９２話：最深部に転移させられてしまう（ルリ視点）
「て、転移魔法！？ ほ、本当に私を最深部に送るつもりなんですか……？」
「うん、そうだよー！ 今は繫殖期だからこんな初心者ダンジョンでも最深部には最上級モンスターがいると思うけど……あはは、まぁ社会見学だと思って楽しんできなよ！ もちろん今のルリちゃん程度の力じゃ最上級モンスターに勝てる訳ないけどね！ そんでルリちゃんが最上級モンスターに惨たらしく食い殺されていってくれたらめっちゃ嬉しいなー！」
「こ、殺され……！？ な、何を言ってるんですか、スザクさん！？ わ、私……す、スザクさんに何かしましたか……？」
「あはは、何言ってんのー？ 俺はルリちゃんのせいで人生が狂わされたんだよー？？ だからルリちゃんもさぁ、ちゃんと人生終わらせなきゃ不公平じゃん？？ あはは、だからさぁ……とっとと死ねよ？」
「っ……！？」
―― ゾクッ……
そう言いながらスザクさんはドロンとした真っ黒な憎悪が込められた眼光で私の事を睨んできた。ここまで憎悪を向けられたのは生まれて初めてだったので、私は思わず身体を震わせていってしまった。
朝倉：な、何でスザクここまでブチギレてんだよ……？
kuro：べ、別にルリちゃんは何もやってないだろ？ それなのに何でルリちゃんの事を殺そうとしてんだよ……？
もる：い、いやでも大丈夫だよ！ だってルリちゃんは戻り石を持ってるでしょ！
gori：そうだよ！ だから最深部にワープさせられても死ぬことはないって！
atagi：だ、だよね！ 最深部にワープされたとしてもすぐに戻り石を使ってアストルフォの出入り口に戻れば大丈夫だよ！
「あ、う、うん！ 確かにそうだよね！ 戻り石があれば最深部に無理矢理ワープさせられたとしても出入り口に戻れ――」
「そんな事させる訳ねぇだろ。馬鹿かお前？ 上級魔法起動、闇魔法・略奪魔法」
「……えっ？」
急にスザクさんは私に向かって手をかざしながらそう唱えていった。すると私が腰に付けていた道具を入れてたポーチが一瞬で消え去っていき、そしてそのポーチはスザクさんの手元に置かれていた。
「え……えっ！？ な、何で私のポーチがスザクさんの手元に！？」
「はは、何でだろうなー？ まぁ闇魔法って色々と便利なんだよなー。ぷはは、まぁでもこのポーチの中に戻り石が入ってんだよな？ はは、それじゃあこれでもう……お前は最深部から帰ってこれなくなるなぁ？」
「っ！？」
「あはは、そんな顔を真っ青にしなくて大丈夫だよー！ どうせ最上級モンスターなんかルリちゃんが戦っても一瞬で負けるだろうし、すぐに食い殺されて一瞬であの世に行けるだろうから大丈夫だよ！ だから怖く何てないよー！ 死ぬのは一瞬だからきっと痛くもないよー！ ぷはは、そんじゃあな、ルリちゃん！」
「す、スザクさ――」
―― ブォン！
そんな強烈な煽りを受けてからすぐに私が乗っていた転移魔法が発動していってしまった。
そしてその転移魔法が発動してから私の視界は急に真っ暗になっていった。そしてそれから程なくして……。
―― ブォン！
「う……こ、ここは……」
どうやら私はスザクさんが指定した目的地に飛ばされ終わったようだ。真っ暗だった私の視界もすぐに元に戻っていった。なので私は辺りをキョロキョロと見ていった。どうやらダンジョンの中には変わりないようだけど……。
ぺこ：ルリちゃん！ 無事なの！？
atagi：良かった！ ルリちゃん無事そう！
枢木：マジで泣きそうになった……本当に無事で良かった……
「あ、み、皆……うん、私は何とか無事だよ……」
ポーション薬とか戻り石とかが入っていたポーチはスザクさんに奪われてしまったけど、でも私が使用していた自動撮影ドローンは奪われずに私と一緒に転移されていったようだ。
この自動撮影ドローンのおかげで何とかリスナーの皆に私の無事な姿を送り届けられて本当に良かった。まぁ不幸中の幸いってやつだね……。
「でもここは明らかに低階層とは違う場所だよね？ それに雰囲気も何だか冷たい感じがするし……それじゃあやっぱりここは最深部って事に――」
『グギャアアアアアアアアアアアアッッ！！』
「えっ！？ な、何！？ 今の咆哮！？」
atagi：っ！？ 物凄くヤバイ声出なかった！？
枢木：絶対にヤバイモンスターじゃん！！
ぺこ：こ、これってもしかして……！？
突然私の真上から物凄く大きな咆哮が聞こえて来た。私はビックリとしながら真上を見ていった。するとそこには……。
「あ……あぁっ……！」
「グルルルルルッ……グギャアアアアアアアアッ！！」
「あ、あれは……キ、キング……ワイバーン……！」
私の真上には何と最上級モンスターであるキングワイバーンが荒々しく君臨していた。あの時ユウ君が討伐してくれたヤングワイバーンなんかと比べても２～３倍以上も大きくて威圧感がかなりある……。
こ、こんなの……こんなの誰がどう見ても化物級のモンスターじゃないの……。
