表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常日記  作者: 七宝しゃこ
65/180

100円の価値

散歩をしていた。


そう。ただの散歩。

大通りの歩道を歩いていたのだが、一人のおばあちゃんが立っていた。


亡くなった私の祖母に似ていた……。


何か車道に身をのりだし、必死に手を振っていた。


最初は横断歩道に近いので、向う側に知り合いがいて手を振っているのだと思い、横を通り抜けようとした。

しかしその寸前に、おばあちゃんの目の前の道路を通ったタクシーを見て、悲しそうに手が下に向いたのが見えた。

表情もとても辛そうで、とっさにUターンして、


「すみません。タクシーを止められたいのですか?」


と、顔を寄せ聞いた。


祖母は、私を無視していた。

いないふりをした……。

もしかしたら、無視されるかもと思った。


すると、おばあちゃんは耳を指差し、


「耳が聞こえんのよ」


と、やさしい声でいってくれた。

私は手話ができない。


『タクシーを呼びたいのですか?』

『どうしましたか?』


が、伝わらない。

周囲を見てもタクシーは見えなかった。

はっと、先日登録していた近くのタクシー会社の電話番号をだし、おばあちゃんに画面を見せた。

そして、タクシーと言う部分を示し、受話器を耳に当てるしぐさをした。


「タクシーを呼んでくれるの?」


私は頷き、電話を掛けた。

すぐに電話は繋がった。


「もしもし。先日利用した者なのですが、車を一台お願いします」

『どちらにでしょうか?』

「えっと、コンビニの……」

『どこのコンビニでしょう?』


コンビニは色々あることを忘れていた。


「すみません。○○通りの、居酒屋さんの前です。乗るのは私ではなく、耳の不自由な方で、一緒に待っていますのでよろしくお願いいたします」

『解りました』


電話が切れたので、おばあちゃんに、


『呼びましたよ。待っていましょう』


と伝えようと思ったものの、伝える方法は、車道を指差して、


「あっち側からこう回ってくるので、待ちましょう」


と指差すのを繰り返した。

それで、通じたのかホッとした顔をした。


しばらくすると一台タクシーが通り、


「あれ?」


と聞かれ、電話した会社ではなかったので首を振った、そして、その2台後ろに多分呼んだタクシーと思われるタクシーを見つけ、


「あれですよ、あれ‼」


そっと背中に手を乗せ、指を示した。

タクシーの方向指示機がこちらを示している。


車が曲がって私たちの前に止まった。

扉が開き、


「お客様ですか?」

「電話を私がしました。乗られるのはこの方ですが、耳が不自由だそうです。どうぞよろしくお願いします」


と運転手さんと話すと、おばあちゃんに乗って貰うように勧めた。

すると、


「あ、荷物は大丈夫?」


と、こちらを心配してくれ、その上私の手を取ると、100円を乗せた。


「えっ?良いです‼良いですよ⁉」


返そうとしたが、にこにこと笑いながらなぜか、


「だんだん、ありがとう」


と手を合わせられた。

そして、タクシーに乗ったおばあちゃんは、行き先を書いた紙を運転手さんに見えるように差し出し、再び私に向かって手を合わせニッコリと笑った。

扉がしまり、ゆっくり走り出した車を手を振って見送っていた。




100円が、とても温かく、重く感じた。

それに、胸が温かくなった。


『一期一会』


この言葉を本当に強く思えたのだった。

今日のことです。

この100円を……と言うよりも、出来事を心にとどめ、大事にしたいと思います。


手話を習いたいです。

それと点字を……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ