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76話:召喚魔法を使った人がようやく判明する(ルリ視点)

 それから数十分後。


 私は身支度を整えてファーストライブの事務所にやって来た。そしてすぐに社長室に向かって社長と会っていった。


「お疲れさまです。社長」

「えぇ、お疲れ様。ルリ。トレーニング中だったのに急に呼び出しちゃってごめんなさいね」

「いえいえ、大丈夫ですよ。それで私に話したい事って一体なんですか?」


 私は早速本題を社長に尋ねていった。すると社長はちょっとだけ苦い表情をしながらこんな事を言ってきた。


「えぇっと、以前にルリがアストルフォの低階層でヤングワイバーンに襲われた事件があったでしょ? そのヤングワイバーンは誰かが召喚魔法で召喚したものだったというのも伝えたわよね?」

「あぁ、はい。だいぶ前にそんな事件がありましたね……って、まさか?」

「えぇ、そのまさかよ。冒険者ギルドとの合同調査によって召喚魔法を発動した人物をようやく特定する事が出来たの」

「えっ!? ほ、本当ですか!?」


 以前に私は東京郊外にある“アストルフォ”という初心者向けのダンジョンで配信をしていた時に上級モンスターのヤングワイバーンに襲われた事があったんだ。


 そしてヤングワイバーンが初心者向けのアストルフォに現れるのは明らかにおかしいという事で、冒険者ギルドやファーストライブがずっと調査を行っていたんだ。


 そしてついに召喚魔法を使った人が判明したようだ。やっぱり冒険者ギルドやファーストライブの調査力は凄いよね!


「それで? アストルフォで召喚魔法を使っていた人物ってのは一体誰だったんですか? あ、でも聞いた所で私の知ってる冒険者な訳ないですよね、あははー」

「いえ、アナタもよく知ってる人物よ。どうやら召喚魔法を使ってアストルフォにヤングワイバーンを呼び出したのは……あのスザク氏なの」

「……え? ス、スザクさん? ス、スザクさんって……元ダンジョン配信者のスザクさんの事ですか?」

「えぇ、そうよ。調査結果からして間違いないわね……」

「なっ!? そ、そんな……」


 ついにアストルフォで召喚魔法を使っていた人物が判明した。どうやらあのスザクさんが犯人だったようだ。私はそれを聞いて物凄くビックリとしてしまった。


「で、でもどうしてスザクさんはそんな事を……?」

「そこまではまだわかってないわ。まぁおそらく近い内にギルドに呼び出されて事情聴取をされると思うから、そこで全部わかるとは思うわよ」

「な、なるほど……」

「えぇ。それでルリに本題なんだけど、今回の件……どうしましょうか?」

「え? ど、どういう事ですか?」

「まぁ早い話スザク氏を訴えるかどうかって話よ。今回の件が故意なのか事故なのかはわからないけど、でもルリが危ない目に遭ったのは事実だからね。だからスザク氏を相手取って訴える事は可能よ。もしも訴えるのなら私の方で手続きを行っていくからね」

「あぁ、なるほど。そういう事ですか……う、うーん……」


 社長は私にそんな事を尋ねて来た。スザクさんを訴えるかどうか……私はしっかりと悩みぬいた上で社長にこう伝えていった。


「……いえ、訴える事はしないでいいです」

「本当に? 訴えなくて良いの? あの召喚魔法のせいでアナタも相当危ない目に遭ったのよ?」

「はい、まぁ確かにそうなんですけど……でも私は今もちゃんと元気に生きてますからね。それに冒険者たるもの危険はやっぱりつきものですからね。だからダンジョンの中で危ない目に遭わされた事について私は全然気にしませんよ」

「アナタの冒険者の志はとても立派だと思うけど、でも本当に良いの?」

「はい、本当に大丈夫です。それにスザクさんは事務所をクビになって配信サイトも永久banを食らってしまって、お仕事面としても凄く大変な事になってると思うので……だからこれ以上さらに大変な目に遭わせてしまうのもアレかなって思うので」


 スザクさんの話はあれからもちょくちょく風の噂で聞いていた。


 SNSが大炎上した事や、所属していた事務所をクビになった事とか、住んでたマンションから追い出された事とか、配信サイトを永久banされてしまった事とか……もう今のスザクさんは本当に凄く大変な目に遭っているというのは容易に想像が付く。


「まぁそうね。今のスザク氏はおそらく私達が思っている以上に大変な目に遭ってるでしょうね。でもそんなのはアナタが気にしなくていいのよ?」

「そうですね、社長の言う通りだとは思いますが……でもスザクさんとは今までに何回か合同コラボ配信とかでお世話になった事もありますので、その縁もあるので今回の件は私の方は水に流すという事で良いかなと思ってます」


 スザクさんには誹謗中傷とか酷い事をされてしまった過去はあるけど、それでもスザクさんとは何回か一緒にお仕事をした縁がある。そしてその時にわからない事を教えて貰ったりとかした恩もある。


 そしてそういう縁や恩を蔑ろにしてしまうのは人として良くない事だと思う。


 そういうのは人として生まれたからにはちゃんと大切にしていきたいと思ったので、今回の件は特に大きく事件にする事はせずに、全部水に流す方向で行こうと決めていった。


 それに今のスザクさんはSNSの大炎上で精神的にも凄く参ってる状態だと思うし、これ以上さらに事件を増やして炎上の燃料投下をしてしまうのは可哀そうだよね。私も誹謗中傷で若干炎上した事があるけど、あれってやっぱり精神的に辛いからね……。


「そう。わかったわ。それじゃあ今回はルリの意見を尊重する事にするわね。という事で今回の話はこれで以上よ。今日は事務所まで来てくれてありがとうね。それじゃあ今日はもう帰って良いわよ」

「はい、わかりました。それじゃあ失礼しますね」


 そう言って私は社長室から出て行った。そして私はそのまま家に帰っていった。


 という事でこれでアストルフォの召喚魔法の事件は無事に解明する事が出来た。まぁまだスザクさんの事情聴取は残っているだろうけど、でも何はともあれ無事に犯人がわかって良かったよ。

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