47.再びの図書館
あれから椿たちの店を後にした私は、再び図書館へと向かっていた。
スキルは取得したものの全然レベルの上がっていない〈ツヴェールク語〉のレベル上げをしようと思ったんだよね。
〈ツヴェールク語〉はどうやらこの大陸で使われていた言語ではないらしく、ドーラで欠片を見つけて以来は全然見掛けていない。
う~ん…もしかしてもっと南の方の地域とか、あるいは別の大陸で使われていた言語だったりするのだろうか?
(あ、別大陸と言えばジャンヌとカインにおめでとうメッセージでも送っておこうかな)
図書館へ向かう傍らジャンヌたちにメッセージを送る。
まぁ送ったメッセージは、
『新大陸初到達おめでとう!ジャンヌたちなら行けると思ってたよ~!流石ペペロンチーノ海賊団だね!』
ではなく、
『よォ、新大陸行けたみたいだな?例の約束楽しみにしてるぜ』
だったのだけれど。
……あれ?これってお祝いの気持ちちゃんと届くかな?ただのタカり野郎になってない?
うむむ…でもなぁ、多分ジュカは素直におめでとうとか言うタイプじゃないんだよなあ。
一応わざわざ連絡を入れる時点で相手を気に掛けてはいるんだけどさ。
………まあジュカ的には正解ということで、ヨシ!
今は新大陸発見の直後で忙しいだろうし、また落ち着いた時には話でも聞いてみたいね。
なんて考えていたのだけれど、返事は直ぐに帰って来た。
『ふふん、アタシたちペペロンチーノ海賊団に掛かればこんなもんだよ!例の約束も勿論忘れちゃいないさ、今度今回一緒に来れなかった別の団員たちを連れてまた往復するから、その時に一緒に来たらいいよ』
『へーへーわざわざありがとよ。ジャンヌが張り切ってるから次の航海の時はお前も来ればいいだろ。つかんなことよりも、ジャンヌがまた現地の野郎共と仲良くなってるんだが…。どうにか他の野郎共を近付けさせない方法ってねえか?』
とのこと。
ジャンヌからの返信は全然問題ないし、次回の航海には是非連れて行って貰いたいのだけれど、カインのは知りません。
返信にも『知るか』と返しておいた。
…そういえば図書館へは何度か足を運んでいるけれど、調べたのは周辺の情報や歴史に関することばかりでこの世界全体については調べていなかったかもしれない。
今回発見された大陸のことも何も知らないし、どんな人たちが住んでいてどんな文化があるのかを先に調べてみるのも面白いかもしれない。
新しい場所に行く時、何も知らない状態で行って新たな冒険を楽しむ人もいるだろうけれど、私は事前に情報を調べて予習しておきたいタイプである。
失敗や未知を楽しむ人もいれば、そうじゃない人もいる。
私は完全に後者ですね。攻略情報があれば普通に見るし、失敗しないで済むならそっちの方が全然良いと思います。
それにジュカも遺跡の時みたいに興味があるものを見つけたりしたらそのまま突っ込んで行ったりもするけれど、普段は事前に情報収集出来るならキッチリ調べ上げてから行くタイプである。
◇
そして到着しましたヤヌルカの図書館。
「おや、お久しぶりですね。遺跡の調査依頼では随分とご活躍されたと伺いましたよ。」
「随分と耳が良いこって」
「ホッホッホッ」
いや本当にこの人どこから情報仕入れてるの!?
指名依頼はまあ、会話の内容からある程度予測したりは出来るだろうけれど、活躍したっていうのは誰から聞いたんだろう。…まさかギルドが情報を流したとか?確か事務長のへルマンさんも知り合いって言ってたしな…。
そう考えていたのが顔(もしくは耳)に出ていたのか、おじ様は好々爺然としたまま教えてくれた。
「実はこの仕事をしていると古代遺跡研究所の方と知り合う機会もありましてね、多少の情報交換はしているのですよ。」
ですって。
ということは、調査員のメンバーの誰かかその上司辺りから今回の依頼の顛末でも聞いたのかな。
「今回の依頼で、ジュカ様の調査能力や戦闘能力はかなり高く評価されているようですよ。」
「別に戦闘能力は関係ねェだろ」
「いえいえ、遺跡とは多くが未開の地にあるものですからな。ある程度の戦闘能力は必要なのですよ。」
「今回の調査員のメンバーには無かったみてェだが?」
「ホホ、これからはジュカ様に依頼を出せば護衛依頼が安くつくと所長が喜んでおりましたなぁ。」
知り合いって所長なんかい!
そして護衛料をケチるんじゃありませんよ。
というか知り合いが所長だと言うことは、
「〈考古学者〉の職に就くにはあと何が必要だ?」
「フフ、ジュカ様は既にほぼ全ての条件を満たしているそうですよ。ただ、職に就くためには一度王都にある古代遺跡研究所に直接来てもらう必要があるそうです。」
「…王都か」
「ええ。一応知識を確認するための試験と、質疑応答があるそうですな。」
「ふぅン」
なるほどねえ。
まあ王都にもいつか行こうとは思っていたし、丁度いいと言えば丁度いいんだけれど…
「俺が図書館に来なかったらどうしてたンだ」
私が今日図書館に来たのはたまたまである。
もし来ていなかったら〈考古学者〉の職に就ける条件を満たしていることにも気付かず、試験を受けに古代遺跡研究所まで出向くこともなかったんじゃないだろうか。
「〈考古学者〉に適性のある方は大抵は図書館に来ますからなあ。もし来なかったとしても冒険者ギルドからも声が掛けられていたでしょうな。」
「…そうかよ」
やっぱり何か掌の上で転がされているというか、行動パターンが読まれている感がある気がする…。
まあ職業に就くには住民から認められる必要があるので、誰かしらと付き合いがあればその人から『そろそろ就職出来るんじゃない?』的な連絡が行くようになっているのだとか。
つまり私の場合はこのおじ様ことアーノルドさんか、もしくはへルマンさんからだということなのかな。いや、別に不満とかはないんだけれど。こう、仮に職業に就く気が無かったとしても、上手く丸め込まれそうというか何と言うか。
まあいいか。
「ちなみに本日はどのような本をお探しで?」
「あァ、特別蔵書室の本とあと他の大陸についての本はあるか」
「簡単なものでよろしければございますよ。詳しいものは流石にここには置いていないので、よろしければ王都へ行った際に王立図書館へ寄ってみることをお勧め致しますよ。」
王立図書館はここの数倍の規模があるらしく、蔵書数も然ることながらその取り扱っている本の種類が王道からマニアックなものまで多岐に渡っているらしい。
王都と言うと、あのチョビ髭のような面倒そうな相手が多そうで少し尻込みしていたけれど、俄然楽しみになってきましたね!
ジャンヌたちの船に乗せて貰うのは現実世界で今度の休みの日にしようということになったので、平日は王都で王立図書館と就職試験を受けに行こうかな。
今後の予定も決まり、私はウキウキで図書館の奥へと足を進めた。
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……ふぅ。
調べてみて分かったことは、この世界は大まかに分けて5つの大陸がある。
それぞれに、人族・獣人族・エルフ族・ドワーフ族・魔人族と別れて暮らしているらしい。
勿論中には別の大陸へ行く人もいるそうだけれど、それはあくまで少数なのだとか。
言われてみれば、この大陸でプレイヤー以外の別種族、人族以外はあまり見掛けたことがなかったかもしれない。この間ドーラで会ったヴァイキングのドワーフ族くらいかな。
種族間で戦争なんかはしていないそうだけれど、小競り合いや仲の良し悪しなんかは普通にあるらしい。
人族はドワーフ族とは色々と交易をしているようで仲は悪くないそうだけれど、獣人族やエルフ族は昔奴隷にするしないで問題が起こったことがあるらしく、今は奴隷制度は禁止されているとはいえ両者との仲は微妙なのだとか。
魔人族はそもそも大陸が大分離れているため、交流自体がほとんどないらしい。
とこんな所かな。
ちなみに今回発見されたのはドワーフ族の住む大陸らしく、まあ人族と一番交流があるみたいなので納得と言えば納得かな。
あとは〈ツヴェールク語〉の本も、少ないながらも何冊かはあった。
それによるとツヴェールク語は元々ドワーフ族の住む大陸で使われていたものだったようで、彼らと貿易をしているドーラの街で見付かったのは必然だったのかもしれない。
ツヴェールク語を使っていたのはドワーフ族。ということは、リューヒカイト語を使っていたのはお察しの通り人族である。
つまり一つの種族につき一つの古代語を使っていたとするならば、少なくともあと3種類は古代語があると思って間違いないでしょう!
うーん、こういうのってやっぱり全種類揃えたくなるよねえ。
揃えたら何かしらスキルか称号が手に入りそうだし。
それに王立図書館にもここみたいな“特別蔵書室”があるのならば、もっと詳しいこともわかるかもしれない。
あ~!新しい大陸も王立図書館も楽しみ!




