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94話:今から急いでアストルフォに向かう事に

 僕は配信中のルリさんに向かって全力で怒っていった。


『ユ、ユウ……君?』

「僕はルリさんに今までずっとコーチングしてきました。冒険者としての心得をいっぱい教えてきました。だけどそんな簡単に命を諦めるなんて事を教えた事は一度も無いですよ! それにルリさんは弟さんを救うって言ったじゃないですか! それなら絶対に生きるのを諦めちゃ駄目です! 生きてルリさんがしっかりと弟さんの事を救ってください!」

『ユ、ユウ君……でも私じゃこんな化物から生き延びる事なんて……出来ないよ……』

「大丈夫です! 今から僕がルリさんの元に向かいますから! だからそれまで何とか……何とか全力で逃げてください!」

『えっ……ゆ、ユウ君……がここに? で、でも……ユウ君が最深部まで来るって事は……ユウ君も危ない目に遭うって事になっちゃうんじゃ……』

「大丈夫ですよ! だって僕はS級の冒険者なんですよ? それにキングワイバーンとは何回か戦った事はありますから……だからそこにいるキングワイバーンは絶対に僕が倒してみせます! 僕が必ず……ルリさんを救ってみせます!」

『……えっ?』

「えぇっ!? ユウ君って最上級モンスターと戦った事あんのかよ!?」

「えっ!? マジで!? そんなの初耳なんだけど!?」

「はい、地元の先輩冒険者と一緒にパーティを組んで何回か戦った事はあります! まぁ一人で倒した訳ではありませんが……でも相手が手負い状態なら体力もそこまで残ってないと思うので多分大丈夫です! 必ず倒してみせます!」

「マジかよっ!? まだ高校一年生だっていうのに最上級モンスターと戦った事があるなんて凄すぎだろ! ルリちゃん、大丈夫だよ! ユウ君はこんな所で嘘を付くような男じゃないからさ! だから安心してユウ君の救助を待っててくれ! なぁ、ユウ君! 倒せるって言ったからには必ず倒してくれよな!」

「はい、絶対に大丈夫です! 僕の事を信じてくださいルリさん! 僕が必ずルリさんを助けに行きますから! だからあと少しだけ逃げていてください! そしたら僕が必ずキングワイバーンを倒します!」

『ユウ君……ぐすっ……うん、わかった……! ユウ君は絶対に嘘なんか付かないって……知ってるから……! だ、だからそれまで……頑張って……逃げてみせるよ……!』

「ルリさん……! はい、わかりました! 僕も今からすぐにアストルフォに向かいますのであと少しだけ待っててください!」


 という事で僕はルリさんに全力でそう伝えていった。そして僕はそれからすぐに浅香にこう言っていった。


「よし、それじゃあ浅香! 今すぐにアストルフォに向かおう! それでアストルフォに到着したら僕を転移魔法で最深部まで飛ばして欲しいんだ!」

「い、いや、ちょっと待ってよ、お兄ちゃん! アストルフォって東京郊外のダンジョンなんだよ!? ここからだと電車を使っても1時間以上は絶対にかかるんだよ? それに乗り換えとか電車の待ち時間とかも考えるともっと時間がかかっちゃうよ……そ、そんな長い時間をルリさんに逃げ続けて貰うなんて……現実的に考えて無理なんじゃ――」

「いやそれなら大丈夫だ! 俺とシュウジがバイクをかっ飛ばして君達をアストルフォまで送り届けてやるからよ! おいシュウジ! って事で今すぐ事務所のガレージの鍵を開けてきてくれ! ほら、俺の鍵!」

「おう、任してくれ!」


―― ダダダッ!


 カケルさんはそう言ってシュウジさんにバイクの鍵を放り投げていった。そしてそれを掴んだシュウジさんは急いで撮影部屋から外に出て行った。


「えっ、カケルさん達がバイクで僕達をアストルフォまで送ってくれるんですか?」

「おうよ。今から電車を使ってもアストルフォまで行くのは相当時間がかかるだろうし、タクシーで向かうとしても今日は休みだから渋滞に巻き込まれる可能性もあるしな。それなら小回りの利くバイクの方が圧倒的に早く到着出来るはずだ。まぁ確実に道路交通法に抵触する速度を出す事になるだろうけど、今は緊急事態だから仕方ねぇな! って事で今から爆速で飛ばして30分でアストルフォまで到着してみせるぜ!」

「カ、カケルさん……ありがとうございます! ルリさん聞こえましたか! 今から30分だけ……30分だけで良いので全力で逃げる事だけ集中してください! そしたら僕が必ずキングワイバーンを倒しに行きますから!」

『う、うん……わかった……! カケルさん……シュウジさん……本当にありがとうございます……』

「あはは、感謝は生き延びてからちゃんと貰う事にするよ。って事で今から爆速でアストルフォに向かうぞ! それじゃあ二人とも! 今すぐここから出発する準備をしていってくれ!」

「はい!」

「わかりました!」


 という事で僕達はルリさんを救出するべく、今から急いで東京郊外にあるアストルフォに向かっていく事になった。

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