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27 トラブルガール

 ナリーを殴ってやろうとしたが、ソプラとドーラに必死で抵抗され、もたもたしていたら、ナリーはさっさとゲートを通過してしまった。


 クソっ……早くゲート通過して一発ぶん殴ってやる。これはあれだ、社会の常識と言う物をわからせてやらねばならない制裁だ。貴族だからといってあんな年でソプラを下卑た目で見るなんて先が思いやられる。だから目を覚ましてやる必要な処置だ。


 足早にゲートの前に立っている若そうな門番さんに声をかけ、紹介状を見せる。


「あの、魔獣召喚試験を受ける人はこちらと聞いたのですがあってますか?」


「ああ、ここであってるよ。紹介状を確認させてもらっていいかな?」


 俺たちは紹介状を門番に渡すと門番の人は目を見開いた。


「えっ? 3人ともベルン出身なのかい?凄いね!普通、平民なら1つの町から10年に1人紹介状が来るか来ないかなのに……」


 確かにそうだ、普通平民なら魔量はあまり無く生活魔法がやっと使えるレベル。魔量が高いのは、ほぼ貴族様の家系ばっかりだからね。


「たまたまですよ。俺は元々イリス村の出身だし、ソプラも違う所から来たし。ドーラはベルン出身だけど……まあ、そこそこのおまけです」


「誰がおまけじゃ!! この野郎!!」


「もう……2人とも喧嘩しないで!」


「ははは! 自分の事を俺なんて、勝気なお嬢ちゃんだ。紹介状は確認したからゲートをくぐっていいよ。ゲートをくぐったら前の魔石が光るから、光った色の札を受け取ってね」


 門番さんはにこやかに笑い、紹介状を返してくれた。

 よし、早速ゲートを通過しようとすると2人が先にゲートの前に並んだ。


「ちょっ! 俺が先に並んだよね? どいてよ!」


「だめだ、お前先にくぐって、ナリー捕まえて殴ろうとしてるだろ……」


「そうだよ、ミーシャに言われたでしょ? 試験前に面倒は起こすなって!」


 ぐぅ……読まれている……。しかし、ソプラならまだわかるが、ドーラにまで行動を読まれてるとは……少し悔しい。


「じゃあ俺から行くよ。アルト……中でソプラちゃんと逃がさないように待ってるからな」


 そう言ってドーラはゲートをくぐった。

 すると目の前の魔石が黄色にパァっと光った。

 そして、ゲートの奥にいた女性の案内の職員さんがドーラに近づいて黄色の札を渡していた。


 なるほど。多分、あれで魔量か属性を調べて受験会場か何かが割り振られるのかな? だとしたら俺もソプラと同じ色なら試験のサポートができるな。


「お次どうぞー」


「あっ! はーい!」


 順番が回って来たソプラがいそいそとゲートをくぐると魔石は金色に強く光った! ドーラの時とは違い、光り方も眩しいくらいだ。


「「「「おおおお!!」」」」


 光った瞬間周りがが騒つく、ゲートの先の札を渡している職員さんも驚いている。


「あなた貴族じゃないのよね!? 平民の魔量が金色に輝くなんて初めて見たわ! 貴族でも王族でも殆どいないのよ! 素晴らしいわ!」

「お嬢ちゃんすげぇな! 今年の試験は楽しみだ!」

「それに、こんなに輝くなんて! 魔量もなかなかだぞ! 召喚魔獣は期待していいぞ!」


「えぇ!? わ……私そんな……えええ!?」


 周りの人に詰め寄られて、ソプラが目を白黒させながらめっちゃテンパってこっちを見ている……周りの人から注目を集めて、人目に慣れていないソプラは、あぁなると思考がストップしてしまう。

 これは早く行かないと……。


「おいおい! ソプラ落ち着け! すぐ行くから!」


 俺は騒めきが治らない中、ソプラの元に行くため、急いでゲートをくぐった。その瞬間……。


 カッ!!


 一瞬の閃光が辺りを包み世界が真っ白なったように何も見えなくなった!


「うおおおおおおお!?」

「キャアーーーー!」

「なんじゃこりゃー!!」

「あぁあ……目が……目がぁーー!!」


 突然の閃光で周りは大パニックだ!俺もその光を浴びて目がチカチカしてまともに目が開けられない!


 俺はその場にへたり込み顔を両手で覆い顔が無事か感触で確かめる。


 どうやら顔はなんともないようだが一体何が起きたんだ!? ソプラは!? ソプラは無事か!?


「アルトちゃん!! だっ……大丈夫!?」


 まだ目が見えない俺にソプラが駆け寄って来てくれたようだ。


「ソプラ無事か!? 今、どうなってんだ!?」


「私は大丈夫だよ! アルトちゃんがゲートくぐったら私の後ろで魔石がもの凄く光って大騒ぎになってるよ!」


 魔石!? 光が強すぎて何が光ったのかわからなかったが、まさか俺がゲートくぐった魔石の反応だったのか!?


 そうだとしたら光りすぎてやばそうなんだけど……。いったいどうなってんだ!?


 1分くらいたっただろうか?だんだん目が慣れて見えるようになってきた。


「ソプラありがとう、大分見えるようになってきたよ。でも、本当に大変な事になってるね……」


 周りにいた人は軒並み閃光を浴びて目が眩んでへたり込んでいる。それを補助する人や野次馬も集まってきていて大混乱だ。


「おい! さっきの光はなんじゃ!? どうなっとるんじゃ!?」


 人混みの中から派手な刺繍が入ったローブを着た頭はつんつるてんで立派な白ひげを生やした爺さんがこちらに向かってきた。


「……協会長様。いえ、突然その魔石が光って……私達も何がなんだか……」


 札を渡していた女性の職員さんが目をぐるぐるさせたまま爺さんに報告する。


「魔石が!? あんな光量で光る魔石があってたまるか! 襲撃の可能性もある! 衛兵を呼べ!」


「しかし……本当に……」


 職員さんが狼狽えながら更に目をぐるぐる回す。すると俺の後ろから爺さんに声がかかった。


「協会長! さっきの光はそこの金髪の女の子がゲートくぐった時に魔石より発せられた物で間違いありません!! そこのあなた! ゲートくぐる時何かしなかった!?」


 げっ!? 見つかった……やばい……本気でやばそう……どうしよう。何もやった覚えが無いけど、とりあえず素直に謝るか。うん……それしか考えが思い浮かばない。


「ほう、君がこの騒ぎの張本人だと言うのかね?」


 爺さんが訝しげに左手で顎髭を触りながら歩いてくる。


「あ……あの……すいません……俺いや、私……ただゲートくぐっただけで……何もしてません……」


「ふむ、ゲートくぐっただけであの閃光を出すほどの魔量を平民である君が持っているとは考えにく……ん? 隣の青い髪の女の子は友達かね?」


 爺さんがピクリと片眉を上げてソプラを見て質問してくる。


「あ……はい。大切な恋び……友達です。」


「ほうほう……もしかして出身はベルンかね?」


「!?……はい! 2人ともベルンから来ました」


「なら君達はソプラ君とアルト君かね?」


「え? そうだけど!?」

「ええ!? お爺さんなんで私達の事知ってるの!?」


「ホッホッホ! そうかそうか! 君達が! 実際会ってみないとわからんもんじゃわい……いやはや、凄い魔量じゃな」


 いきなり笑ったかと思ったら、爺さんの訝しげな表情が和かな笑顔に変わり気さくに話しかけてきた。


 なんだこの爺さん? 試験の関係者みたいな感じだけどなんで俺達の事知ってるんだ?


 俺とソプラが混乱状況になっていたら、また人混みを掻き分けてこっちに向かってくる人がいた。


「ソプラちゃん! アルト! 無事か!?」

「全くあんた達は何かやらかさないといけない運命でも持ってんのかね……」


「「ミーシャ!!」」


「一応俺もいるんだけど!?」


 ミーシャとおまけのドーラだった。多分、この騒ぎの中ドーラがミーシャを呼びに行ってくれたのだろう。今回だけは褒めといてやるか。


「ドーラよくやった。褒めてやる!」


「素直にありがとうも言えないねぇのかこんちくしょう!!」


「アルト! この騒ぎはあんただね? いったいあの閃光はなんな……ん? チューバ先生?」


「ホッホッホ! カルロス、元気そうじゃな。お前の自慢の弟子とはこの子達じゃな?」


 あら? この爺さんとミーシャは知り合いだったのか?

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