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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第2章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

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Episode 33


--イベントフィールド 【収穫者の廃都】

■【食人鬼A】CNVL


「お、帰ってきたね。お疲れハロウ」

「ありがとう。貴女もお疲れ様」


表彰された後、イベントフィールドの方へと移動してきた彼女をパーティメンバー全員で出迎えた。

ちなみに、一応4位でも表彰されはするのだが、そもそも表彰式(のようなもの)に参加すること自体が任意だったために、私は参加せず観戦ウィンドウから見るだけにしていた。


「あ、そういえば優勝したなら賞品あるよね。どんなの?」

『あ、それ私も気になる('ω')ノ』

「確かそんなのも貰ったわね……少し待って」


そう聞けば、彼女は自身のインベントリから何やら古風な羊皮紙を取り出して、そのままそれに目を通し始めた。

恐らくアレが今回の優勝賞品……というか、それのリストが書かれている羊皮紙なのだろう。

……確かグリンゴッツは、アイテム詰め合わせとかなんとか言ってたような記憶があったりなかったりするけど、どんなんなんだろ。


そんな事を考えていると、羊皮紙に書かれたものを読み終わったのか、彼女はこちらへとそれを渡してきた。

見ると色々ないアイテムがずらっとリスト状に並んでいて。

それらを選択する事で、選択したアイテムを貰うことが出来るシステムのようだ。


「何種類からか選べるタイプみたいよ。ほら、それぞれの区画ダンジョンの素材詰め合わせとか。というかCNVLも一応入賞自体はしてるんだから、何かしら貰えるんじゃない?」

「……え、本当?あ、本当だ。なんかインベントリというかログ入ってた」


言われて確認してみると、確かに賞品リストという名目のアイテムがインベントリ内に存在していた。

取り出してみれば、ハロウが手渡してきた羊皮紙と同じものが出てきて。


「ふーん……成程、2個選択できるのかぁ」

「え?こっち5個よ?……あぁ、順位の差かしら」

「多分そうだろうねぇ。それ以外の違いはほぼないだろうし」


私の方は2個、ハロウの方は5個、そのリストの中から選択できるようだった。

中々に太っ腹というか。単純に貰えるものを見ていくと、各ダンジョンの素材がメインで、時間さえかければ誰でも回収できるようなものばかりだった。


「お、薬剤セットとかあるぜマギくん」

「どうせ、先輩は取らないでしょう?」

「あは、そうだねぇ。貰えるものよりどうせマギくんが作ったものの方が効果量とか高そうだし」

『ハロウは何にするの?素材にして防具に回す?('ω')』

「それもいいかもしれないわね。素材によってはシャツにするのに適したものとかはありそうだし……」


そうやって話していると、私達へと近づいてくる人影が1つ。

一応戦闘ができるフィールドという事で、やる者はいないもののこの場でPKも行う事が出来る。

そのため、一応私は【菜切・偽】を。マギやメアリーも自身の得物へと手を伸ばしていた。

唯一無手で警戒すらしていないハロウは、その近づいてきた人へと話かける。


「ん?……あら、貴女」

「やぁ、ハロウ。赤ずきんって名前でプレイ始めたからよろしくね。……っとと、そっちの人達はハロウのパーティメンバーかな?話はよくハロウから聞いているよ」


こちらへと笑顔で話しかけてきたその女性は、まるで血を頭から被ったかのような色の髪をしていて。

パッと見た時、赤色の頭巾を被っているようにも見えてしまった。

それ以外は全身囚人服の、初心者風な装備のみしか身に着けておらず、言葉通り最近始めたばかりのプレイヤーなのだろう。


他の部分で特徴的な部分だと……何か黒いオーラが身体から時折チラついているくらいだろうか。

恐らくは【ラミレス】辺りの悪魔か何かのモノだろう。

ハロウの知り合いということで警戒は解いておくが、得物に伸ばした手はそのままにしておいた。


「ご丁寧にどうも。私はCNVL、そっちの男の子がマギくんで、ローブひっつかんで顔隠して俯いてる小さいのがメアリーちゃんだね」

「はは、警戒されてるねぇ。あぁいや……確か彼女は初めて会う人とはまともに喋れないんだっけ?これから割と会う機会も多くなるだろうし、徐々に慣れてくれると嬉しいな」


そう言って、彼女はニコリと笑った後にハロウと話があると言って少し離れた位置へと連れて行った。

……うーん、なんだろうな。

赤ずきんと名乗った彼女は、恐らくそのまま初心者なのだろう。

しかしながら、何故か。


私は彼女に対して、ある種の胡散臭さを感じていた。

悪い人ではないのだろう。しかし喋り方というか、彼女の纏っている雰囲気が全てを信用すべきではないと感じさせているのだ。

行動全てに裏がありそうな、そんな感覚。

今見えている部分は虚構であって、見えていない部分に致命的な何かが潜んでいるような。


……何かしら起こらないといいな。

根拠も何もない、初対面の人に対して持つ感想ではないだろう。

しかしながら、私はそう思わずにはいられなかった。


秘密の会話が終わったのか、こちらへと手を振り去っていく赤ずきんの背中を見送った後に。

ハロウがこちらへと帰ってきた。

【菜切・偽】に伸ばしていた手を元に戻す。それをみた他の2人も同じように自然体へと戻り、一応の平穏が戻ってきたことが分かった。


「ごめんなさいね、突然何も言わずに来たから驚かせたみたいで」

「いや、大丈夫さ。リアルの友人だろう?大事にすべきだよ」

『あの人もこれから一緒にプレイするの?(´・ω・)』

「いえ、赤ずきんは1人でも大丈夫って言ってたわ。『君たちの試合を見てたら、私も頑張りたくなってね。まずは1人で頑張ってみるさ』って」


乱すだけ乱して帰っていった赤ずきんはこれからも会うことがあるだろう。

というか、本人が言っていたからにはあるのだろう。

少しばかり個性的なキャラクターがまた増えたなぁと、遠い目をしながら私は空を仰いだ。


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