表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正道こそ王道  作者: マスター
02.閑話1
22/66

21:正義執行


 ダオスは、1級モンスターが出現したという場所へバルブリエルと一緒に向かった。そして、想像を絶する光景を目にしたのだ。タワーで探索者家業を長いダオスでも、滅多にお目に掛かったことがない光景が待っていた。


「……生態系を無視して出現するとはいえ、レアなモンスターだな」


「そうね~。どうせ、珍しいのが出るなら人型モンスターが欲しかったわよね」


 ダオスは、全くその通りだと思った。


 タワー内部だというのに潮の香りが漂っている。海が生息域である1級モンスターのクラーケンが道を塞いでいるのだ。モンスターが魔法を使い、生存するために大量の海水を生み出している。


 10mを超えるイカがタワー内部で陣取っている様子は、まさに奇妙な光景だ。


「あれも捕獲対象かな?」


「そうね~。売り物としては、使えないから晩ご飯にしちゃいましょうか」


 バルブリエルの一言で周囲にいた者達からも喜びの声が上がる。『ハイトロン法国』の首都は、海までの距離は遠く、海産品などは高値なのだ。まれに、タワー内部で海洋系のモンスターが出現し、出回ることもあるが食用可能なモンスターは本当に少ない。


 海上でクラーケンと戦うのは、危険だが陸地では話は別だ。クラーケンは、環境を維持するので手一杯。まさに、鴨が葱を背負ってくるとは、この事だ。ダオス達の晩ご飯になるために遣わされたようなモンスターなのだ。


「捕獲後の解体作業には、私も参加させて貰おう」


 モンスターを解剖する事で、構造を理解し効率よく状態異常魔法を行使する。その為に、ダオスはクラーケンも自らの手でバラしたいと考えていた。ここまで完璧な形でクラーケンをお目にかかれる機会は早々無いからだ。


「いいわよ、じゃあ、サポートをよろしくね。いくわよ――沈め"重力(グラビティ)"」


 ダオスは、バルブリエルから距離を取った。


 バルブリエルの周囲の物質が軋み悲鳴を上げる。増大する重さに耐えきれなくなり陥没する。バルブリエルを中心として発動している攻撃魔法―"重力(グラビティ)"。効果範囲内にある物質の質量により消費する魔力が増大するこの魔法は、圧倒的な魔力を持つ者で無いと実用できない。


 対象に直接的なダメージは発生していない。増大した重さに自らが耐えきれなくなり、自分から臓器を押しつぶしているのだ。故に、ダメージ反射は、発生しない。魔力の消費量という問題が解決できれば、タワー攻略が捗る魔法である。


 だが、クラーケンも1級モンスターだ。深海など水圧の高い環境に生息している事もあり、バルブリエルが放つ"重力(グラビティ)"でも目に見えた効果がない。


「他のモンスターと違い効果が薄いのかな。まぁ、その為の私だ。守りを頼んだぞ」


 "重力(グラビティ)"の効果を受けて、身の危険を察しクラーケンが大暴れしている。落下してきた天井や壁をゲソで掴み、ダオス達に対して投擲を始める。当たれば、大惨事は間違いない。人間サイズ大の岩が殺人的な速度で飛んでくるのだ。


 だが、ダオスは逃げも隠れもしていない。なぜなら、ダオスを守る壁が居るからだ。守備専門の『アッーーーメン』の探索者。普段は、強化魔法と回復魔法を得意とし、血盟主を守る者達――双璧のジェミナスと呼ばれる双子だ。


「石ころ一つ通しませんのでご安心を」


「バルブリエルの援護をお願いします」


 ダオスもその言葉に安心したいのだが、いささか不安があった。この双子は、過去にバルブリエルに命を救われた事があり、彼を崇拝している。だからこそ、彼に少しでも近づこうと恰好かっこうまで真似まねているのだ。


 そのたくましい肉体一つで飛んでくる石を粉砕すると言っているのだ。ダオスとしては、重量感たっぷりの鎧を着込むとか、ドデカい盾でも持っていてくれれば安心感があるのだがと考えてしまう。。


 文字通り体一つで自らの盾となってくれる者達に不満など口にするダオスでは無い。だから、ダオスは早々に安心を得るために、全力を持ってサポートに当たる。


「当然だ。その為に、私は高い金で雇われている」


 法天エンプレスがダオスの魔力に呼応する。


 クラーケンが、ダオスの存在に気がついた。そして、次の一手を打たれたら自らが死ぬ可能性がある事を本能的に察したのだ。バルブリエルの"重力(グラビティ)"をギリギリ耐えて、岩を投げる事で敵の接近を防いではいる現状の均衡が崩されると。


「ギィィエ゛ェェェェェェーーーー!!」


 クラーケンの叫び声と共に、後方に居るダオス達へと攻撃が集中し始めた。


「ちっ!! "防御力低下(アーマーブレイク)"」


 ダオスは、対象をクラーケンから岩へと変更したのだ。自身に飛来してくる岩の数が急増した事を察し、即座に目に映る飛来物の耐久度を激減させた。


 事実、この咄嗟とっさの判断は正しかった。


 如何いかに、双璧のジェミナスといえども限界を超えた物量でこられては防ぎきれない。ダオスを守るという条件が無ければ受け流す等で対応も出来ただろうが、護衛対象が居る以上そうもいかない。


「あっら~、しぶといわね。このままじゃ、うちの可愛い子達にも被害がでるじゃない~。本気を出すわよ!!」


 離れていても肌がピリピリするような感覚。誰しもが、バルブリエルの実力を肌で感じた。13使徒候補に挙がったのは伊達じゃ無いと。


 ズドンズドンと天井からの落下物が増大していく。


 "重力(グラビティ)"の影響が増したせいでクラーケンが対応出来ないほどの落下物で、ついに押しつぶされた。その後もどんどん落ちていき、ついにはその姿が見えなくなる。


 だが、クラーケンは生きている。痛覚が無いとまで言われ海洋系のモンスターは、非常に死ににくいのだ。


 だが、攻撃が止んだ瞬間を見逃すような未熟者は誰も居ない。


「早々にディナーになれ。"防御力低下(アーマーブレイク)"」


 ダオスの状態異常魔法がクラーケンを襲う。"重力(グラビティ)"と相まって、どんどん平たく長く伸ばされていく。痛覚が無く生命力があるモンスターでも、内蔵が全損するほど押しつぶされては、生きる事はできない。


「ふぅ~、死んだかしらね。いやね、魚介類のしぶといから」


 全員無事でクラーケンを処理できた事により『アッーーーメン』から歓声が上がる。その功労者の一人であるダオスも周囲から感謝の言葉を貰う事になった。ついに、彼らの誰もがダオスを仲間の一人と認識したのだ。


 なぜなら、飛来してくる岩に、"防御力低下(アーマーブレイク)"を掛けて仲間を守る事に全力を尽くした光景を目撃していたのだ。ここまでの働きを見せたダオスを仲間と思わない薄情者は紳士の血盟である『アッーーーメン』には存在しない。



◇◇◇


 ダオス達は、タワー8階まで上り、折り返し地点に到達した。


 檻は、既に半分以上埋まっており、狩りが順調出会ったことを示している。そして、ここで、生き餌の出番だ。『アッーーーメン』一同が英気を養っている間に、最初にして最後の出番が来るのだ。


 だから、最後に生き餌に声を掛ける。


 ダオスは、人の最後を看取る経験は、安楽死のアルバイトで沢山見てきた。だが、生き餌となる者達が最後に何を思うか純粋に知りたいと思ったのだ。今まで、人様に迷惑を掛けてきた者達が、役に立つのだ。その心の内を知る良い機会だと。


 資格マニアのダオスは、カウンセラーの資格も取りたいと目論んでいる。その為、サンプルとして是非、罪人が死ぬときの思いを知りたいと思っている。


 それをこれから生き餌になる者達に素直に話したのだ。


「そういうことで、是非今の心境を教えて欲しい。君達の死が一人でも多くの者に役に立つのだ。是非、忌憚の無い言葉が欲しい」


「……」


 生き餌の体調管理などを率先して、行ったダオスではあるが、生き餌は心を開いていなかった。


 ダオスが彼らを見る目は、養殖場の豚を見る目と同じなのだ。清く正しく誠実に生きるダオスにとって、犯罪者を同じ人間だとは決して思っていないのだから当然だ。一般人と同じ目線で生き餌を見てしまっては、犯罪者以外の人類に失礼であると本気で思っている。


「はぁ~、黙りか。カウンセリングの才能はあると思っていたんだがな。まぁ、仕方ないか。じゃあ、私からの最後の差し入れだ。味わってくれよ」


 ダオスは、数日前に手に入れたクラーケンの身の一部を彼らに提供した。犯罪者達は、昨日から何も口にしておらず空腹だ。死を間際にしても、腹は減るのだ。空腹は、最高の香辛料。例え、アニサキスが寄生している身の部分で合ったとしても美味しく食すだろう。


 ダオスは、人道的な医者である。医師として、この寄生虫がどの程度、強力な物なんか知る必要があった。その結果を纏め、義弟に託す事で救われる人が沢山生まれるかも知れない。だからこそ、人権が無い犯罪者を使って試すのだ。まさに、理想的な医者である。


 犯罪者達が空腹から飯に手を掛けた。その中で、『メイデン』の者が一人、クラーケンの身をよーーく見ている。そして、気がついた。


「っ!! 食べてはなりません皆さん。これは、寄生虫がおります。食べれば、激痛で最悪死にますわよ」


「気がついたか。だが、どうせ明日には死ぬ身だ。激痛に悩まされたところで、問題無かろう?」


 ダオスの正論に、犯罪者達が驚愕の顔をする。しかし、ダオスにしてみれば、明日死ぬのだから毒入りだろうが飯を食うべきだと考えていた。


「ふ、ふざけるな!! 何様のつもりだ」


「俺達を何だと思ってやがる。牛や豚じゃねーーんだぞ」


 彼らの発言に、ダオスは、確かにと思うところがあった。犯罪者から諭されることになるとは、世の中分からない物だとダオスは頷く次第だ。


「そうだな。貴様等と家畜を一緒にしたら家畜に失礼だな。そもそも、飯を与えるじゃなくて、喰わせれば良かったと――"飢餓(ハンガー)"」


 ダオスが放つ強力無比の状態異常魔法が犯罪者達の空腹感を促進する。目の色が変わり、寄生虫入りのクラーケンの身に手を伸ばし始めた。理性で抵抗しようにも、本能には勝てない。


 その様子にダオスは、少々効果がありすぎたと感じてしまった。このままでは、犯罪者同士で食人祭りが始まりかねない。


「お代わりは沢山ある。好きなだけ食べるといい」


 犯罪者達は、一時の満腹感と引き替えに、死ぬ直前まで激痛に悩まされることになる。だが、彼らに寄って苦しめられた被害者達にしてみれば当然の報いだというだろう。


 被害者達の家族からしてみれば、ダオスを正義執行者と崇め、感謝する事は間違いない。


ネタの神様が舞い降りないかと思うこの頃><


10万文字超えたら、HJネット小説大賞に応募してみるお!!


PS:

GW中は、色々あって、投稿投稿予定は未定となります。

※具体的には、来週と再来週@@

ごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ