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第一話


 一日一話投稿予定で、四話完結です。


 いせかーい、異世界の事でした。


 あるところに、とても仲の良い王子様とお姫様がおりました。


 このふたり、18歳になったら結婚をする約束をしていたのですが……



 結婚を一年後に控えたある日の事でした。



 定期的に行われている領外視察を終え、無事に城に戻って来た王子様とお姫様。ふたりは城の中に入ると、足早に王子様の部屋に移動し、今回の領外視察の内容を話し合います。




「東の城国は友好的だったね……」


「南西部遠方に見えた城塞は、気をつけた方が良いですね。後ろにかなりの力を持つ大国がついている、と噂で聞いたことがあります」


「大国かぁ……多分、あそこかなぁ……」




 そこへ、大きな足音を立てながら王子様の部屋に向かうひとつの人影がありました。その人影は、部屋の扉を力強く開けると、お姫様に向かってこう言いました。



「姫! 話がある! 私と一緒に来てもらおうか!!」


「え!? 何ですか!? いきなり!?」



 人影の正体は王子様の父親にあたる、この国の国王でした。

 国王は部屋の中にずかずかと入り、有無を言わさずお姫様の二の腕を掴みます。



「父さん! これは一体どういう事だい!?」


「五月蝿い!! お前は黙っておれ!!」


「王様! 痛い! 痛いです!!」



 王子様は、懸命に国王とお姫様の間に割って入ろうとしますが、国王は、その制止を力ずくで振り切り、そのままお姫様と一緒に部屋を出ていってしまいました。






 玉座の間に移動した国王は、お姫様を床に放り投げると、玉座に身体を預ける様に深々と腰掛け、お姫様を見下すような目をしながら、今流行りの……こんな台詞を口にしました。




「姫よ……突然だが、息子との婚約を破棄させてもらう」


「な……何故ですか!? 急に!?」




 王子様と婚約してから、この国に多大な貢献をしてきたお姫様。よもや、王子様の父親である国王に婚約を解消すると言われて、黙ってる訳にはいきません。


 お姫様は床から精一杯立ち上がり、部屋中に響き渡る大声で叫びます。




「理由をお聞かせ下さい! 理由を!」


「お前が呪われているからだよ!!」



 間髪入れずに言葉を返す国王。手に持った杖でお姫様の身体を指しながら、話を続けます。



「てか、何なの!? その格好!! 何でビキニアーマー着けてるの!? どこで手に入れたの、それ!? 我が国には売ってないよね!?」


「あ、これですかぁ? これぇ、領外視察の時に東の城国で買ったんですけどお、250000ギルドンもしたンですよお♪ 似合いますかぁ♪」



 お姫様は事も無げに答えます。



「似合いますかぁ♪ じゃねえよ! てかそれビキニだよね!! どうみても只のビキニだよね!! なにお前ら、海水浴行って来たの? この辺、海無いんだけど!?」



 顔を真っ赤にさせ憤慨する国王は、お姫様に向けていた杖をビキニアーマーの部分に突きつけ、ぐりぐりと押し付けます。




「つーか、それが呪いの品なんだけど! 国民の血と汗の税金を、なに呪いの品に費やしちゃってんの!? 馬鹿じゃねえの!? お前!!」


「あん♪ 何をするんですかぁ、王様ぁ♪ セクハラで訴えますよぉ♪」


「喧しいわ!!」




 国王は、空いている左手で扉の方を指差すと、お姫様に向かってこう言います。




「とにかく、呪われておる者をこの城においておく訳にはいかん!! 呪われし者よ、出」



 その時でした。



「ちょっと待ってください! 父さん!」



 玉座の間の扉が力強く開けられ、王子様が部屋の中に飛び込んで来ました。と同時に、玉座の間に家来達の悲鳴が木霊します。




「きゃあああ!!! ストリップうぅぅ!!!」

「きゃあああ!!! ストリップうぅぅ!!!」

「きゃあああ!!! ストリップうぅぅ!!!」



「おまえぇーー!! パンツ一丁でここまで来たのかあぁ!? 姫と言い、お前と言い、王族としての自覚はないんかあぁ!?」




 しかし、王子様は全く臆することなく右手を腰に当てると、毅然とした態度で国王に言葉を返します。




「何を言ってるんですか! 僕達が領外視察で手に入れた衣服を試着して楽しんでいた所に、部屋に飛び込んで来たのは父さんの方じゃないですか!」



 そうなのです。部屋で領外視察の内容を擦り合わせようとした王子様は、ついでに、その時手に入れた洋服の試着を、お姫様と一緒に楽しんでいたのでした。




 王子様は、人差し指を国王に向かって勇ましく突き出し、話を続けます。




「それよりも父さん! 話は全部聞かせて頂きました! 姫が呪われている程度で城を出ていけとは、あまりにも横暴ではありませんか!?」


「何を言うとるか、お前! この国には『如何なる理由があろうとも、呪われし者の立ち入りを禁ず』という法律があるのを忘れたかぁ!?」




 国王は、法律を楯に王子様を捩じ伏せようとします。その横で、お姫様は「え!? 初耳!?」と呟きますが、王子様は聞き流しながら話を続けます。




「分かりました、父さん……そこまで言うのなら……」




 王子様はつかつかと国王の目の前にまで歩いて行き、お姫様を国王から取り戻す様に自分の胸に抱き締めます。




「僕も彼女と一緒にこの城を出て行きます。そして、彼女にかけられた呪いを解き、いつか、この城の敷居を正々堂々と跨いで見せましょう!」


「いや、解いて来るも何も……そもそも、姫が部屋でビキニアーマーを着けなければ、こんな面倒臭い事にはならなかったんだけど?」



 そもそも論を語る国王に耳を傾けず、王子様はお姫様の肩を抱いて、扉に向かって歩いて行きます。



「では、お姫様。参りましょうか……? 長い旅になると思います……」


「あ、あの……私……王子様とふたりきりなら、一生このままでも……♪」



 肩を寄せ合いながら、玉座の間を出ていく王子様とお姫様。そのふたりの背中に、国王の怒号が飛び交いました。



「せめて、着替えてから行けええぇぇーー!!」



 こうして、お姫様の呪いを解く、王子様の旅が初まりました。


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