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ソラとカナタ  作者: たびー


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13/14

ソラ

 それから。

 カナタはよく笑い、よく泣くようになって……。


 数えきれないくらいの年つきを過ごした。


 いま、ドームにはわたしたちしかいない。


「カナタ……」

「なに?」

「今は朝よね。暗いわ。それに雨降りなのかしら。雨があたる」

 ドームの天井はとうに破け落ち、樹海に沈んでだいぶ経つから。

「カナタ、わたしヒドイ格好でしょう? みんなが作ってくれたパーツも使い尽くして。体毛だってもうないし」

「そんなことないよ」

 カナタは膝のうえのわたしをなでた。

「体も動かせない。それに……もうあなたの顔が見えないの」

 ああ、また雨粒。

 わかっている。

 わたしの中の自律システムはもうすぐ止まる。

 そうなったら、カナタ。

 あなたを一人きりにしてしまう。

「八百年くらい?」

「うん」

 一緒にいられたのは。

「あとどれくらい?」

「数万年……それまでもつかな」

 胸の炎はまだ消えない。

 それでもずいぶん微弱になった。施設の発電装置はドームのゲートを固く閉ざすことと、カナタへ電力を送るばかり。

「火星や月へだいぶ移住したから」

 たぶんわざわざここを訪れる人も、襲い来るテロリストもいない。

 そうしたら、カナタは自由になれるかしら。

「先に行くね。待ってる……」

 体が冷えていく。

 あたたかい雨粒が体にあたる。

「さよなら、カナタ。だいすき」


 すべてが……止まる。


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