16.クエスト完了
セーフゾーンの完全復活ぅ…?
とりあえずなんのこっちゃとヘルプで確認しようと思ったら、
「あれ?昨日ジョンが転んで擦りむいたとこが治ってるよ」
「えっ?あっ本当だ!なんでだろ?」
なるほど自動回復。
自分のステータスを確認すると、減っていたMPが少しずつではあるが回復している。私も自動回復系のスキルは持っているけれど、レベルの低さもあってその効果は微々たるもの。
RFOの世界では街中ではHPもMPも結構なスピードで回復するけれど、街の外では基本回復しない。アイテムなり魔法なりを使うしか回復方法はないのである。
なので魔物が湧かないセーフゾーンというのは、それだけでも街の外にいるときは非常にありがたいのだ。そこへ更に自動回復効果も付くというのはめちゃくちゃ助かる。街の中と比べれば回復速度は遅いけれど、アイテムやMPの節約が出来ると考えればお釣りがくるというものである。
“慈悲深い光の神”と“安寧を与える闇の神”か。
それが魔物の湧かない安全地帯と自動回復の効果になる…と。
「……なるほどな」
私の呟きを拾った子供たちが「なにがなにが?」と纏わりついてくるが、適当にいなしながら村へと戻る。
そして依頼を出した老婆に完了報告をすると、
「なんとまあ、まさかあそこにそんな仕掛けがあったとはねぇ。長年通ってはいたけれど全然気が付かなかったよ」
と目を丸くして驚いていた。
老婆でも知らなかったんだな…と考えると、あのもう一つの神像は一体いつから埋まっていたのか。
「ハァ。それにしてもいくら知らなかったとはいえ、神様の像を長い間埋もれたままにしちまったというのは何とも申し訳なかったねぇ……」
老婆が悩ましげにため息を吐く。
まぁそれはそうなんだろうけれど、しかし何の前情報もなくあれを初見で神像と見抜けというのは中々に厳しいと思う。
「……別に気付かなかったもんは仕方ねェだろ。これからは精々大事に祀ってやるんだな」
「フフッあんたの言う通りさね。これからは今までの分も含めて大切にお祀りするよ」
《クエスト「村はずれにある神像の清掃」を完了しました──》
《報酬として経験値と500Gを獲得しました──》
お、無事に完了したらしい。このクエストはたぶんだけれど、元々祀られていた神像の清掃だけでもクエストは完了していたんだと思う。
でも神話の知識や住民の話なんかで情報を得ていると、ちょっとした違和感を覚える。そしてよくよく観察してみるともう一つの神像を発見出来る、という隠し要素的なものが存在しているのだ。
うん、いいね。こういう隠し要素的なものは考察勢の人たちとか大好きだよね。勿論私も大好きです。
報酬は普通に終わればアイテムもなくお小遣いと経験値だけというしょっぱいものではあるけれど、隠し要素に気付ければ新しいスキルをゲット出来るという中々に美味しい内容。クエストの内容的にも考察し甲斐のある良いクエストでありました。
ホクホクした気分で村を後にしようと思ったのだけれど、既に夕方になっていたのと老婆に食事に誘われたので折角だしお邪魔することにしました。
◇
「そうそう、あの場所であたしと爺さんは運命の出逢いを果たしたのさ。爺さんはあの頃はそりゃあもう逞しくってねぇ。いやいやあたしだって負けちゃいなかったさ、このレイネ村で一番の器量良しと言えばあたしだったからね。あの頃はあたしを嫁に貰おうっていう連中が毎日列を成していてねえ……」
この世界にはお喋りな女性しかいないのだろうか……
さっきから婆様の惚気話を延々と聞かせられております。もはや相槌を打つ気力すら残っていません…。
遠い目をしながらも何とか頭に入ってきた話を要約すると、婆様の旦那様である爺さんはどうやら元冒険者だったらしい。偶々あのセーフゾーンに立ち寄った時に婆様と出逢い恋に落ちたのだとか。
その後は婆様と結婚(その時に村の男連中と大乱闘となったらしいが、その全てを薙ぎ倒して婆様を娶ったのだとか)し、村の一猟師として生涯を終えたそうである。
これを30倍くらいの熱量と時間で語られた私の気持ちを考えてみて欲しい。
「頼むから帰らせてくれ」の一言である。
そして気が付けば夜も更け、いくら巡り人でもこんな夜中に帰す訳にはいかないとほぼ強制的にお泊まりが確定し、ならばと更に話に付き合わせられる地獄のループ。
家に居た息子さんご夫婦に物凄く謝られてしまった。
翌朝、昨日はそのまま最初の街へと戻る予定だったけれど、偶然とはいえ折角村で朝を迎えられたことだしこのまま次の街まで行ってしまおうか…と思い、朝食の席でアインスベルまでの道を尋ねてみた。
「ここからアインスベルまではどれくらい掛かる?」
するとあ~…と少し気まずそうな顔で息子夫婦が答えてくれた。
「やはり巡り人の方はそちらを目指されますよねえ。いやね、もちろんここからでもアインスベルへと続く道は繋がっているんですがね…」
「えぇ、村の南側から伸びている道がそれね。ただねぇ、この村からだと今日中にはたどり着けないから、一つ先にある村で一泊するしかないのよね」
「その一つ先にある村はあなた方が始まりの街と呼ぶヤヌルカとアインスベルのちょうど中間にある村でね、だから皆わざわざこのレイネ村には寄らず最初から次の村を目指すのさ」
なるほど。確かに用も無く二度手間になるのであれば、わざわざここには立ち寄らないだろう。特に目立った産業もなく利便性にも欠けるこの村は、世間からの認知度は低そうである。そして以前はちょこちょこと訪れていたらしいプレイヤーたちも今となってはほぼいない、と。中には何も無いことに文句を言うプレイヤーもいたそうで、大人たちのプレイヤーに対する印象はあまり良いものではなさそう。今回はそれらを知らなかった子供たちの方から私に接触してきたため、実は心配して遠目から様子を見ていたのだとか。
しかし今回は子供たちや婆様の方からガンガンに絡みに行っていたので、大変恐縮しておられる様子。「うちの母は面食いでして…」と、なんだろうか私の顔はそんなに婆様キラーな顔をしているのだろうか。反応に困ります。
まあ今日中に辿り着けないのであれば街に戻るか…と思ってはいるのたけれど、婆様が私を離してくれません。
いや帰ろうとはしたのだけれど、飲み物にとコーヒーを出されてしまい、コーヒー党な私はついうっかり腰を下ろしてしまったのである。現在は旦那の爺様が冒険者時代に集めていたというガラクタを見せられている。
「あの人はとにかく変わったものを集めるのが好きでねえ…」
これでも価値があるものは全部売ったあとなんだよ。と言われ机に置かれたのは、なにやら模様が描かれた瓦っぽいものや割れたツボ、その辺に落ちてそうなちょっと綺麗な石、といった正に“ガラクタ”といったものだった。
「なんだァ?コレ」
「さあね、あたしにだってわかりゃしないさ。ただあの人がやたらニコニコしながら磨いてたもんだから、あたしも捨てるに捨てれなくてねえ。まぁあの人が先に逝っちまった今となっちゃこれも大切な思い出の一つさね」
「そりゃご苦労なこって」
そんな悪態を吐きつつも瓦っぽいものを手にとって眺めてみる。
(この模様も何か意味があるものなのかな……)
ふぅむ。まあただのフレーバーテキストである可能性はあるけれど、というかその可能性の方が高いような気もするけれど、とりあえず記録には残しておこう。
「おい婆さん、これちょっと写してもいいか?」
「ん?別に構やしないよ。でもなんだい、それに何かあるのかい?」
「さァな」
インベントリからメモを取り出す。グルリと周りを見渡し暖炉から炭の欠片を拝借すると、メモを瓦に乗せて炭で軽く擦っていく。すると模様の部分が溝になっているため、メモには白抜きしたように模様が浮かび上がる。
こういうのトレジャーハントしたりする映画でよく見ました。めちゃくちゃテンションが上がります!
「へえ、器用なもんさね」
「…フン」
念のため割れたツボの模様もとり、石はSSに保存しておく。
これで何かあればめっけもんである。どうやら爺様が拾ってくるものは大体どこかの遺跡からだったらしいので、何かある可能性はゼロではないと思う。いや思いたい。
ついでとばかりに婆様から遺跡のある場所も聞いておいた。とはいっても婆様も爺様から聞いたものの元々地理には明るくなかったらしく、どこどこの街の近く~だとか地図の大体この辺……だと思う、といったかなり曖昧な感じだったけれど。いや遺跡があると知れただけでも良しとしよう。このあとは自分で調べればいいだけだしね。
気が付けば昼も間近となり、昼食も食べて行くか?と誘われたけれど丁重に断り、今度は再び子供たちに捕まってしまわないようにそそくさと村を後にした。
もしかしてあの息子夫婦、婆様の話し相手をするのが面倒で私を引き留め続けていたとかないよね…?




