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32.出発

「おはよう!今日はよろしくね!」

「おはようさん!」

「おはようございます~」


「よォ」



ドーラへ向けて出発の日、3人ともアインスベルまでは転送装置に登録をしてあるということだったので、アインスベルの門から少し離れた所で待ち合わせである。


「とりあえずは戦い方の確認かな?」

「せやな。私はハンマーやから前衛やな、ドワーフと言ったらやっぱコレやろ!」

「私は弓ですね~。一応エンチャントで弓に属性を付与したりも出来ますよ。でもスキルレベルが低いので威力はお察しですね~」

「私は回復とかバフのサポート重視かなー。武器は一応短剣も持ってはいるけど、これはまあ……ね?ただのお守りみたいなモノだからね、攻撃は期待しないでくれると嬉しいカナ」


椿の短剣は少し変わったものらしく、攻撃用ではなく魔法の触媒なのだとか。

まあ普段の椿を思えば、近接戦闘などどう考えても向いていないのでそれでいいと思う。


それにしても、これでも一応魔法使いを自称しているので普通に考えれば私も後衛なのだけれど。


前衛・後衛・後衛・後衛のパーティーか……



いや、バランス悪っっっっるぅ!!



「…………大分偏っとんなぁ」

「そ、そうですね~……」

「前衛1の後衛3だもんね……」


「……まァ何とかなンだろ」


ほんとにぃ…?みたいな目を向けられているけれど、パルゥと私で遊撃を上手くこなせれば多分何とかなるんじゃないかな?うん、たぶん。流石にフュントまでの道中に出てくる魔物よりは弱いだろうし。


道中に出てくるのは主に3種類で、羽を矢のように飛ばしてくる(ハヤブサ)にたまに眠りの状態異常をかけてくるムスクキャット。あとは斬擊の効きにくい大蜥蜴(ビッグリザード)かな。


幸いメイン火力のキャロさんはハンマーだし、他の2種も小型で体力もそんなにないだろうからきっと何とかなるでしょう!



ということで、いざ出発!



とはならず、さっきからキョロキョロと何かを探している3人にまずはパルゥを紹介しなければ。


「来い」


地面に手を翳すとそこに複雑な魔方陣が現れ、その光の中からヌッと斑模様を光らせ、豪奢な装身具を身に着けた黒毛のジャガーが現れた。


「グルr」


私を見ると、そのまま腰に頭を擦り付け隣に座る。

よしよし、愛いやつよ。


そのまま顎の下を掻いてやりながら3人の方を確認すると、


「「「ッ~~~~~~!!!!」」」


と声なき声で叫びながらも目だけはキラキラ、というかギラギラと輝かせた3人組。


「お~~~!めっっちゃエエな!てかコレどういう作りになってるんや?ふんふん…成る程こうなってんねや……ほお~~!んでこっちは…」

「はぁ~~いいわぁ~~…野生の美と美が掛け合わされて最高オブ最高。あ゛ーー部屋に飾っておきてぇ…」

「うっうっ……神様ありがとう…っ!推しが今日も輝いてますぅ!う゛ぅっ組み合わせが既に神…エキゾチックなイケメンとエキゾチックな獣が掛け合わさってエキゾチックがゲシュタルト崩壊……ッ!」


お、おう………

しかしこうして声だけ聞くと、ちゃんとデザインの確認をしているのはキャロさんだけのように聞こえてしまうけれど、実際は椿とユリさんもしっかりチェックしている。



「……うん、コレならやっぱり今回も黒メインでいこう」

「せやな。前のは何だかんだ刺繍なんかで差し色入れとったけど、今回はアクセサリーもあるし黒一色やな」

「そうですね~白、というのも捨てがたいですが、今回はこちらの騎獣と合わせるということですしね。あとは…やはり生地にあまり光沢があるのは避けた方がいいかもしれませんね」

「「だね/せやな」」


キャイキャイ騒ぎながらも、目はプロのそれである。

私とパルゥの周りをぐるぐると回りながら観察し続けているけれど、目が回ったりしないのだろうか。


「……おい、まだ続ける気か?」


「ハッ!つい夢中になっちゃってた、ごめんね!そろそろ出発しよっか!」



集合から既に結構な時間が経過していたけれど、たまにはこういうのも悪くはないかな。

そうしてようやく4人と1匹はドーラへと向けて出発した。




「キャロ、今だよ!」

「よっしゃあーーーーどっっっせい!!」


ドゴーーーンという音と共に、ビッグリザードの身体はパリンッと光の粒子となって消えて行った。


「いや~順調やな!」

「お疲れ様でした~」

「はぁードキドキしたぁ!」


旅は思っていた以上に順調である。

敵はもちろん出てくるけれど、今のところ危なげなく倒せている。


「「「それにしても……」」」


何でしょうね、3人とも私たちに何か言いたいことでもあると言うんですかね?

ジト目を向けてくる3人に、ちょっと怯みつつも気持ちを抑えてグッと見返す。


「なンだ」


「いや、なんだやあらへんわ!」

「魔法使い とは」

「ジュカくんは流石の身のこなしですね~」


どうやら私とパルゥの戦い方に問題があったようです。


私たちのパーティーにはタンクがいないので、基本的に敵の攻撃は前衛であるキャロさんに集中しやすい。

キャロさんはドワーフ族というだけあって防御力は高いけれど、さすがに一人で攻撃を全て受け持つ訳にもいかない。そもそも盾すら持ってないし。


ならばどうするか。敵が単体なら私とパルゥで敵を足止めして、そこをキャロさんに狙ってもらう。敵が複数の場合は、私とパルゥがそれぞれタゲをとって他の敵から離しておいて、その間に一匹ずつ順番に仕留めてもらう感じだ。椿とユリさんは回復と牽制である。


杖術や蹴り、軽業のスキルを使えば敵の攻撃を捌くことに大して問題はない。

さらに詠唱時間の短いボール系の魔法を使えば、ダメージは少ないけれど敵の攻撃を捌きながらでもこちらからも攻撃ができる。


「こう、獲物を甚振って遊んでる猫ちゃん感が凄い」

「それな。めっちゃ楽しそうやしな」

「あれってジュカくんの性格もそうですけど、若干素の性格も混ざってそうですよね~」

「「それな」」



というか、そもそもまずパルゥが攻撃に加わっている時点で大分驚かれていたらしい。あれ、言ってなかったっけ?

一応「俺とコイツで遊撃に出る」とは言ったけれど、どうやらパルゥに乗って移動するという意味にとられていたらしい。

成る程説明不足。大変申し訳ない……


「ちゃんと魔法使って倒してンだから問題ねェだろうが」


「いや確かに魔法使ってたけどね!?でもまさかあんなに敵にがぶり寄りで戦うとは思わないじゃん!?」

「魔法使いって後衛職ですよね~?」

「そもそもパルゥが攻撃に加わっとるんがまずおかしいんやけど」


「チッ、ごちゃごちゃうるせェな…」


一応最初の数回の戦闘はたまたまなのかと思い様子を見てくれていたようです。

しかし何度戦っても、最初の不意打ちの1発目以降は前衛さながらに近接で戦っているのにとうとうツッコミを堪えられなくなってしまった様子。


これは報連相を怠った私が悪いので、ここはちゃんと説明しておかねば。



という訳で、ついでに騎獣装備の入手までの流れなんかも説明すると、3人から呆れた視線が返ってきた。


「う~~ん流石ジュカくん!常に想像の斜め上方向に突っ走って行くね!好き!!」

「はぁ~~…相変わらずジュカはジュカやな」

「それでも騎獣と一緒に戦えるのは心強いですね。これは騎獣選びをもう一度考え直してみた方がいいかもしれませんね~」

「うーーん、でも24時間一緒に居るってのは正直キツいで?店もあるし」

「確かにねー。お店の中もうちは貸し店舗だから出せないもんね。あっでもホームならいけるのか」

「とはいえホームを持つのも大変そうですけどね~」

「「それな~」」


まあホームはお高いらしいからなあ。

そもそも巡り人たちは基本根なし草なので、ただお金を払うだけで「はい購入。」とはいかないそうな。互いの信頼関係を築く為に結構な数のクエストをこなす必要があるらしい。


それでもホームというのはプレイヤーたちにとっては非常に魅力的なので、機会があれば皆こぞって受けるんだろうな。私も受けたい。


「それよか私は騎獣装備の方が気になるんやけど」

「うんうん!でも確かに鞍とかを着けれることを考えれば、装備を作れても不思議はないんだよね」

「そうですね~。ただ戦えることを知らなければ、本当に見た目だけの装備になりそうですけど」

「今んとここのことを知ってるのはジュカと私らだけなんやろ?」

「確かに掲示板でも聞いたことないかも」

「ハルとハンスは知らないんですか?」


どうだろう?

この【共に歩む者】という称号を得たのは、ハンスたちに会った後だしなぁ。


「さァな」


椿たちの反応からするに、これはまだ未確認の称号だったのかもしれない。

それならハンスたちにも教えて、そのまま掲示板に上げてもらうのもいいかもしれないね。まあその内誰かが気づきそうな気もするけれど。


とそれはさておき、


「つーか別に俺は後衛に行ってもいいが、パルゥは基本ヒットアンドアウェイだからな。そうするとヘイトが全部キャロに行くぜ?」


「「「そのままでお願いします」」」





ドーラへの道のりは遅々として進まないけれど、これはこれでとても楽しい。

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