36.スキル進化
──再びのログイン。
ジャンヌたちと別れた後は、ドーラの街の宿屋に泊まってログアウトしました。
さて今日は何をしようかな…と考えていたところでふとあることを思い出した。
(そういえば成長限界になったスキルが何個かあったっけ…)
このRFOの世界では中にはレベル表記のないものもあるけれど、基本的にスキルはLv.30になると成長限界を迎える。
そして2次スキルと呼ばれる上位スキルへと進化、又は派生スキルを解放することが出来るようになるのだ。
しかし気を付けないといけないのは、2次スキルにするにはスキルポイントが6必要になるという点かな。一応スキルが成長限界に到達するとスキルポイント2が貰える形にはなっているけれど、後先考えずにスキルを増やすと後々ポイントが足りずに悲しいことになってしまう。
成長限界に到達したスキルはいくつかあるんだけれど、スキルレベルが上がるのは大体戦闘の後なので、フィールドにいることがほとんどだったこともあってついつい後回しにしている内にうっかり忘れてしまう…ということを繰り返して現在に至ります。ハイ。
何やら双子たちが頭の中でヤレヤレと呆れているような気もするけれど、きっと気のせいでしょう。
えーと、今進化させられるスキルは……と、
〈忍び足*〉
〈風魔法〉
〈気配感知〉
〈集中〉
〈魔法学〉
の5つかな。
一応鑑定スキルもLv.30を越えてはいるんだけれど、これは表記が〈Lv.Max〉ではなく〈Lv.30〉と表示されているから、たぶんまだ進化はしないんだと思う。
成長限界のボーナスでスキルポイント10はもらえているけれど、2次スキル取得で30も必要になるのか…。
いやまあ必要経費なので仕方ないんだけどね、払いますとも。
そうして新たに進化したスキルがこちら。
〈歩行術*〉…あらゆる歩行能力を向上させる。(*がついているためスキルはアクティブからパッシブへと変化する)
〈風魔法Ⅱ〉…より上位の風魔法が使えるようになる。Ⅰで覚えた魔法は強化される。
〈危険察知〉…より広い範囲の索敵ができる。被弾しそうな攻撃を察知することが出来る。
〈瞑想〉…より深く集中することでその効果を高めることができる。
〈高等魔法学〉…より高度な魔法を扱うことができるようになる。
である。
何と言うか、分かりやすい説明と分かりにくいやつの差が激しいね?
高等魔法学の説明は雑すぎでは?
……まあ使っていけばその内分かるでしょう。フィーリングですよフィーリング。
取り敢えずやっておかないといけなかったのはこれくらいかな?
「あとは………あァ、杖もそろそろ新しくするか」
杖は新しく行った街でちょこちょこ変えてはいたけれど、フュントに行った時は手持ちが足りなかったために買いそびれていたんだよね。
でも魔法スキルのレベルが上がれば魔法の威力も自然と上がるし、杖のランクが低くても知力への補正が小さいだけで別に使えなくなる訳ではないからあまり重要視していなかったというだけなのだけれど。
もちろん戦闘は楽しいのだけれど、図書館で本を読んだり住民と話したりしてこの世界の知識を深めていくのも楽しい。それに掘り出し物を探して街ブラするのも好きなんだよねえ。
まあ何にせよ、まずは腹ごしらえでもしに行きますか。
◇
宿屋の食堂でお腹を満たし、街の大通りへと繰り出す。
大通りにはプレイヤーの姿も多く、荷物を運ぶ荷車も引っ切り無しに行き交いあちこちから呼び込みの声が飛び交っている。そんな中で目当ての武器屋を見つけ、人波や荷車の流れの中をスルスルとすり抜けて店の前へとたどり着く。
(……………。)
何か…、凄く動きが滑らかになってますね?
これが2次スキルかあ…。何もせずともスイスイ避けれるというか、体幹が全然ぶれないというか。とにかく意識して使わなくても実感するレベルで凄いです。
と密かに感動しつつ店の扉を潜る。
やって来たのは長杖に短杖、そして本などの魔法触媒なんかを扱う魔法職御用達の武器屋である。
流石大陸の玄関口と言われる街なだけあって、武器の種類が中々に豊富で見ていてあきないね。
「あらいらっしゃいお兄さん。何をお探しかしら」
店の奥から出てきたのは、小麦色の肌に鮮やかな青い髪を一つに編んだ流し目のセクシーなお姉さんだった。
「長杖だ」
「フフ、狐人族以外の獣人族のお客様は久しぶりだわ。長杖ならこっちよ」
案内された先にあったのは、海の近くということもあるのか水属性に特化した杖が多いような気がする。まあ海の魔物の素材を元に作ればそうなるのかな?
「属性は何を使うのかしら」
「風と土だな」
「あらそうなのね。う~ん、それならこの辺りがオススメかしら」
勧められたのは風魔法を強化する【フェザーウッドロッド】に土魔法を強化する【マイナーロッド】。それと特に属性強化はないけれど、魔法の威力が上がる【結晶杖】の3本だ。
属性強化は確かに強いけれど、複数の属性魔法を持ってる場合はやっぱり一つだけ強化してもねぇ…という感じはある。
2本とも買って相手によって杖を使い分ける、という方法もなくはないけれど、それはそれで面倒臭そう。
まあここは無難に結晶杖かな。
結晶杖の嬉しい所は材質が木ではない所かな。かといって何で出来ているのかはよく分からないのだけれど、持ってみると結構重さがある。
なので多少は打撃での攻撃力もあるらしく、杖術との相性も良さそうなのが高ポイントです。
でも実はマイナーロッドもかなり重さがあったりする。見た目は石で出来てるようにも見えるし流石土魔法特化の杖、といったところだろうか。
実際に持ってみると振り回して使うのはちょっと厳しいかな、と思うくらいには重量がある。鈍器には良さそう。
「それで決まりかしら?」
「そうだな」
「ウフフ、お買い上げありがとう。また来てね」
パチンと飛ばすウインクにドキッ!とはしないけれど、大変よくお似合いです。
これはきっと数多のプレイヤーを虜にしてそうだな…と思いつつ店を出る。
うん、欲しかったものは大体揃えられたかな。
パルゥ用の干物も沢山買ったし、これで買い忘れはないはず…。
何となくそのまま大通り沿いを歩いて来たけれど、気が付いたら多数の船が荷下ろしをする埠頭まで来ていたらしい。
日に焼けたマッチョたちが罵声を上げながら木箱や樽を担いで忙しそうに働いている。
「おうっチンタラ運んでんじゃねーぞ!」
「テメェそこ邪魔だっつってんだろーが!」
「おいおい誰だよこんな所に荷物置きやがったのはよォッ!」
「あ゛ぁっ!?それは先に運んどけっつったろーが!」
うーん柄が悪い。
見てる感じこれが日常なんだろうけれど、魔物との戦闘の勲章なのか顔や身体に傷を刻んだ屈強な男たちが怒鳴り合う様は、彼らが海賊だと言われても何ら違和感はない程度には柄が悪い。
そんな光景を遠目から眺めていると、丁度一隻の船から巨大な魚が下ろされる所だったらしく、その魚を見た周りから大きな歓声が上がった。
「おぉー!ありゃ黒金剛マグロじゃねぇかっ!」
「っかぁ~~やっぱ迫力あんなぁ!あんな大物いつぶりだ?」
「おいおい誰が仕留めたんだよ!こいつぁ一杯奢ってやんねえとなあ!」
おぉー!でッッッかい!!
というかアレってマグロなの!?すごいな、一体何mくらいあるんだろう…
まだ鯨だと言われた方が納得できる気がする。
アレをマグロと言われても、美味しそう!という感想はあまり浮かばない。それよりもその鋸のような牙になぜか爪?というか棘の生えた鰭、そして魚じゃなくてドラゴンなのでは?と思うくらいには艶々で頑丈そうな鱗の生えたその身体。
どう見ても完全なるモンスターです。ありがとうございました。
(この世界の漁師はあんな魔物と日々戦ってるのか……こわすぎ。というかあれって美味しいのかな?でも周りの人たちの歓声からすると美味しいんだろうな…)
やっぱりファンタジーの定番らしく、強い魔物ほど美味しかったりするんだろうか。
私は食にそこまで拘りがあるタイプではないけれど、どうせ食べるなら美味しい方がいいよねという感じ。
あの吊るされた巨大魚も、もし食べる機会があれば食べてみたい。
うちのお魚好きのパルゥさんも喜びそうである……って流石にパルゥはレストランには入れないか。
ん~それならまぁ流石にアソコまでの巨大魚は無理だけれど、折角だし海釣りっていうのもやってみようかな。
そうと決まればうちのお猫様に貢ぐためにも釣り場を探さねば!




