので、知力が低い物理型のステータスでも一定の効果があるというわけです。
それに魔法はスキルなので手に入れるには勿論スキルポイントが必要になってくるけれど、その点も魔術ならアイテム扱いに近いのでお金さえあれば買えるというのもポイントが高い。
ただ魔術というものはそうそうお目にかかれるものでもないらしく、滅多に市場に流れることはない、的なことを前に本で読みました。
まあどちらにせよ、使うかどうかは人それぞれで好みは結構別れそうだけれどね。
と、それはさておき今回私が手に入れた魔術は…
[魔術]氷牢の調べ
[効果]数秒の間相手を氷牢の中に閉じ込め、動きを封じる。
「……………。」
いや便利だよ?効果時間は短くても、戦闘中に一瞬の隙が必要な場面なんていくらでもあるからね?たとえ数秒間だったとしても、攻撃を叩き込むも良し逃走に使うも良し、である。
ただ、ねえ……?
「おう、ジュカお疲れさん。なんだ報酬確認してたのか?」
「まァな。お前は何が出た?」
「俺か?俺のはコレだな、一定確率で凍傷の状態異常がつく槍」
「ほォ」
「まあ槍自体の攻撃力が高いわけじゃねえから、使い所は考えねえとな。そういやジャンヌは氷の斬撃が飛ばせる双剣だったな」
話を聞くに、どうやら各々が使っている武器に因んだアイテムやら装備が貰えたらしい。
「ジュカは何が出たんだ?」
「コレ」
「どれどれ……?」
カインにもこの魔術の説明を見せてみる。
「「…………。」」
「えっあいつが言ってたクラーケンの由来ってマジだったりするのか…?」
「さァな」
やっぱりそう思いますよねえ!?
どう考えたって好きな男を氷漬けにして一緒に海に沈んだご令嬢をイメージしちゃいますよねえ!?
何とも言えない微妙な気分にされてしまったけれど、貰ったものは今後の戦闘でありがたく使わせて頂こうと思います。まだ使ってないからわからないけれど、効果はとても高そうな気がします…。
「……まだ海の底に氷漬けの男が沈んでたりしてな」
「どうだかな、クラーケンになって腹の中に仕舞い直したかもしれねェぞ」
「「……………」」
「……この話は止めるか」
「……そうだな」
真実を確かめる術はない。
真相は闇の中、もとい、海の底である。ハハハ。
「アンタら何二人して辛気くさい顔してるんだい!あのにっくきイカ野郎を倒したんだ、これから宴だよっ!」
どこか薄ら寒かった空気が、ジャンヌのぺカーッとした笑顔で見事に晴らされてゆく。チラリと横を見れば「さすが俺のジャンヌ!」とでも言いたげな顔のカインが目に入る。とりあえず鬱陶しかったので、後頭部をはたいてからジャンヌたちの下へと向かって行った。
後ろからギャンギャン吠えている声が聞こえるけれど、放っておいていいでしょう。折角の初討伐なのだ!パーッとお祝いしないとね!
◇
ついにイグニス大陸が見えてきた。
ここからでも見える景色には、無骨だけれど此処彼処に繊細な装飾が施された建物が街を飾っているのが映っている。
「おっ見えてきたね!あたしらはこの後は騎獣を探しに大陸沿いを南下するけど、ジュカたちはどうするんだい?」
「とりあえずはあの街で情報収集だな」
「お前って案外慎重派だよな」
「あァ?普通だろうが」
「まあ事前に下調べしとくのは大切だからね。また何か面白い情報でもあったら教えとくれ!コッチも色々と探しておくからさ」
「…気が向いたらな」
「ったくジュカは素直じゃねぇなあ」
「チッ」
すかさずカインの尻を脚でシバきつつ会話を続ける。何だかんだでこの気の良い連中であるペペロンチーノ海賊団とも港に着いたらお別れなので、ちょっと寂しい。
あと背後から物凄く強い視線を感じるのだけれど、コッチも何とかしないとなあ…。いや何とかって、何も出来ないんですけれどね……。
「それじゃあジュカ、あたしたちはこれで行くよ。また一緒に冒険しようじゃないか!」
「おう、また連絡するわ。達者でな」
「猫兄貴またっス!良ければ副マスの愚痴をまた聞いてあげて欲しいっス!」
「兄ちゃんまたな~!あんまその顔で女を誑かすんじゃねーぞー!」
「さらばイケメン、今度は美少女になって出直してきてくれ」
「じゃ~な~!」
「うるせェ、サッサと行け」と言いながら、港から離れて行く彼らを見送る。
ペペロンチーノ海賊団、最後まで騒がしかったな…。
「「…………。」」
さて、 審判のお時間である。
流石にいきなり「あなたは被虐趣味の方ですか?」とは聞きづらい。
間違っていたらかなり失礼な質問だし、そんなことを言ってしまえば今後の関係にも支障をきたすだろう。だがしかし、もし合っていたら合っていたでそれも今後の関係に支障をきたすと思う。
あれ?詰んでるね???
い、いやでもなあ…。ドMと知らずに側に居られるよりも、ドMと知った上で側に居られる方が幾分マシ………………いや、そんなことないな。どっちも嫌だわ。
でも一応の確認はやっぱり必要でしょう。
もしかしたらドMではない可能性だってちょっとは残っているんだし…。でも何て言って確認すればいいんだろうか。うぅむ…
その時ふと自分の足元のサンダルが目に入った。
ここは砂浜も近いし、ほんの少しではあるけれど足が砂で汚れている。それを見て私はあることを閃いた。
近くにあった箱に足を乗せ、汚れを見た後意味深にハインリヒさんを見つめる。
見つめ合うこと暫し。──さあ、どうする?
ここで特殊な性癖をお持ちでなければ「どうかなさいましたか?」の一言で終わるはず。それなら「別に」の一言で済ませられるのだけれど…。
さあハインリヒさん、あなたの答えは如何に───!
「っ!?お、お任せ下さいっ!」
わあ~~~嬉しそう~~~!!!
頬を紅潮させ、いそいそと胸のポケットから取り出した真っ白なハンカチで足を拭うその姿は、まるで飼い主にご褒美を貰ったワンちゃんそのものである。
足にチョロッとついた砂なんてとうに無くなっているだろうに、ハインリヒさんは未だに恍惚としたまま私の足を拭っている。というか足に顔を近付けすぎじゃありません?そのまま頬擦りでもされそうな勢いである。
いや本当に近いね?あっちょ、まっ──
ハァッハァッ………お、思わず顔面を蹴り飛ばしてしまった。
いやだって、顔めっちゃ近かったんだもん!嘘じゃないもんっ!!勘違いだったらゴメンネ!でも本当に近かったんだもん!!!!
「……テメェなにしようとしてやがる、 この駄犬が」
さっきハインリヒさんにワンちゃんを幻視していたからか、思わず駄犬呼ばわりしてしまった。思ってた以上に低い声が出たし、唸り声も鳴っています。
自分が想像していた以上に“ガチ”だったハインリヒさんに、戸惑いを隠せません。
「申し訳ありませんご主、ジュカ様。紐が外れかけていたので直そうかと…」
ねえ今ご主人様って言いそうにならなかった?
というか紐が外れかけてたって本当ですか?あと蹴られた頬を押さえて瞳を潤ませながら顔を赤らめるの止めよ???
「カエレ」
「な、何故ですか!?私が何かしてしまったのでしょうか!?」
してるんだよなあ~~???
というか思い返してみれば、今までもあれ?ってなったことって結構あったような…。
個人の趣味を否定する気はないのだけれど、ソレはソレ、コレはコレである。できれば私とは関係のない所でやって欲しいというのが、今の私の切実な思いです。
「俺は変態と一緒に行動する趣味はねェ」
「そんなっ!?ご迷惑をお掛けしたのであれば謝罪します!なのでどうか…どうかっ、私を側に置いては頂けませんか!私に出来ることであれば何でもいたしますっ!」
必死過ぎて怖いよ。
うぅ~~…でもなあ、これが私なら「二度と近寄るんじゃねえ」の一択なんだけれど、ジュカはなあ…。
ハインリヒさん能力はめちゃめちゃ高いんですよね。普通に強いし、お世話好きなのかとても気が利く。ついでに言えば権力もあるし、それに戦闘スタイル的に壁とか囮役になってくれるから戦闘がとても楽になる。何というか、めちゃくちゃ便利な人なのである。あとジュカと同性というのも大きい。
まあドMという特殊性癖をお持ちではあるのだけれど、多分だけど彼は自分から「蹴って下さい」とか「罵って下さい」とかは言ってこない気がする。…まあそうなるように仕向けたりはしてきそうだけれど。
となると、ですよ。
如何に自分が楽をするかに重きを置いているジュカさんならどうするか?
そうですね、「何でもするって言ってるし鬱陶しく絡んで来なきゃ別にいいか」ってなっちゃうんですよね~!チクショウッ!!
ぐうぅっ…今こそ私のRP力が試される、とき……っ!
こ、これでもハインリヒさんの変態度は下げたんです…よ?(震え声)




