71話:ルリさんを改めて手伝っていくと決めていく
それからしばらくして。ルリさんは僕にこんな事を言ってきた。
「あ、そうだ。そういえば話はガラっと変わるんだけどさ、前回のコラボ配信ではかなり多くの赤スパが入ったよね。その事は覚えてるかな?」
「あぁ、はい、そうですね。何だか普段のルリさんの配信の時よりもスパチャの量が多くてビックリとしちゃいましたよ」
「あはは、確かにそうだったね。でもそのスパチャの多さも絶対にユウ君がコラボ配信をしてくれたおかげだよ。という事でさ、前回のコラボ配信の収益をユウ君と折半していきたいから、振り込む口座とか後でメールか何かで教えて貰っても良いかな?」
ルリさんの話は前回のコラボ配信の収益化を折半したいという事だった。なので僕はすぐにこう返事を返していった。
「あー、良いです良いです。僕はギャラとかそういうのは全然要らないんで、収益は全部ルリさんが持って行ってください!」
「え? い、いいの? でも今回の収益すっごいよ? スパチャだけでも100万は越えてるから収益を半分に分け合っても凄い金額になるよ?」
「えっ!? そ、そんなにスパチャ送られてたんですか!? って、あ、いや、別に大丈夫ですよ。僕はルリさんと一緒に楽しくコラボが出来ただけで十分ですし、それに電車代や宿泊費とかはファーストライブさんから全額支給されてますしね。ですから今回の収益は全部ルリさんの物にして頂いて大丈夫です!」
「そ、そっか。うん、わかったよ。それじゃあ御言葉に甘えて今回の収益は有難く頂く事にするね。本当にありがとう、ユウ君。すっごく助かるよ……」
「? 凄く助かる……ですか?」
ルリさんは何だかちょっとだけ安堵したような感情を乗せてそんな言葉を僕に送ってきた。でもルリさんって最大手のライバーだから毎月沢山の収益を稼いでるんじゃないのかな? 案件とかも沢山ありそうだしね。
だからルリさんが今言ってきた“凄く助かる”という言葉にちょっとだけ引っかかってしまった。なので僕はさりげなくその言葉の意味を尋ねていってみる事にした。
「え、えぇっと、その……あっ! そ、そういえばルリさんってライバーの収益は何に使ってるんですかね? やっぱりコスメとか服とかを買ってる感じですか?」
「うん。もちろん配信とか動画でオススメ紹介したりするためにそういうのも買ったりするけど……でも収益の9割近くは雪人の入院費とか治療費のために使ってるね」
「え? あ、なるほど。それはそうですよね……」
ルリさんは収益の使い道を教えていってくれた。どうやらほぼ全部の収益を雪人君のために使っているようだ。
(確かにそういえば……雪人君が入院してた病院って物凄く大きくて最新の病院だったもんね)
それに雪人君の病室は個室だったし、入院するだけでもかなりの費用がかかってるのが容易に想像が付く。それにそもそも雪人君の病気は……。
「そうですよね、雪人君と病院で会った時は物凄く元気だったからすっかりと忘れてましたけど……そういえば雪人君は不治の病に冒されてるんですよね……」
「うん、そうなの。ここ最近はお医者さん達のおかげで病状もだいぶ安定してきているんだけど、でもまた昔みたいに病状が悪化したらと思うと……本当に気が気じゃなくなるよ……」
「ルリさん……」
「だから何としてでも雪人のために早くエリクサーを手に入れたいんだけど……でも私の冒険者ランクはまだまだ弱い方だし、このままじゃいつまで経ってもエリクサーなんて手に入んないよね……ぐすっ……」
ルリさんは涙ぐみながらそんな言葉を呟いていった。なので僕は……。
「いや、大丈夫ですよ」
「え? ユウ君……?」
「ルリさんは間違いなく冒険者として着実に成長していってますし、すぐにB級、A級冒険者になっていけると思いますよ。それに……」
「そ、それに……?」
「それに今のルリさんには……コ、コーチング役として僕がいるんですからね! ま、まぁ頼りになるかはわかりませんけど……でも僕もルリさんや雪人君のために出来る事は何でも手伝いますよ! だからこれからは今まで以上に何でも頼ってくれると嬉しいです!」
「ユウ君……うん、ありがとう……ぐすっ……! ふ、ふふ、それじゃあその……これからも一緒によろしくね!」
「はい!」
という事で僕は改めてルリさんとそんな約束を交わしていった。不治の病に苦しんでいる雪人君のためにも僕はルリさんのエリクサー探しをこれからより一層手伝っていこうと思っていった。




