41.遺跡調査 2
誤字報告、感想いつもありがとうございます。
感想に返信は返せていませんが、めちゃめちゃ励みになっていていつも大切に読ませて頂いています。
誤字報告も本ッッ当に助かります。いつもありがとう…ありがとう…
これからもこの作品をお楽しみ頂ければ幸いです。
調査は3日目、4日目と順調に進んでいる。
遺跡の全貌もほぼ把握できてきていて、今は遺跡周辺の地盤やらの確認なんかも同時に進められている。
私はその辺は専門外なので、専ら遺跡の内部の調査を続けていた。
相変わらずハインリヒさんは絶妙に鬱陶しいけれど、「黙ってろ」と言えばちゃんと黙っていてくれるので自分の気持ちは素直に伝えるようにしています。
だったら最初から素直に黙っていてくれとは思うのだけれど、お喋り好きなのか会話に飢えているのか彼が黙ることはない。うん、やっぱり気持ちを言葉にして伝えるっていうのは大切だよね。
そして4日目の今日の調査も終わり、キャンプ地へと戻る。
護衛はセーフゾーンであるキャンプ地では必要ないので、ハインリヒさんとはここで一旦別れる。
まあ別れるとは言っても彼は騎士たちのテントの方へ行くというだけなので、普通に視界に入る距離には居るんだけどね。
一人で調査してた時の方が気楽だったな…と思わずため息を吐きそうになると、今度は騎士たちのテントの奥からチョビ髭の鋭い視線が飛んでくる。
(お~睨んでる睨んでる)
先日のアレ以降チョビ髭が絡んでくることは無いのだけれど、こうやって視界に入る位置にいると憎々しげに睨んでくるのだ。
実害がないとはいえ、流石に鬱陶しい。
なのでたまたま横を通り掛かった騎士を捕まえ、クレームを付ける。
「おい、アレを何とかしろ」
「えっ?」
捕まえたのは調査員たちの護衛についている一人で、茶色の髪にやや気弱そうな顔をした騎士だった。
「あぁ……いえ、どうにかしたいのは山々なんですが、僕からは何とも…」
「ハァ?テメェらの上司だろうが」
「う゛っ…そ、そうなんですけどぉ…」
なんでも詳しく話を聞いてみると、チョビ髭ことブルーノ隊長は伯爵家出身の四男坊らしい。
当主の座は既に彼の兄が継いでいるため、彼は家を継ぐことができない。なので立場を守るためにも功績を挙げて何とか役職や爵位を得ようと必死なのだとか。
そんな中現れたのが侯爵家の三男であるハインリヒさんである。まだ騎士になって2年という短い期間でありながら、その剣の腕は一級品。おまけに人格者な上に顔も良い。さらには爵位まで自分より格上だというのだから始末に負えない。
「しかもブルーノさんが惚れ込んでいたご令嬢がハインリヒさんに惚れてしまったみたいで…」
「ぅわ……」
「それがこの2年で三回もあって……」
「うっっっわ………」
そりゃハインリヒさんのことを嫌いにもなりますわ。
その上ハインリヒさんは普通にそのご令嬢たちのことはお断りしたらしい。
ならばと再チャレンジしたものの、結果は惨敗。
哀れすぎて涙が出そうである。
「まあそんな感じで拗らせに拗らせちゃってるんで、あんな感じなんです。あと単純に顔のいい男性を嫌ってます」
「くだらねェ……」
大分哀れには思うものの、こっちは完全なとばっちりである。
勘弁してください。
……というかそもそも髭の場合、令嬢に振られているのは顔云々の前にその性格に難があるからだと思います。
そんな感じで騎士たちとも多少は交流(チョビ髭は除く)しつつ、調査を続けた。
そして何とか無事に調査も終え、明日は朝から帰路につくためそろそろ撤収作業を始めようか…となったときに事件は起こった。
「敵襲ーーー!!!」
一人の騎士の声で一気に緊張感が高まる。
襲ってくるのが魔物であれば、そもそもセーフゾーンには入って来られない。しかし相手が人間なのであれば、例えそれが悪党であろうとも中へ入って来れてしまうのだ。
「調査員の皆様はセーフゾーンの奥に固まっていて下さい!」
「8時の方向に人影!他にも多数潜んでいると思われます!」
「守備を固めろ!奴等を近付けさせるなっ!」
「や、野盗なのでしょうか…?」
「き、きっと騎士様たちがいらっしゃるから大丈夫ですよ!」
「ああ…。彼らを信じよう」
これが椿の言ってたイベントなのだろうか…?
確かに“お宝の眠る遺跡で野盗に襲われる”というのは、イベントとしては割とオーソドックスな感じではありそうだけれど…。
私がこの遺跡を発見したとき、この周辺は『数百年は放置されてました』って雰囲気だった。そもそも遺跡の入口は倒れた樹木で塞がれていたし、ここの金装飾が根こそぎ持ち去られた後はそれこそ誰かが侵入した形跡は無かったと思う。
そもそも入口を開けたのは私なのだから間違えようがないよね。
なのにこんなにタイミング良く野盗が襲ってきたりするのだろうか?
そもそもいつこの遺跡の存在に気が付いたの?というかどうやって場所を知ったのか。
ふぅむ……
幸いこのセーフゾーンは遺跡の中。
敵が襲ってくるにしても、入って来れるのは前方の入口しかない。しかしバレているとは考えにくいけれど、遺跡内部には所々崩れて穴が空いてしまっているせいで外から侵入出来てしまう壁がないこともない。
まぁ背後から襲われて挟み撃ちにされても困るしな…。
調査期間中のほとんどを遺跡内部で過ごした私は、内部の構造はかなり詳細に把握出来ていると思う。
(念のため確認だけしておきますか)
騒がれても面倒なので、一応メモだけ残して私はパルゥと共に遺跡の奥へと姿を消した。
壁が壊れて外と繋がっている箇所は全部で3つ。
とりあえずは一番近い箇所から順に見て回ろう。
「ここは……問題なさそうだな。一応壁で塞いでおくか」
一つ目の穴付近は特に問題はなく、〈危険察知〉で周りを探ってみても野盗の影はおろか魔物の姿もなさそうだった。念のためアースウォールで穴を塞いで、敵が入って来れないようにしておく。
次の二つ目の穴も問題なし。
近くにいた魔物を倒し、念のためここもアースウォールで塞いで最後の穴へと向かう。
(もしこれが本当にイベントなら、ここできっと戦闘があるはず……!)
と密かに気合いを入れていたけれど、最後の穴にも敵の姿はなかった。
なぁんだ、と拍子抜けしたのでここもチャッチャと塞いでしまおうとしたその時、パッといい事を閃いてしまった。
これ、ただ背後からの奇襲を警戒するだけじゃなくて、寧ろ私が外に出て奴等を奇襲すればいいのでは?
ピコーンッ!と音のでそうなこの閃きにニヤニヤが止まらない。
パルゥもその事に気が付いたのか、目を細めてニンマリしながら尻尾をユラユラと揺らしている。
「行くか」
「Gルゥ」
さァ、狩りの時間だ。
◇
パルゥに乗って音も無く遺跡の上へと駆け登る。
(おーおー戦ってるねぇ。えー…と敵の数は、と)
眼下では騎士たちと野盗がやり合っている。
野盗たちは結構な数がいるらしく騎士たちは劣勢という訳ではないのだけれど、調査員たちを守らないといけないからかあまりその場を離れられず、野盗たちを殲滅するまでには至っていないみたいだ。
(ふぅむ、厄介そうなのは遠距離から弓を撃ってるアイツとアイツ……あぁ、あそこに回復してる奴もいるね)
遺跡の上から俯瞰で見ているので、戦況が非常に分かりやすい。
戦闘を観察しながら、騎士たちが倒しにくそうな相手を選別していく。
出てきた穴が入口から大分離れていたためか、野盗はおろか騎士たちもこっちに気付いた様子はない。いや、何か今チラッとハインリヒさんと目が合った気がする。
彼のスペックの高さに一人戦慄きつつも、頭の中で作戦を組み立てていく。
(……よし、では行きますか!)
奇襲ミッションスタートである。




