95話:キングワイバーンとの攻防戦(ルリ視点)
ユウ君達との通話を終えた私は何とか地面から立ち上がっていき、空を高く舞っているキングワイバーンに目を向けていった。
―― 30分だけで良いので全力で逃げる事だけ集中してください! そしたら僕が必ずキングワイバーンを倒しに行きますから!
ユウ君は私にそう言ってくれた。ユウ君は絶対に嘘は付かない。だから私はその言葉を信じて……最後まで頑張って足搔いてみせる!
「……よし! それじゃあ……やってみせるぞ……!」
「グルルル……グギャアアアアアアアアアアアアッ!」
私はそう言って気合を入れ直していくと、キングワイバーンは私に向かってまた大きな雄叫びを上げてきた。おそらく私にまた攻撃をしかけてくるに違いない。
「よし、我に風の祝福を! 上級魔法起動、風属性・身体超強化!」
―― ぼわっ!
そう唱えていくと爽やかな風が私の身体全体に纏っていき、どんどんと全身から凄い力が湧いてきた。これが私がトレーニング期間中に覚える事が出来た上級魔法だ。
「ふ、ふふ……本当はユウ君に使ってあげたくて覚えた上級バフ魔法なんだけど……って、わわ!?」
「グギャアアアアアアアアアアアアッ!!」
―― ドゴォンッ!!
私が強化魔法を唱え終えるとすぐにキングワイバーンは滑空したまま私に目掛けて突進をしてきた。私はそれをすんでの所で避けていくと、キングワイバーンはそのままダンジョンの壁に思いっきり激突していった。
するとダンジョンの壁は大きな音を立てながら崩れていってしまった。そんな攻撃を間の辺りにして……今の突撃をもろに受けていたら一撃で私はあの世に送られていたというのが容易に想像ついた。
「な、なんて攻撃力なの……さ、最上級モンスターはこんなにも恐ろしいモンスターなのね……」
「グルルルル……グルギャアアアアアアアア!!」
「っ!? 上級魔法起動、風属性・飛翔魔法!」
―― ブォンッ!
キングワイバーンは振り向き直してまた私に向かって突進をしてこようとしてきていた。なので私は急いで飛翔魔法を発動して空高く舞っていった。これで突進攻撃は不発に終わるはずだ。
「あとはここから地上と空中を行き来して、三次元的に逃げ続けていけばある程度は時間を稼げるはずだよね……って、えっ……?」
「グギャッ……グギャグギャアアアアアアアア!」
私は身体強化と飛翔魔法を発動して地上と空中を利用して逃げ回ろうと思ったその時、キングワイバーンは突如大きな雄叫びを上げ始めていった。
するとそれからすぐにキングワイバーンの身体の周りに無数の魔法陣が生成され始めていった。
「えっ……う、うそ……も、もしかして……キングワイバーンも魔法を……使うの……?」
「グギャッ! グルギャアアアアアアアア!!」
―― ダダダダダダダダッ!!
キングワイバーンが呼び出した魔法陣からは石弾が空中にいた私に目掛けて無数に射出されていった。
「えっ!? くっ……って、きゃ、きゃああああああああああ!?」
私はそれを空中で必死に避けていったんだけど、でもあまりにも石弾の数が多すぎたため、私はその石弾を何発も身体に受けていってしまった。
そして大きなダメージを受けてしまった私は空中での飛翔魔法を制御する事が出来なくなってしまいそのまま地面に叩き落とされてしまった。
―― ドサッ!
「ぐっ……が、はっ……!」
私はとっさに受け身を取る事が出来ずに身体を地面に叩きつけてしまった。身体強化魔法が無かったら今ので致命傷だったかもしれない。
でも私はそれから呼吸を上手くする事が出来なくて地面にうずくまっていってしまった。こ、このままだと私はキングワイバーンに殺されてしまう……。
「ぐ、ぐぐ……っ!?」
「グルルルルルルッ……グルルルッ……」
「ぐ、ぐぐ……?」
でも絶好の攻撃チャンスにも関わらずキングワイバーンは地面に倒れ込んでいる私に攻撃を仕掛けようとはしてこなかった。キングワイバーンは上機嫌に唸り声を上げながら私の事をじっと見つめてるだけだった。これはおそらく……。
(ぐ、ぐぐっ……わ、わたしが……圧倒的に格下だという事がわかって……遊び始めたんだ……)
最上級モンスターだから知能も他のモンスターと比べたら遥かに高いはずだ。そして今の数分の戦闘で私の戦闘力がどれくらいなのかある把握されてしまったようだ。
そしてその結果として……キングワイバーンは私が取るに足らない存在だと認識したようだ。
「ぐ、ぐぐ……で、でも……舐められてくれた方が……私には勝機が……あるよ……ね……」
だって私がキングワイバーンを倒せないなんて事は当たり前だ。でも今の私はキングワイバーンを倒す事が目的な訳じゃない。私はユウ君が来てくれるまで生き延びる事が目的なんだ……。
だから……だから私は……!
「ぐ、ぐぐっ……ふ、ふふ……だから……ど、んなに惨めったらしくても……さ、いごまで……生き延びて……みせる……よ!」
「グルルルッ……グルルル……!」
そう言いながら私は頑張って呼吸を整えてから立ち上がっていき、そしてもう一度キングワイバーンと対峙していった。




