48.王都
さて今日は早速王都へ行って、王立図書館に行きたいと思う。
……あ、あとついでに古代遺跡研究所に行って試験も受けないと。
にしても試験に面接かあ…。確かに職業は欲しいけれど、そう言われると積極的に受けたくはなくなるよねえ。まあ受けには行くんですけれども。
王都があるのはアインスベルからさらに南に行った先、フュントからは南西に位置する大きな街である。
王都の中央には某夢の国のような巨大なお城があるらしく、その城を中心として円形に街が広がっているんだとか。
中央に近付くほど貴族街や高級店が建ち並び、外へ向かうほど大衆向けとなっていくそうです。
ハンスたち【宵闇の騎士団】のクランハウスがある場所は、貴族街や一般の住宅街からも離れたフュント寄りの場所にあるため、周りは田園などが多い静かな場所なんだとか。
「……そろそろ行くか」
ヤヌルカの街の外でマップを確認していると、周りからチラチラと視線を向けられる。
普通に移動はパルゥに乗っていく予定なので横で待機してもらっているのだけれど、やっぱりこの揃いのド派手な装飾品というのは目立つのだろう。
「ねぇアレって……」
「やっぱり……」
「うわ、あれが素顔か。マジでヤバすぎ…」
「は?顔良すぎでは?」
「スクシy……あっ写らない!えぇ~SS欲しい~!」
……人を勝手に撮るんじゃありませんよ。
どうやら聞こえてくるのは『あの』とか『例の』とか言っているので、多分椿たちが上げたと言っていたこの新装備の動画のことなんだと思う。
まあ許可を出したのは私だし、ザワザワされるのも甘んじて受け入れよう。
しかし『盗撮』、テメーはダメだ。
いくら設定でフレンド以外には写せない仕様になっているとはいえ、不快なものは不快である。
しかし態々文句を言いに行って相手にするのも面倒臭い。
………よし、ここは三十六計逃げるに如かず!
パルゥに跨がり、そのまま駆け出す。
「あっ!行っちゃったぁ~…」
「えぇ~一緒にSS撮りたかったのにぃ」
「あの装備マジでどこで手に入れたんだろ?」
「あーあ、フレ交換しとけば良かった」
「マジ眼福……」
ハハハハハ。全部お断りですぅ!
◇
「王都へようこそ!旅の方ですか?」
転送装置に登録を済ませ門を潜ると、門番をしている衛兵に声を掛けられた。
「あァ」
「そうですか!王都は美しい街ですからね、どうぞゆっくりとお楽しみ下さい」
「おい、古代遺跡研究所ってのはドコにある?」
「古代遺跡研究所ですか?それでしたら街の南東地区にありますので、ここからですと街の巡回馬車に乗っていくといいですよ」
「わかった」
「どうぞお気をつけて!」
やたらと元気のいい衛兵に見送られ、教えてもらった巡回馬車とやらに乗り込む。
暫くガタゴトと石畳の道を進むと、目の前に大きな建物が見えてきた。
どうやらこれが古代遺跡研究所らしい。
料金を支払い馬車を降りると、建物の入口の前に立つ。
研究所と聞いてもあまりピンとくる建物は思い浮かばないのだけれど、思っていたよりも大きな建物である。
もしかしたら本などの資料だけではなくて、遺物なども色々と置いているのかもしれない。
(もしかしたら博物館的な場所にもなってるのかな?)
ちょっとワクワクした気持ちを抑えて、建物の中にお邪魔する。
中に入ると入口のすぐ横に受付のスタッフがいる。その人に今日の来訪目的を伝えると、「すぐに確認してまいります」と言って奥へ引っ込んでしまった。
入口のロビーには、ショーケースに入れられた壺や朽ちた剣なんかが展示されている。中には想像で描いたのだろうか、昔栄えていたのであろう古代都市の絵画なんかも飾ってある。
折角なので見学させてもらっていると、先程の受付スタッフが一人の職員を連れて戻って来ていた。
「ジュカさんっ!お久しぶりです!」
現れたのは以前の調査で一緒だったリナさんでした。
「よォ、リナか」
「はい、例の調査以来ですね。あの時は本当にお世話になりました」
「フン、そうかよ」
「ええ。あれから本格的な調査も始まっていますが、その調査員たちもジュカさんの資料を見て感心されていましたよ」
「そりゃドーモ」
「ふふ、ところで今日は職業取得の為の試験と面接を受けにいらしたと伺いましたが、お間違いありませんか?」
「あァ」
「わかりました。それではこちらへどうぞ」
リナさんに連れられ建物の奥へと進む。
どうやら依頼で一緒だった3人は本格的な調査の方には参加していないらしく、今は調査で判明したことを元にそれとの関連があるだろう資料や文献を色々と洗い出している最中なのだとか。
「やはり湖は気になりますね。女神もそうですが、そこを守るという聖獣についても調べなければなりませんし」
「見当はついてるのか?」
「今はまだ何とも…といった感じでしょうか。何せチブチア族についての資料がほとんど残っていない状況なので…」
調査は思ったより進んでいないらしい。
「まァ、土着信仰とか民間伝承の線から調べてみるのもいいかもな」
「!確かに…そうかもしれませんね。はい、そちらからも調べてみたいと思います」
そんな話をしながら進んで行くと、一つの部屋に案内された。
「それではこちらの部屋でお待ち下さい。すぐに試験官を連れて来ますね」
「あァ」
「ふふ、考古学者となったジュカさんとまた一緒にお仕事ができるのを楽しみにしていますね」
「フン、それは試験に受かったらダローが」
「ジュカさんなら大丈夫ですよ」
「どうだかな」
そしてリナさんが出て行ってから待つこと暫し。
ノックの後に入って来たのは、顔や肌にそれまでの人生を想わせる傷や皺を刻み、今なお衰えない鋭い眼光を携えた、まるで歴戦の凄腕狩人と言わんばかりの宝塚系婆さんだった。
「ほぉ、あんたが噂の猫獣人かい」
「あ?噂だぁ?」
「ふん、アーノルドの奴が言ってたのさ、将来有望そうな奴がいるってね」
「そうかよ」
「ま、どうやら躾は出来ちゃいないみたいだけどね」
「ハッ悪いが躾られるのは好きじゃないンでね」
「別に構やしないさ、活きのいい奴は嫌いじゃないよ」
いや、このお婆さんめちゃくちゃ格好いいね!?
何というか、その体型や身のこなしから戦闘経験とかめちゃめちゃ豊富そうだし、服装もシャツとズボンにロングブーツっていうシンプルながらも洗練された格好がめちゃめちゃ素敵です。
私の中で、いつかはこんな風に年を取りたい人ナンバーワンである。好き。
「あたしはここの所長のヴァネッサだ。試験はまああの調査資料を見れば問題ないだろうが、一応規則だからね。その後に面接をやるよ」
「サッサと始めてくれ」
「それじゃあこれをやりな」
目の前に出された紙に目を通す。
一応今まで調べてきたメモなんかはシステムから確認出来るのだけれど、それは何となくカンニングしている気分になるので頑張って自力で解く。
というか目の前でずっと見られてるの、物凄くやり辛いんですが…。
「オらよ」
「ふむ…………うん、間違いはなし。知識に問題は無さそうだね」
おや、これはもしや満点だったということでは?ふふん、私も中々やるではないですか!
その後の質疑応答では、面接というよりは遺跡の取り扱いについてや、貴族との関わりなんかも増えるためその対応の仕方等のレクチャーが主だったように思う。
《特定の条件を満たしたため、職業〈考古学者〉を手に入れました──》
おっきたきた!
職業〈考古学者〉:遺跡や遺物から古代の生活や文化を研究する歴史の専門家。一般的に立ち入ることの出来ない場所にも入ることが出来る。一定の身分が保証される。
ほほう。
内容的には称号の〈考古学者〉とそこまで変わりはないけれど、職業として認定されると身分の保証にもなるのね。
「おめでとう。これでアンタもあたし達の仲間入りだよ」
力強く握られた手とどこか圧を感じるヴァネッサさんの笑顔に、なぜか「逃がさねーぞ」という心の声が聞こえたような気がするのは気のせいだろうか……?




