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日常日記  作者: 七宝しゃこ
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髪の毛がワシャワシャ。

「困った……」


髪の毛が伸びたのである。

元々はストレートだったのだが、中学校時代に円形脱毛症どころかカッパハゲになり、それから生え変わった髪はうねるようになった。

しかし、前髪はストレートのまま、後頭部のみ激しい天然パーマである。

ショートカットから伸び始めると、肩につく前まで伸ばすと朝から寝癖と言うよりもお笑いの爆発ヘアのかつら状態、フワフワと言うよりもモサモサになる。

それぞれが自分勝手に髪の渦を作り、絡まり始めるのである。

その為、毎朝頭を濡らし、ヘアワックス等で癖毛を生かしていた頃もあるが、今は面倒なのでヘアミルクで艶を出す程度にしている。

前は、母の従姉妹が美容師だったので、そのお店に行って切って貰っていた。

毎回伯母には、


「はりちゃんは、おじさんとおんなじやなぁ……おじさん……はりちゃんのじいちゃんは癖っ毛やったけんねぇ」

「……じいちゃんってパーマ当てとったんやないん?」


祖父の顔は忘れたい。

瓜二つの大叔父には申し訳ないが、記憶から削ぎ落としている。

中学以降、祖父の仏壇は祖母の部屋にあり、遺影も多分そこにあった。

多分と言うのは、仏壇に手を合わせたのは数回だからである。

同じ建物に住んでいても、階が変われば玄関も違う。

祖母の最晩年は、同居する叔母が鍵を閉め、祖母に会わせてくれなかった。

いや一回、ボケた祖母が、玄関の10センチの段を転落し、悲鳴をあげていたので助けると、手を振り払われた。

ボケていた祖母は孫娘の顔は忘れてしまい、兄嫁のことは覚えていた。


その程度の関係である。

それよりも、毎回顔の覚えていない祖父は、当時では珍しい、叔母の美容室で髪をカットし整えていた。

その為、パーマを当てていたのだろうと思ったのである。


「違うわ。おじさんは天然パーマ。みっちゃんも癖毛やけど、遺伝やねぇ」


みっちゃんとは、母の愛称である。

そんな遺伝いらん……もとのストレートが戻れ~!

その方がまだましや~!

と、ワカメにひじきにと当時の髪にいいものを食べたのだが、全く元に戻らず、伸び始めると縦ロールになり肩につく頃にはウィーン少年合唱団の金髪のフワフワの少年風になる。

ちなみに、濃い茶色の髪は途中から毛先の色が抜け、昔流行ったプリンカラーになる。


そして、髪質が変わってしまった為、細くて毛が少ない……ストレスでその後も500円ハゲが発生していたので、薄毛でこし艶がないと思っていたのだが、最近になって、看護師さんに、


「髪の毛多いねぇ?透いて、そのパーマを生かしたら?」


と言われ、ビックリした。


「えっ?私、髪の毛多いんですか?」

「多いやん。それに、太いし。髪も染めとるんやろ?」

「いえ、前に、ピンクローズ系に染めたきりで、あのあとは全く」

「じゃぁ、その金髪は?」

「いやぁ……伸ばすと色が抜けるんですよ。思いきって金髪に色を抜こうかと思ったんですけど、この年で、金髪も……」


アハハ……


と笑う。


「白髪染めは?」

「友人達はよく、白髪を染めないとって言うんですが、昔よりも少ないんで。一本くらいかな?」

「……羨ましいわ」


私より年下の、美人系の看護師さんである。

お仕事ご苦労様と心で思う。


「これで多いんですか……う~ん」

「少ないとおもっとったん?」

「いえ、兄弟の中で一人だけ茶系で、細くて少ないと思ってて……他の兄弟は真っ黒の毛です。あ、弟だけは癖毛ですが真っ黒ですよ。あ、兄弟、白髪が多いです。で、時々、弟と買い物にいっていたら、妹と間違われました」


事実である。




何度か家族のことなどで実家を行き来していた頃、弟の同僚に会い、


「あれ?お前、妹おったんか?この間は姉ちゃんやったやろ?あれが噂の姉ちゃんか?」


と弟に聞いていた。

弟は毎度のことと、


「こっち、噂の姉ちゃん。上。こないだのも姉ちゃん、下。年子。これでも俺より3才上」

「……お前の方が老けとる。マジで年齢未詳やなぁ。前の姉ちゃんはお前の兄ちゃんに似とるけど、今日の姉ちゃんは小動物系?あぁ、お前もそうやけど、親父さんに似とるわ」


一応、父方に似た顔だけはホッとしている。


「化粧しとるのに童顔」

「いえ。素っぴんです」

「は?シミとか?」

「あるー?最近鏡見てないんよ」


弟に聞くと、遠い目になり、


「ないわ。と言うか、姉貴。女の子棄てんなや。肌が弱いけん、化粧はできんでも、鏡みぃや」

「えぇぇ?面倒。こんなぶっ細工な顔見るんやったら、歴史事典とか読むか、テディベア作るわ」

「それに、髪の毛も何とかせんと……」

「えっと、顔洗うときに頭も濡らして、タオルで拭いて櫛とおして、ジャーン!」

「ジャーン!じゃないわ!もっと身だしなみに気を配ってくれや、頼むけん!」


弟の言葉に、


「今さら何を。去年までの古着やないで。安いお店ではあるものの今年の流行の、前より後ろの長いロングのワンピースに、その上に夏用の長袖カーディガン。パンツもラフなのに決めとるがね」

「頭や!顔や!」

「ぶっ細工はこれ以上良くならん。諦め。整形手術はせんけんな。そんな金ないし」

「くぅぅ……アァ言えばこう言う!」

「昔流行語にあったなぁ……」

「古いわ!言うな!」


と言い合いをした。

思い出すとあれだが、それよりも、


「実家の毛もじゃのジャック・ラッセル・テリアも伸び始めたら、シュナウザー並みになるし……同じように爆発ヘアのままでいるか……」


頭をかき回しながら、呟く。

伯母がバスを降りたとたん原付に撥ね飛ばされた事故の後遺症のため、杖をつき、美容師の仕事の時も座ってしなくてはならなくなり、閉店した。

それからは、美容院にかかることもほぼなくなった。


一回ハゲを経験すると、頭部を人にさらすのは極端に怖い。

伯母だったからまだ我慢できた。

でも、伯母がやめた後、紹介され数回通ったことはあるが、怖くて行けなくなった。


「……昔みたいに、前髪を伸ばしてワンレングスにしようかな……今は目までかかってるし、顎までそんなに気にならないし。後ろは自分で切るか……」


夏は暑いが、モサモサヘアとおさらば出来そうにないのだった。

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