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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
6章:魔女狩り
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6,

 そして、数日が経ち、座って執務ぐらいならというカレンの許可によって、バートラムがオーランドの屋敷に着替えを取りに行ってようやく、オーランドの屋敷に彼が怪我をしてカレンの世話になっているという知らせを持って行った。そして、それを受け取った屋敷の面々は、特にジャックとシャナは血相を変えてバートラムについてきたがった。


「旦那様が……?」

「あー、もう大丈夫だぜ? あいつ服着せておくと仕事しに抜け出すだろ? だからあえて服取り上げてすっぽんぽんにしといてベッドから出られないようにしといたんだ」


 だから今回はベッドでおとなしくしてたからもうすっかり元気だぜというバートラムにジャックがぐっと親指をつきたてて見せた。


「名案ですね!」

「だろう!」


 なぜか気があっているバートラムとジャックに目を瞬かせながらシャナはちょこちょこと二人の後をついていく。そして、カレンの医院に入ると、急患がいたらしい。中があわただしかった。


「おーい、オーランドいるかー」

「すまん。今忙しい」


 そういいながら盥に水を入れて出てきたオーランドの格好に一同固まってしまった。


「服、ないはずですよね……?」


 忙しくカレンの手伝いをしているらしいオーランドは、スリッパをはいて、生足こそ出しているものの、白衣を身につけて、捲れないためか、きっちりとボタンを閉め、なおかつ腰に帯まで巻いている。


「……裸白衣……?」

「……そのようで」

「……だが下はすっぽ……」

「だーうっせえな。ちょっと待ってろ」


 そういいながら盥を処置室に置いて、オーランドはバートラムの手にあったカバンをひったくるようにとって二階に上がって着替えて出てきた。数秒で良家のお坊ちゃまの完成に、バートラムは笑っていた。


「洗って返さないとな」

「うるせー。ジャック」

「はいはい」


 しわくちゃな白衣をあきれているらしいジャックに放ってよこしたオーランドは、新しい白衣をどこからか取ってきて羽織って忙しそうに処置室へ入って行く。


「なかなか様になってんじゃねえか」

「むしろこっちのほうが本業だと思いますねえ」

「目つき、顔つき、態度も悪い医者っつーのもそうそういねえだろうが、雰囲気な」

「ええ」


 二人してぶつぶつと何かを言っているその雰囲気にシャナはのまれてそっと後ずさっていた。


「ジャック! 湯持ってこいや!」

「……不良口調と来た」

「あれはもともとです。むしろ軍でお偉方とどう会話しているのか気になるところですね……」

「……ああ、いたって普通だ。うん、すごいな」

「ええ」

「ジャック!」


 催促する声にようやく動き出したジャックに、バートラムは苦笑を返して、怖気づいているシャナを手招きした。


「な? もう大丈夫だっていったろ?」

「……ええ」


 そういえば、と思いだしたシャナはちらりと処置室を覗いた。それに気付いたカレンがぱっと顔を輝かせる。


「あ、シャナちゃん!」

「いてえっ!」

「だまって棒噛んでろ! お前のへまだろうが」


 縫合の途中だったらしい二人がかりで縫っているということは重傷だろうか。そう思いながらシャナはジャックがお湯を持ってきて中に入って行くのを見送る。


「さて、一息で終わらせるぞ」

「なあねーちゃん、こいつすげえ怖いんだけど? なんか、縫うより切る方が得意って感じするんだけど?」


 一番の裂傷を見て腹が据わったような顔をしているオーランドに、患者がひきつった顔でカレンを呼んで袖を引っ張る。その言葉に、ジャックはニヤッと笑ってオーランドを見た。カレンはさりげなく手を振り払って逃げていた。


「……切るより吊るすですよね?」

「異名から言ったらそうだな。まあ、どれも得意だ」

「このチート」

「今更だ」


 そういいながら、手元を細かく動かして傷をあっという間に縫って行く。そして、カレンの手元にあった傷もさっさと縫い上げて薬を塗って包帯を巻いていく。


 そのころにはおびえていた患者も、痛みに涙目で固まることぐらいしかできていなかった。


「あいかわらずねえ」

「これだけは手が覚えているもんだからな」


 細かく縫われた傷をほれぼれとっ見たカレンにオーランドが手を洗って、白衣をひるがえして部屋を出て行く。

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