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36 デート

 窓から朝日が差し込み、小鳥が賑わい始め新しい朝を迎える。


 ソプラとベットを共にしたが、隣で無防備な寝顔を見ると変に緊張してしまい、いつも完璧な仕事をしてくれる睡魔が仕事してくれなかったので結局眠れなかった……。


「んっ……ふぁ〜。おはよ、アルトちゃん」


「あぁ……おはよう、ソプラ」


「早起きだね〜。私まだ眠いよ。久しぶりのベッドは気持ちいいね〜」


 そう言いながら再び目を閉じて二度寝に入るソプラ、よく寝れてよかったよ……俺は一睡もしていないけどね。


 二度寝に入るソプラを起こし身支度を整えて一階に降りるとサコさんが朝食を用意してくれていた。


 朝食はチーズの乗ったパンと紅茶だった。流石に和食は無いよな……。


 結構早起きだったつもりだがミーシャはもう出かけていた。サコさんから聞いたが、久しぶりなので古い友人の所を回るらしい。


 朝食を食べているとドーラも降りてきた。


「ドーラおはよう」

「ドーラくんおはよう」

「……あぁ……おはよう」


 ドーラは明らかに寝不足で何かに怯えている様子だった。しかし、理由はあえて聞かなかった。


 朝食を食べ終え、俺とソプラも外へ出かけた。


 まずは明日の試験会場の下見だ、王都は広いし始めてくる場所だから試験会場の場所を事前に確認しておなかければならない。

 もし遅刻したりして試験を受けれなかったら、何のために来たか無駄になってしまう。俺は意外と慎重派なんでね。



 * *



「おぉ、でかい建物だなぁ」

「本当、大きいね!」


 試験会場は王都に5つある学校の1つで、木造5階建の立派な建物だった。学校の周りは広いグランドや訓練施設が建っているようだった。


 学校と言っても殆ど貴族や商人、王国騎士の子供なんかが通う所だった。

 まぁ平民は高い授業料が払えないだろうからしょうがないか。


 試験は校舎の横にあるグランドで行うようで試験官らしき人が明日の試験の準備をしていた。


「アルトちゃんは明日ここで試験だね、どう? 緊張する?」


「う〜ん。なんか実感わかないなぁ……。ちょっとは緊張してるけどね。まぁなるようになるさ!」


「ふふっ、アルトちゃんらしいね」


「さて、下見も終わったし。王都見物に行こうか!」


「うん! 行こう!」



 * *



 時間的にはお昼の少し前くらいだろうか。試験会場の下見を終えて、俺たちは王都の商店が並ぶ通りに来ていた。


「すごいね! 見たことない物がいっぱいあるよー! あっ! あの服かわいい! こっちの髪飾りも素敵!アルトちゃんこっちこっち! 早くぅ!」


「はいはい! お店は逃げないからゆっくり行こうよ……」


 ソプラがいつになくはしゃいでいるので絶賛ショッピング連れ回しを受けている。おぉ……デートです。まごう事なきデートです。


 世のリア充はこれを苦行と言っているらしいがソプラのこのはしゃぎ様と笑顔は

 何物にも変えられない。


 青目で人目をひかない様にひっそりと暮らしていたソプラにとって、指輪で瞳の色を変えているものの、これ程人目を気にせず街中を歩くのは新鮮な筈だ。


 うん、シーラに相談して良かった。


 ちなみに、俺も買いたいものがあった。ここ王都ならば料理に使えそうな調味料が豊富だと思っていたからだ。


 ベルンでは近隣で取れる臭み消しの数種類のハーブと塩くらいしか調味料が無い。料理が得意とは言え調味料が無くてはレパートリーが増えない。


 しかし、期待をしていた調味料の類いは諦めざるを得なかった。


 なにせ、存在を確認し求めていたショーユだが、小さい商店には置いておらず、かなり大きな商店に行ってやっと見つけた。


 それが厳重に見張りがついた棚に置いてあり、小さい瓶1つで白金貨5枚だった。他にも胡椒や味噌まであったが軒並み少量でも白金貨2〜3枚だった。


 買えるか!! こちとら貧乏教会でカツカツなんだぞ!頑張って貯めたお小遣いが足元にも及ばねぇよ! ちくしょう!


 それでもベルンでは買えないハーブ類や唐辛子、ちょっと奮発して砂糖などを購入した。これで結構作れる料理の幅が広がってソプラに美味いもの食べさせてあげられるよ。


 でも、ショーユって高いんだな……サコさんが作ってくれた炒飯には隠し味程度って言ってたけど、それでも結構な金額になるぞ……。


 下手すると炒飯一皿だけで平民の一世帯の月収にもなりそうだ……。サコさんには後で本気の感謝の意を伝えておこう。


「アルトちゃん、また難しい顔してるよ?」


 俺が考え事しながら歩いていたらソプラが顔を覗き込んできた。


「あぁ……ごめんごめん。ちょっと考え事してた」


「本当は明日の試験の事で緊張してる?私も受けるはずの試験だったのに私だけ試験免除だなんて……なんかアルトちゃんを裏切っている様な気がして……。さっきから元気なさそうだし少しでも元気になってもらえないかな? って思ってはしゃいでみてたんだけど……やっぱダメだったかーあはは……」


「!!?」


 さっきのはしゃぎ様はわざとだったのか!? ソプラが柄にもなくはっちゃけてるなとは思ったが、まさか俺の為だったとは……。


「ありがとうソプラ……。おかげで気も晴れたよ! 明日は頑張るから大丈夫だよ! それより向こうからいい匂いする! お昼ごはん食べに行こう!」


「うん!」


 満面の笑みで元気よく返事してくれるソプラ。もうその笑顔だけで元気100倍です! ありがとう。


 それからソプラと一緒に店を周り、前世も含めた人生で一番楽しいひと時を過ごした。




 * *



「じゃあ、そろそろ帰ろうか」


「うん! 楽しかったー! こんなに楽しかったの始めてだったよ! 試験が終わったらまた来ようね!」


「あぁ、また来ようね!」


 ギュッと手を繋ぎ帰路につく。繋ぎ方は恋人繋ぎだ。


 ソプラとのデートは、あっという間だった。時間にしてみれば、陽も傾き始めている事からかなり経っているのにもかかわらず、本当にあっという間だった。


 俺は今、リア充を体感していると悟った。幸せな時間はこんなにも早く過ぎてしまうものなのか。今ならリア充の気持ちが多少なりとわかる気分だぜ。


 そんな幸せいっぱいの中、俺たちの後ろから呼び止める声がした。


「あっ!? お前たちは昨日の! そこの青髪の女! なぜ僕のところに来なかった!?」


 2人で振り向くとそこには王都に入る時に前に並んでいた憎たらしい貴族のナリンキン・ナリーが立っていた。

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