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正道こそ王道  作者: マスター
03.学院
32/66

31:一度ある事は二度ある

今週もセーフ><

23時過ぎに予約投稿して、満足する作者がここに居る。


 エスカロリオは、地下用水路の制御室という安全地帯から自らの死霊魔法で使役する複合生命体を悠々と操作していた。安全地帯から、確実に敵を葬るスタイル、コレがエスカロリオの必勝パターン。


 エスカロリオが獲物を追い立てる最中、制御室にダオスも入ってきた。


「ふむ、もう少し致命的なダメージを与えられるかと思ったが、探索者は生命力が高いね」


「当の本人達が一級探索者並の実力を有していると言っていたからな。それに、装備も良い物を付けている。そのおかげであろう」


 ダオスは、壁に立てかけておいた法天エンプレスを手にし、血塗られた三日月刀の手入れを始めた。最低限の整備を行った後に、プロの鍛冶屋であるミーミルに整備をして貰う予定なのだ。


「今回の複合生命体は、なかなか良い出来だっただろう。人間の素材を組み込んだオカゲで、操作精度も爆発の威力も2割増だ」


「通信機能も兼ね備えている当たり、非常に有益だ。だが……識別機能に難があるのが玉に瑕だ。無差別は厳しい」


 ダオスが撤退した理由の一つがこれにある。


 死霊魔法とは、本来、人を材料に使う事でその真価を発揮する。だが、それでは芸が無いとエスカロリオは虫や小動物を材料に使った死霊魔法の研究に着手したのだ。"(ちか)い"という常識から外れた力に加え、天災と名高い頭脳だからなせる合わせ技だ。


「認めよう。だが、人気の無い閉鎖空間における有用性は証明できただろう。事実、想定通り追い立てている」


 エスカロリオの手腕により、ジワジワととある地点へ追い立てているのだ。自爆機能を兼ね備えた無数の虫や小動物の姿をした異形の生命体が迫ってくれば誰だって逃げる。生理的に受け付けない容姿をしており、その効果は抜群だ。


「わかった。私もその地点に向かう。エスカロリオは、引き続き誘導に加え、密な連絡を。それと、そろそろテロ鎮圧部隊も地下用水路に来る可能性が高いから時間稼ぎをしてくれ」


 ダオスは、通信用の複合生命体を一体受け取り腕に巻き付けた。


 制御室の扉を開けて、ミーミルが網を張っている場所へと走った。


 『ゴスペラーズ』において、近接戦闘最強を誇るミーミル。不老不死という特性も相まって、同性という条件下ならば13使徒とも十分にやり合える存在なのだ。だからこそ、真っ当な殺し合いならば心配する必要など全くない。


 しかし、唯一懸念すべき事がダオスにはあった。


 アインバッハ達が『ジェネシス』に救いの手を求めるために、対価として差し出す予定の宝玉だ。その詳細までは調べきれなかったのだ。色々な場所にツテがあるダオスではあるが、今回に限って言えば時間が無かった。


「つまりだ、ミーミル。切り札なんぞ、使われる前に無力化するに限る。そう思わないかね」


【言われずとも、そのつもりよ。あぁ~、足音が聞こえてきたわ。じゃあ、早いとこ、全員引っ捕らえて領事館に行くとしましょうか。でさ~、話は少し変わるんだけど~、私のフル装備一式のクリーニング代金って誰持ち?】


 エスカロリオの通信機能を持つ複合生命体を通じて二人がやり取りをしている。


 ダオスは、ミーミルのその言葉を聞いて頭の中で高速で計算を行った。当然の事だが、冗談で言っているのだ。全員が率先して地下用水路に足を運んだのだ。ダオスが依頼したわけでも無い。


「そんなの決まっているだろう。テロリスト達の身ぐるみを剥いだ金でクリーニングだ。だからといって、無理に原型を留めておく必要は無い。最悪、修理して裏で売る」


 例え、ミーミルの力によって砕け散ろうとも一流の鍛冶屋でもある彼女が修理できる。そして、ダオスがブラックマーケットで売りさばくのだ。アインバッハ達の装備欲しさに手抜きをして、逆にやられてしまっては話しにならない。



◇◇◇


 地下用水路の水路の合流地点。他の場所より広く天井も高い。


 そこで、ミーミルは、静かに時を待っていた。既に、強化魔法もかけ終えており、いつでも殺し合える準備が出来ている。ミーミルが持つ国宝級の戦斧ニトクリス……持ち主の血肉を喰らい性能が跳ね上がる代物だ。不老不死の特性と極めて相性が良く、一騎当千の力を発揮する。


「そろそろかな」


 エスカロリオの死霊魔法で操られている虫や小動物の爆発音がハッキリと聞こえてきたのだ。アインバッハ達にしてみれば、泣きたい状況であろう。


 従者の一人は、両手と片足を失い重傷。もう一人の従者もエスカロリオが使役する死霊魔法の対応で一杯一杯。そもそも、死体を操る死霊魔法なのだ。使役されているモノを止める方法など、完全消滅させるしかない。"嵐槍(ストーム・ランス)"のような鋭く殺傷能力が高い魔法では不向きである。面制圧が可能な魔法が理想的だ。


 ついに、アインバッハ達がミーミルが待つ地点に追い込まれた。


 お互いが警戒を露わにする。


「罠か……ミッシェル。やれるか」


「命がけで数分なら」


 睨み合う中、先に動いたのはミーミルであった。


「ミーミル・ギャランドゥ――『ギャランドゥ』の第24王女だ。他国の王女が名乗っているのに、頭が高いとは思わないか。『リネックス』の元王子にして現テロリスト」


 ミーミルの言い分は、正しい。


 力ある大国の王女が名乗りを上げているのだ。それに対して、武器を手に持ち頭を下げないとは大きな問題だ。これが対等な国力のある国家の場合は別であろう。『リネックス』という中途半端な力しか無い国の旧政権の王子とは、何もかもが違う。圧倒的に格上の存在が名乗りをあげた事に対して、頭すら下げずに生返事など礼儀がなっていないに等しい。


 普通(・・)は。


 ミーミルの名乗りに対して、アインバッハ達は考えた。『ギャランドゥ』の力を借りれれば、『ジェネシス』のような犯罪組織に手助けを依頼せずとも、何とかなるのでは無いかと。どうせ手を組むなら、犯罪組織より正式な国家の方が遙かに都合が良い。


 血盟戦を観戦していたアインバッハ達は、目の前に立つ存在が正真正銘の王女である事を知っている。その為、藁にもすがる思いがあった。ダオスやエスカロリオの追撃がいつ始まるかも分からない最中、『ゴスペラーズ』の一員でもあるミーミルに助力を請えれば追っても止まると考えたのだ。


 その考えは正しい。ミーミルが『リネックス』の旧政権に力を貸すと言えば、ダオス達も手を止めるだろう。


「失礼しましたミーミル王女」


「失礼致しました」


 アインバッハ達が頭を下げた。この瞬間、僅かにでも残っていた勝利への道が途絶えた。どのような人間であれ、何かを行うには動作が伴う。頭を下げるという動作をした以上、他の動作を行うまでに切り替えるタイムラグが生じる。


 ミーミルが戦斧から手を離した瞬間、馬鹿みたいに強化された身体能力でアインバッハに詰め寄った。そして、アインバッハが懐に隠し持っていた小箱を強奪した。その中には、『ジェネシス』との交渉材料にする宝玉が収められている。


「ダオスの時もそれで先手を喰らったよね。同じ手に二度も掛かるなんて、学習能力がないんじゃないの」


「それは、我が国のっがぁぁぁ!!」


 奪われた品を取り戻そうと、ミーミルに手を伸ばしたアインバッハ。だが、その手は決してミーミルを捕らえる事はかなわない。伸ばして来た手に対しミーミルは、軽くジャブを打ち込んだ。その威力は、想像を絶する程でアインバッハの腕の骨を粉砕するに足りるだけの威力を秘めていた。


「アインバッハ様!! 王女とはいえ、許さないわ」


「許さない? それは、こっちの台詞よ。可愛い妹分を殺され掛けたのよ。今すぐにでも、皆殺しにしても良いのに、生かしてあげているんだから感謝して欲しいわ」


 アインバッハとその護衛のミッシェルは、ミーミルの言葉からある事を想像した。殺せない又は、殺さない理由があるのではないかと。それをダシに交渉すれば窮地を脱出できるのではないかと。


 だが、アインバッハ達は思い出した。ダオスが放っていた濃厚な殺意を。そして、正解に至った。


「アインバッハ様。イーリアを捨てて法王庁へ逃げ込んでください。この者達……決して、私達を生かしておく気はありません」


「……その方が生き残る可能性が高いと言うことかミッシェル」


 法王庁から『リネックス』に罪人として送られた方が幾分か生存の可能性が高いのは間違いない。ダオス達は、100%の確率で殺す気で居るのだから。


 アインバッハは、背負っていた護衛のイーリアを捨てた。この時点で、重傷から死体(・・)へと変わったのだ。重傷をおって、ここまで長く生きながらえたのもアインバッハが回復魔法を継続的に掛けていたオカゲであった。それを、止めたのだ。自らが逃げることに全力を出すために。


「別に来た道を戻っても()は、追わないわよ。"(ちか)い"の制約で私を倒せる唯一の駒がここから逃げ帰るなら止める理由もないしね」


 今にも、アインバッハが逃げ帰ろうとした時、進行方向から黒ずくめの白い仮面の男が一人杖をもって歩いてきたのだ。


「ミーミル。テロ鎮圧部隊が突入してきたとエスカロリオから連絡があった。直ぐに終わらせるぞ。エスカロリオも分かっているな」


 ダオスの声に反応し、アインバッハの護衛であったイーリアの死体が起き上がった。失った手足には、虫や小動物の死体が融合し人の形を保っている。


【ダオスは人使いが荒いね。分かっている】


 イーリアから発せられるエスカロリオの声に驚愕するアインバッハ達。その最中、ダオスが法天エンプレスに魔力を通わし、開幕の一手を放った。

学院編なのに地下用水路編みたいになった気がするが問題無いよね@@

学生は出てるし……敵側として。


そろそろ学院編も終わるけど、次は「勇者編」というのもありかと思った@@

王道なら勇者もありかなと。

勇者を狩る者……ダオス!!みたいな。


それとも、前に後書きで書いた、「新人勧誘編」「人型モンスター編」「守護者編」などになる可能性も。

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