25.フュント
「っていうかジュカの騎獣普通にめっちゃ格好いいんですけど」
「それな。てかこいつ種族なんだ?クロヒョウ?」
「ブラックオンカだって。たぶんジャガー」
「いやいや、組み合わせがイケメン過ぎるでしょ。椿が発狂しそう」
「それを言ったらユリもだろ。キャロは………あいつも怪しいな」
「この姿で会いに行ったときには発狂してたよ」
「「だろうね/な」」
そんな感じで互いの近況を報告しつつ、牧場への登録を済ませる。
登録と同時に受け取った【騎獣の指輪】はどうやら魔道具になっているらしく、街間を繋ぐ転送装置から着想を得て作られた物なのだそうな。
騎獣の登録自体はどの街でも出来るそうなのだけれど、送られて来るのは基本このフュントの牧場なのだとか。まあ確かに他の街で牧場を見たことはないし、フュントは周りが草原地帯なだけあって土地は余っていそうではある。
ちなみにホームを持つと、騎獣の待機場所をホームに変更することも出来るようになるらしい。但し貸し店舗は除く、とのこと。
そして騎獣を牧場へと送還する場合、フィールド上だとその場で消えるように転送されるらしいけれど、牧場まで連れて来るとそのまま歩いて厩舎まで移動するらしい。
名残惜しいのかパルゥが中々厩舎の方へ行こうとしないので撫でている今現在。
ごめんよ、もう魚は残ってないんだ……。
「ジュカの騎獣はもう随分と懐いてるんだな」
「そう?」
「あー、捕まえ方次第によっては全然懐かない子もいるみたいだねぇ」
どうやら騎獣には好感度的なものが存在するらしい。
確かに力ずくで捕まえられたり、粗雑な扱いをしているのであればそりゃいい気分にはならないだろう。
「そういえばハンスの騎獣は鳥系って聞いてるけど、ハルさんは何にしたの?」
「ん?てかハルでいいぜ。今のジュカにくん付けで呼ばれる方が落ち着かねえわ」
「なら遠慮なく」
「あぁ。で俺の騎獣なら狼だな」
「ハルは大の犬好きだもんな~」
「本当は柴犬がよかったんだけどな…」
強面の魔人族の騎獣が柴犬……
大分絵面が面白いね?
詳しく聞けば、実は柴犬の他にももっとかわいい系…サモエドっぽい感じの騎獣やパピヨンのような見た目の騎獣なんかもいたそうな。
そしてそんなお犬様たちに突撃しようとするクランマスターを、他のクラン面子が何とか押さえて格好いい系の狼へとシフトさせたらしい。ご苦労様です。
ハルも一応【宵闇の騎士団】という“騎士団”の団長を名乗っている以上、あまりにファンシーなのは止めてくれと団員たちに泣き付かれて渋々諦めたのだそう。
有名クランの方は大変ですね…と思いつつ、諦めて厩舎へと入っていくパルゥを見送る。
「んで、このあとどーする?」
「ジュカは行きたいとことかある?」
「……ならとりあえず飯だナ。腹減った」
「オッケーまかせて!」
「んじゃ行くか」
◇
その後は美味しいチーズ料理の店や、装備の材料となる素材屋なんかに連れて行ってもらった。
特にこの辺りで育成されている魔羊の毛は魔力カット率がかなり高く、新たな装備のためにも幾つか確保しておきたいところ。
「………高ぇな」
「まあ長閑な街だけど、一応は最前線の街だしね」
「でも道中の魔物素材売ったらそれなりにはなるだろ?」
「全部無視して来たからンなもんねェよ」
「「……………」」
二人からの視線が痛い。
「えっジュカって今レベルいくつ?」
「22」
「はあっ!?」
「いや低っくぅ……!えっマジ?よくここまで来れたね???」
「ンだよ。別に来るだけなら誰でも来れんだろ」
「いやいやいやいや」
「俺たちでも最低レベル30は越えてたからな?」
「そうだよ、俺とハルも今35レベだからね?」
「へェ」
いや興味無さすぎでしょ!?と騒ぐハンスは放っておくのが一番である。
とはいっても騎獣に乗っているのであれば、魔物たちの間をすり抜けて行くのもそれほど難しいことではないような気もするのだけれど…。
「いやいや、普通は無理だからな?普通に見つかるし、逃げ切れないからな?」
「そうそう、っていうかそれ以前にまずソロで来ようと思わないからね?」
なんと、ソロで活動している人は意外と少ないらしい。
というかやっぱりこの〈身代わりの腕輪〉ってかなり優秀なのでは…。ここに来るまでに一回使ってしまったのが悔やまれる。どうにかして回数を復活させられないかな…?
「まあジュカも大概PS高えからな…」
「さすがジュカ、いつも想像の斜め上を行くよね」
「ほっとけ。で?お前らはこの後どーすンだ?」
「そうだな……とりあえず王都戻るか?」
「あ~そうだね。実は王都に騎士の訓練を受けられる場所があってさ、そこに通えば騎士の職に就けそうなんだよね」
「へェ、名実共に騎士様になれるってワケか」
当初RFOの世界には職業システムは無いと思われていたのだけれど、ある時住民に弟子入りして“見習い”になったプレイヤーが現れ、そこから実は職業システムがあるのでは?となったそうだ。
そして最近その“見習い”だったプレイヤーが、一人前の職人として認められたのか職業【鍛冶師】となったらしい。
追加されたヘルプによると、職業とは住民から認められる必要があるらしく相応のクエストをこなしたり、スキルを上げたりしないと就けないそうだ。
しかし職業に就いたからといってステータスが上がったりすることはなく、特別な依頼が受けられたり特殊なスキルを手に入れられるかも?といった効果のようだ。
まあ職業によっては住民の反応が変わったりなんかもするそうなので、興味があったら探してみてね。といった扱いなのだとか。
別に職業に就かなくともゲームの進行は特に問題ないので、職業を探すかどうかはその人次第、といったところかな。
私?私ですか?
フフ、このRP勢たる私が探さない訳ないんだよなぁ!!
勿論探しますとも!
まあ折角だし、ここはやはり〈考古学者〉を探したいところ。でも何となくだけれど、称号〈考古学者〉の効果で受けられる特別な依頼とやらをこなしていけば勝手になれそうな気もそこはかとなく…。
と、新たな情報も得られたところでハンスたちとは別れた。
今度は一緒に冒険しようねえ~~~!!と嘆くハンスをハルが引き摺って行くのを眺めながら、次の予定を決める。
(消耗品……回復薬はよし、MPポーションもこれだけあれば足りるかな。あと食料……はもう少し足した方がいいか)
ここフュントは畜産が盛んなだけあって、食べ物系のアイテムは豊富な上にとても美味しい。
ハンスたちと入ったレストランの食事も美味しかったし、今味見させてもらった干し肉もかなりイケる。現実にあるジャーキーといい勝負である。あ、パンとチーズも買って焚き火で炙りながら食べるのもいいかもしれない。うん、絶対買おう。
魔物の素材系はかなりお高めになっているけれど、食べ物系は割と良心的なお値段である。これから遺跡探索することを考えれば必要な出費であるので、ここぞとばかりに買い込んで行く。
(他に必要なものは………あ、)
そのとき目に入ってきたのは、大小様々なサイズの騎獣用ブラシ。
種類も豊富で短毛用に長毛用、中には鱗用や羽毛用なんかもある。
あぶなっ忘れるところだった!
そうそうパルゥ用のブラシを買おうと思っていたんでした。
(それにしても……)
いや種類が多いのよ。サイズはいいとしても、材質の違いがよくわからない。現実でもそこまでブラシに拘ったことないからなぁ。
「お、兄さんブラシをお求めかい?うちのはどれも魔物素材で作ってるからどれを選んでもハズレはねぇよ?」
なるほど魔物素材。それは確かに効果が高そう………って高っっっか!?
いや思ってたブラシと値段が一桁違うんだが?流石にこれはお財布に大打撃なんですけど。どうしよう、今回は見送ろうかな……?
とその値段に戦慄いていると、値段に引いたのがバレたのか店主の親父がブラシの良い所を猛プッシュしてきた。
「いやぁ兄さんはお目が高い!うちのブラシはただ毛並みを良くするだけじゃねえんだ!血行促進にマッサージ効果、さらには回復効果まで付いてるのさ。これはそんじょそこらのブラシじゃ得られねぇ効果だ。それに効果の高いブラシでブラッシングするほど、騎獣との関係は深まるってもんさ!」
くっ…この親父やりおる…っ!
確実に欲しくなる言葉で私を攻め立ててくるではないか!いやでも、この値段は流石に……そろそろ新しい装備のための金策もしたいし………
───買ってしまった。
違う、違うんだ!決しておっさんの口車に乗ってしまった訳では……!
ふぅ、まあ買ってしまったものは仕方がない。お財布が大分寂しいことになってしまった、というかほぼ空ではあるけれど後悔はないです。
そういえば最近は冒険者ギルドにも全然寄っていなかったような…。
よし、次の街へ行ったら今度こそ必ず冒険者ギルドへ行ってクエストを受けよう。そして報酬を得るのだ!
今?今は遺跡探しの方へ向かいたいので、次の機会に必ず行くということでここは一つ。
……そんなことだからお金が貯まらないんじゃないの?なんて言葉は聞こえない!聞こえないんだからな!!




