045. 合流
来た道を引き返し、合流場所へと戻る。そこにはギルフォードとその部下たちがいた。
「来たか。ん? もう一人はどうされた」
ネイが足りない事に気づいたらしく、ギルフォードが問いかけてくる。次いで彼は少し不思議そうな顔をした。リズと純花が手をつないでいた為だろうか。
残るレヴィアがギルフォードの問いに答える。
「ちょっとしたトラブルで別行動中ですわ。すぐに戻ってくるでしょう」
「……もしかして貴殿らの仕業か? いきなり光が灯ったが」
「わたくしたちではありません。ネイでも無いとは思いますが……」
「つまりジェスか。全く……」
腕を組み、イライラとした様子になる彼。これまでの事を見るに、ジェスが気に入らないのだと思われる。しかしすぐにその感情を隠し再びレヴィアへ問いかけてくる。
「それでお聞きしたいのだが、この事態はどう判断すれば? こちらは遺跡の知識など殆ど無くてな。故に何が起こったのかも分からないのだ」
「ええと……普通、魔道具は自分の魔力で動かすでしょう? けれど、遺跡全体の魔道具を動かすなど個人の魔力では足りないし、安定しない。なので魔力を大量に生成する装置があるのです。つまりはその魔力を生み出す物が動き始めたのでしょう」
そもそも遺跡にある魔道具――特に大型のものは人間の魔力では動かない事が殆どだ。恐らく何らかの性質が異なるか、出力が安定しないからだと思われる。電化製品が雷で動かないのと同じだ。電圧や消費電力、周波数等が合わないと動かないどころか壊れてしまう。
「ふむ……。それが動いた場合、どういったメリットとデメリットがあるので? 視界が明るくなったのはメリットでしょうが……」
「ええ。魔力エネルギーで動くものが動かせるようになるのはメリットですわね。同様に罠や防犯装置も動いてしまうのがデメリットとも言えますが」
「という事は魔物培養器も?」
「そっちはどうでしょうね? ずっと稼働していたとなると、別系統の魔力源があるのかもしれませんし」
ギルフォードはレヴィアの説明を受け、ふむふむと頷いている。
「成程、よく分かった。しかし何故アナタはそこまで詳しいのだ? 冒険者とはいえ、国の調査前の遺跡に入ることはできない。今のように動いている遺跡など見た事もないはずだが」
彼は不審げな顔をした。彼の言う通り、冒険者が入れる遺跡が活動中という事はまずない。動力源となる遺物は国に持ち去られているか、壊れているかのどちらかだ。
レヴィアはその問いに「ちょっとしたコネがありますの」と答える。そのコネについて質問するギルフォードだが、レヴィアは煙に巻こうと話題をそらした。
「それよりジェス様ですわ。随分遅いようですけど」
「確かに……。何をやってるんだアイツは」
一行はジェスたちが向かった方向を見る。集合する時間はまだ先だが、異常時はここに集まる約束だ。しかし戻ってくる様子は無い。
「もしかして手柄を立てようとしてるとか? 頼れるところを見せる為に先に進んじゃったとか」
「それは無いでしょう。見ての通り、アイツは臆病なので」
リズの意見をギルフォードは否定。確かにそんな感じはするが……。
「しかし何かに巻き込まれた可能性はあるか。仕方ない。ジェスの方へ向かいましょう」
「お待ちになって。こちらもネイが戻ってこないのですけど」
「アイツは次期領主です。悪いがこちらを優先させてもらいたい。ジェスに何かあれば私の立場が無いし、そちらとしても問題でしょう」
「それはそうですが」
あーだこーだと言い合う二人。レヴィアとしてはジェスの事など心底どうでもいい。が、同様にギルフォードにとってもネイは重要でないのだ。かといってジェスに好感情を持っている訳でも無いようだが。
せめてこちらのパーティをネイの捜索に当てようと交渉する。しかし人手が欲しいギルフォードはそれに同意しない。どう説得したものと考えていると――
「いいよ。私が探してきてあげる」
純花が口を開いた。全員の注目を浴びた彼女は目を横にそらしながら続ける。
「一人くらいなら問題ないでしょ。私なら魔物とかがいても余裕だし」
「スミカ……!」
リズはちょっぴり感動した様子で純花を見上げる。それに目にした純花は少し恥ずかしそうに顔をぷいっと背けた。
一方、レヴィアは心配そうだ。
「す、純花一人でですか? 確かに魔物は相手にならないでしょうが、罠があるかもしれませんのよ? 戻って来ないと言う事は十中八九罠にかかったと考えるべきですし」
「矢とか落とし穴とか? 矢は効かないし、落とし穴は登ればいいし……何とかなると思う」
「そ、それはそうでしょうけど」
純花の言葉に納得してはいるものの、レヴィアの表情は晴れない。ギルフォードが否定する事を期待して彼の方へ視線を向けた。
「むう……。戦力的に勇者様がいなくなるのは痛いが、現状では遺跡に詳しい者の方が重要だな。私としては問題ない」
が、考えた末に同意する有様。皆、純花なら何とかなると考えているようだ。
レヴィアはうむむと苦い顔をする。しかし結果としてはそうするしかないと思ったらしく、しぶしぶ純花の言葉に同意した。




