75話:自主トレーニング中に電話がかかってくる(ルリ視点)
今後についてユウ君と電話で話し合った翌日の午後。
増殖期が終わるまではユウ君のコーチングもお休みに入る事になったので、これからしばらくの間は一人で自主訓練をしていく事に決めていった。
なので今日はファーストライブが提携しているトレーニングジムで一人で筋トレをしている所だった。
「18……19……20! ふぅ……ちょっと休憩にしよう」
私は背筋のトレーニングを3セット終えたので、一旦ベンチに座って休憩を始めていった。そしてベンチに座りながら全身の汗を拭いていった。
「ふぅ……あ、そうだ。筋トレが終わったら次は魔法の訓練もしていかなきゃだよね」
私はタオルで汗を拭きながらそんな事を呟いていった。ユウ君にも才能があるって褒められたし、頑張って新しい魔法を覚えていっていかなきゃだ。
あ、でも魔法を覚えるとしたら次は何の魔法を覚えていこうかな?
今は風属性ばっかり習得していってるけど、でもそろそろ違う属性の魔法に手を付けていくのも良いよね。ユウ君も全属性の下級魔法くらいは覚えておいて損はないって言ってたしね。
「うーん、でもせっかくなら……ユウ君を手助け出来る魔法を覚えていきたいかなぁ」
私は基本的に今まではずっとソロで冒険をしていたんだけど、でもこれからはもっと沢山ユウ君と一緒に冒険をしていきたいと思っていた。私にとってユウ君はとても頼りになる大先輩でもあり相棒でもあるしね。
だからそんな大先輩かつ相棒であるユウ君のためになる魔法を覚えていきたいな。そしてそんなユウ君のためになるであろう一番有力な魔法と言えば……。
―― 他属性の強化魔法であれば強化効果は重複するんですよ。なので火属性の自己バフ魔法と風属性の味方バフ魔法の効果は重複するんです!
ちょっと前にユウ君と一緒にコラボ配信をした時に、ユウ君はそんな凄くためになる講義を私やリスナーの皆にしてくれたんだ。
という事は火属性の魔法を大得意にしているユウ君への一番の手助けになるであろう魔法といえば……それはもちろん風属性のバフ魔法って事になるだろう。
「ふふ、でもそう考えると火属性と風属性ってすっごく相性ピッタリだよね。よし、それじゃあそんな火属性が得意なユウ君のためにも……上級の風属性のバフ魔法を覚えてみせるぞ!」
という事で私はこの自主訓練期間中に達成させたい目標を作っていった。
今はまだ風属性のバフ魔法は中級までしか使えないけど、でも今から頑張って自主訓練を続けて行けば上級のバフ魔法が使えるようになるかもしれないよね。というか絶対になってみせるぞ! そうすればユウ君に沢山サポートが出来るようになるかもしれないしね!
「よし、それじゃあこの自主訓練期間中に頑張って上級のバフ魔法を覚えていくぞー! って、あれ?」
―― プルルル……プルルル……♪
するとその時、ふと私のスマホから着信音が鳴り出した。私はベンチに座ったままスマホを取り出していきすぐに電話に出ていった。
「はい、もしもし? 如月です」
『あ、トレーニング中にごめんなさい。ファーストライブの姫川です』
「あ、社長。お疲れさまです。どうしたんですか? 私に何か用事ですかね?」
電話相手は私が所属しているファーストライブの社長からだった。社長は鋭い目つきをしているせいでいつも若干怖い感じに見えてしまうんだけど、でも中身はとても優しくて温かみのある素敵な女性だ。
『実はちょっと早急にルリに話したい事があって、それでジムでのトレーニングが終わったら一旦事務所に来てほしいの。この後の予定とか大丈夫かしら?』
「この後ですか? はい、今日は冒険に行く予定もないですし、ジムでトレーニングをしたら帰る予定だったんで大丈夫ですよ。だけど社長が私に早急に話したい事があるなんて珍しいですね? 何か変な事でも起きましたか?」
『え、えぇっと……まぁ変な事と言えば変かもしれないわね……』
「? な、なんだかよくわからないんですけど、わかりました。早急に用事があるって事なら今すぐに事務所に戻りますよ。それじゃあ今から軽くシャワーを浴びて事務所に戻りますね」
『えぇ、わかったわ。それじゃあ私は事務所で仕事をしてるから、事務所に来たら社長室まで来て頂戴ね』
「はい、わかりました。それじゃあ失礼します」
―― ……ッピ
そう言って私は社長との電話を終わらせスマホをバッグに戻していき、そのまま急いでシャワー室へと向かって行った。
だけど私に早急に話したい事があるなんて一体何があったんだろう? 何か悪い事件が起きたとかじゃなければ良いんだけど……。




