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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
小編:シャナ・ユベールの奇妙な文通相手
91/146

4、

 そして、カレンが用意してくれた楽な格好に袖を通して、セザールの部屋に入ると、オーランドとセザールが深刻そうな顔をして話し込んでいた。


「……」


 何も言わずに部屋を出て、一階にある給湯室でお茶の用意をしてから、中に入って、二人にお茶を出す。


 オーランドの好みの紅茶をいれて、オーランドの隣に座るシャナは、セザールの紅茶だけコーディアルを垂らして出していた。すぐにそれに気づいたセザールがふっと寄っていた眉根を解いて笑みを深める。


「どうした?」

「いえ、なんでもありません。それで? 進捗は?」

「あんたが持ってきた情報をもとにバートラムが報告書をまとめている。影のほうも重畳。でも、まだ決定的なとっちめるネタはない。臭いんだがものは見つかってない。まあ、ここまでくせえわけだから、とッ捕まえて吐かせりゃ終わるだろうな。どうせ、雑魚だし」

「雑魚だからこそ散らばっているんですよ。餌に群がった雑魚たちを一網打尽にしなければ、また面倒になる」

「無駄働きが増えるな」

「だから慎重に。あらかたの毒を切除したい」

「そうだな。複数回手術するのもあれだが、するこっちも大変だからなあ」

「そういうことです」


 紅茶を一つ口に含んで、ふう、とため息をついたセザールは、ちらりとシャナを見た。


「仕事の話を聞いていてもつまらないでしょう?」

「え? いえ、別に……」

「セザール、言ってねえのか?」

「ええ。彼女は関係ないでしょう?」


 首をかしげるセザールにオーランドは深くため息をついて、頭をかいた。


「シャナ」

「はい」

「出て行ってなさい。終わったら呼ぶ」

「……わかりました」


 お湯をいっぱい入れたポットを置いて、シャナは自分のカップを手に部屋の外に出た。


「あ、シャナちゃん」

「仕事の話だからって言われちゃいました」

「あ、そう。まあ、物騒な話を聞いても、あまり愉快ではないものね。そうだ、ちょっとお使い頼める?」

「お使いですか? なんですか?」

「夕飯なんだけどね、スープの具がなくて、シャナちゃんが選んできていいから、スープの具、頼める?」

「……ええ。わかりました」


 カレンからお金を預かって、身支度を整えて市場へ向かう。


 適当な野菜のきれっぱしを売る八百屋で野菜を買って、それから、安く干し肉を買う。

 最後に卵でも買おうか、と残りの金額を確認すると、頭に衝撃が走った。


「いっ」


 痛みはないが、軽くて硬いものが当たり、ぬるりと冷たいものがかかった。


「……え」


 手をやって、手についた黄色に顔をこわばらせて振り返ると、一人の女が振りかぶった格好でにやりと笑った。地味な服装をしているが、豊かな金色の髪を巻いているところから、そこら辺の町娘ではないことがよくわかった。


「おや、お嬢さんどうしたんだい! 誰にされた?」

「あそこの……!」


 すぐに指さすが、人ごみの中に隠れてしまった。


「あ……」

「とにかくその恰好じゃひどい、うちに寄ってきな」


 肉屋の店主にタオルと借りて、卵をふき取って、汚れた服を隠すようにチュニックを借りて、すぐにカレンの医院に帰る。

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